370『物語なんてなァ、後付けで出来てゆく。』
ポカーンとしていた【人土】達の中から、山柄さんが復活する。
次いで、代表たち。
「異世界転移魔法は・・条件次第で、【空の口】や幹太さん程の魔力が無くとも使えるんだよ」
「日本からコチラへ転移した時は、私達と数十人の【人土】で『扉』を開けました。
・・当時の、魔力量で」
今の【人土】達は、野性の【スライム】を培養して、【スライム細胞】を体内に移植増量させている。
ソレにより、魔力は数倍・数十倍に膨れ上がっていた。
無理はしていないみたいだけど、無茶はしているみたいだな。
「貴族の意思が無くとも、魔力タンクにはなるんだよ。
王族が扉魔法を使えば・・理論上は転移出来る」
「理論上は・・?」
「扉魔法に必要なのは───
ソコソコの魔力。
空間に負担をかけずに穴を開ける。
転移元と転移先の道筋を選択・固定。
───まあ、こんなトコだね」
ソコソコの魔力・・コレは俺一人でも問題ない。
「空間に負担をかけず、穴を開ける・・とは?」
「ガロス殿が見た事のある光景で例えるなら・・『地面』という空間に負担をかけちまうと『地割れ』がおきる」
「アレか・・」
日本と比べ、この大陸は体感出来る地震というのが全く無い。
60歳を越えるディッポ団長も経験した事が無いらしい。
最近の地震は【空の口】の封印が解ける前触れだから実質、天然の地震は未だ起こってない訳だ。
ちょっと揺れ( 震度1~2 )ただけで、結構騒ぐんだよ。
「空間に地割れが起きると・・どうなるのかしらぁ~?」
「たとえば・・空から溶岩が降ってきたりしますかね」
「「「ヨウガン?」」」
あー、火山が無いらしいしなあ・・。
「『何処か』に『何処か』が繋がるとでも言えばいいのか───」
「左手に右手が繋がったり」
『何の説明も無くオデコに目が繋がったり』
「原作終了後に、宇宙人の子孫って説明が在ったわよ」
『そうなのか!?』
皆が、彩佳と『三者を超えし者』を白い目で見始めたのでフォロー。
「【人土村】がもっと大陸のウチ側にあったら便利だけど・・そんな場所を無理に狙って転移しようとしてたら・・この大陸が消滅してたかも、って未知を想定すりゃ良いですかね」
「未知すぎるのだが・・」
まあ、空間のユルい場所を掘り進むイメージなので、むりやり堅い目的地へ掘り進むマネさえしなければ・・変には成らない。
「山柄さん達が。
見よう見真似で俺が。
扉魔法は両方成功させてるし・・ソコ『だけなら』は問題ないです」
『(【空の口】ですら苦し紛れの一撃が、暴発しただけなのに )』
「ん?
何だって?」
『・・なんでも無い。
ソレよりも、『青い世界』に王族が財産をどれだけ持ち込んだか・・・・』
「そうだなあ・・。
扉魔法に使う魔力は『範囲』が問題で、『質量』は関係無いハズ」
「そうだね。
私等が転移する時、あの人員やビル群を転移出来たのは・・質量が0%だろうと100%だろうと同じ範囲なら、同じ魔力でイイからだね」
国中の食糧・都民・騎士団・金品等を一カ所一纏めにして『青い世界』へと逃げこんだ。
都民・騎士団は自失しているから、食糧は最低限でも良いと断じたかもしれん。
「【核】・・魔力集積装置・・街破級の体内に人工の『青い世界』・・転移魔法・・か」
・・皆が、一つずつ呟く俺に注目する。
「思っていた事態より、面倒かもしれません。
死を覚悟して尚、足りないほどの」
皆、表情は変わらない。
「大事な人が居る人は、帰っても良い・・いや、帰って欲しい」
コレには何人か困った顔になるが・・やはり一歩も動かない。
「騎士団はその為に作られたのよ~」
「貴族の使命とはソレである故に」
「カンタちゃん、それでもオレ達は大事な人を守りたいんだ」
「うむ」
三種族達も。
「【人土】は【巫女】の下に。
・・然れど、【人土】の敵は【空の口】です」
「【人花】も、敵はブチ殺しまーす」
「【人狼】が敵から逃げる事など有り得ない」
俺をずっと支えてくれた人達も。
「まあ、御姉チャンが好きにヤるとイイ」
「カンタさんは、オレが守るッス!」
「御姉様の為さりたい事と、ワタクシのすべき事は同じですわ」
「お姉さんともっと一緒に居たいのです!」
「私に戦うチカラは無くともオマエを守れるんだ」
「何の因果か『こんな』体じゃしな。
好きにせい。
儂も好きにするでの」
「まあ・・王族を【人茸化】出来りゃあ・・・・最高じゃない?」
・・そして。
「行こうっ、幹太姉ちゃん♡♡」
「・・ああっ!」




