369『『ねっ・・ネ○娘の顔が違う・・!?』』
「おう、話は纏まったかい?」
穴掘りに疲れたディッポ団長が、汁をマグカップに注ぎなおしてテーブルに着く。
ピヒタがソレを見て自分もと、御代わりをする。
「ええ。
ディッポ団長が子供の頃、王子に聞いた『魔女は魔物の中にいる』云々の話です」
「ああ・・アレか。
・・マジの話なのか?」
『『街破級の魔物』とは、体内に『青い世界』を持つ生物だと理解してほしい』
「体内に青い世界・・ねえ」
無論・・街破級の腹を裂いたら、中から『青い世界』がボロンと出てくる訳じゃないけど。
「街破級には、魔女の背後霊が大量に取り憑いてるって感じかしら」
「途端に街破級が、唯の霊媒体質なだけっぽい雰囲気にっ!?」
『父さん、スゴい妖気です。
・・みたいな?』
「そのネタ、ヤバくないっ!?」
「御姉チャン語を話す奴が増えやがったゼ・・」
俺、ワルクナイ。
「ディッポ団長達は?
王区は、どうですか?」
「な~んも無ェな。
ただ、土遊びをしただけだ」
「そうですか・・」
王区中を掘っても、収穫なし。
一旦、全員を集めて情報交換。
やはり皆、似た感じ。
「王族が元々、どんな計画を立てていたのかは分からないけど・・やっぱり失敗したのかしらねぇ~」
「そう・・考えるべきであろうな。
全都民を連れ、【銀星王国首都】を脱出するなど・・不可能だ」
【銀星王国首都】並みにデカイ街なんて、【銀星王国】内に存在しない。
何処かの村々に、難民として移動したとしても・・俺達が立ち寄った村々には【人茸】と無線機が常備されているんだ。
【人土村】の流通網に引っ掛からない訳が無い。
「ちなみに・・国境の村を通る以外に、外国へ出奔する道は───」
「無ェよ。
トンでもなく険しい山あり谷あり、オマケに地に空に、村破級の魔物が闊歩してやがる」
「そんな場所を、数万人の人間が進む。
しかも、その分の食糧を運ぶのに、トラックも使えぬのだ」
「仮にカンタさんクラスの魔法使いでも流石に無謀よぉ~」
「うーん・・」
山を削ることは出来る。
谷を埋めることも出来る。
けど、数万人の都民はなあ・・。
食糧・怪我・病気・・・・。
しかも、ほぼ全員自失しているんだ。
トラックなんて何台あっても足らないし、その食糧を用意出来ない。
王族・貴族・平民の魔法使い、全員が協力しても・・無謀だな。
「ソレに・・仮にも一国の王族が、他国に逃げる───
そりゃ、その瞬間に【銀星王国】は逃げた国の属国扱いだ」
「あのプライドの高い国王が、そのような事を許容出来るとは思えんな」
国内の村々にも、外国にも行ってないっつう訳ね。
「【銀星王国】の内外に、移動した形跡が無いのなら・・この異常な王区、ココで全都民が消滅したと見るべきなのだ」
「ココに都民、全員ねえ・・」
「んぅ~、いくら王区が広いって言っても、数万人も入るのかなあ?」
「昔、世界中62億ちょいの人間が、琵琶湖に納まるとかいう雑学があったわよね」
なんかソレ、聞いたことあるな。
ディッポ団長達は何やら、「 62億・・ 」と、地球の総人口数に反応しているけど。
今はもうちょい増えてるはず。
「消滅・・か」
「カンタさん?」
「都民は殺された・・ではなく、消滅した」
「う、うむ。
死体が無いのでな」
「地下深くまで植物の根を張ったのです。
骨一つ無かったのです」
「・・衣類は?」
「ゴミになるような物は見つからなかったのです。
すぐ畑に出来ますよ?」
畑はともかく・・。
「人間や服だのが無いように───
城に、調度品や家具類が無かった」
「関係有るの?
幹太姉ちゃん?」
「・・と、思うんだよなあ」
俺がテーブルに飛び散った野菜くずを眺めつつ「うーん」と、考える様を見て・・皆、俺と野菜くずを見比べる。
ただ考え事をするのに、視線が固定されているだけで・・野菜くずは関係有りません。
「消えた・・って事は───
塵となって消えた、か、何処かに消えた・・って事だよなあ?」
「何処かに・・と言っても、先程散々その話をしただろう、アキハラカンタよ」
「俺は・・ココに居る何人かは、歩かずに遠くへ行った事が有るんだ」
「歩かず、遠くへ・・?
トラックで・・というオチでなければ───」
その、何人かがハッとする。
彩佳も、その一人。
「いっ、異世界転移・・!?」
「そんな・・まさか・・!?」
ザレやビタやリャター夫人も目を丸くする。
【人土】は、クチをポカーンと開けたまま。
「あ、アキハラカンタよっ!?
出来るのかっ!?」
「どーだろ?
狙っては無理かな。
・・飽くまで、消えたって台詞で思いついた説だし」
アッチの・・例えば『街破級【アジ・タハーカ】』に蹂躙された日本は敵に成りうる。
良くて、属国扱いだ。
『・・保管は出来るかも』
「『三者を超えし者』・・?」
『貴女達は生身で青い世界に出入りした・・という事』
「あ、ああ」
『秋原家や【人土村】のビル群・・物もついでに』
「そうだな」
『なら・・他国や、国内の村々に逃げれないのであれば、青い世界に逃げた可能性は有る。
持ち込める財産ごと』




