368『最後は諦めて、クワガタにあげました。』
『三者を超えし者』の言葉・・『友達は、その方が良く寝られる』。
「友達・・ソレは───
寝所で眠る魔女・・だよな?」
『・・ああ』
言った、言ってしまった・・という後悔を感じる表情の『三者を超えし者』。
「【空の口】が武力として街破級を産み出した訳では無いって事は、ソレ以外の・・」
「そういえば以前、ディッポ団長さんが子供の頃、王子に聞いた話───
『魔女は魔物の中に住む』って言っていたわね」
英雄は魔物を倒し、魔女の住みかに乗り込んで魔女を倒した・・って話だっけ。
『・・・・っ。
さすが貴女達。
もう、その事実を掴んでいたか・・』
「その話・・お伽噺じゃあ無いんだな?」
『・・そう』
魔女は魔物の中に住む。
魔女は寝所で眠る。
魔女にとって街破級が産まれる方が、都合が良い。
「『街破級』そのものが、魔女の『寝所』・・そして、『寝所』の門番ってトコか」
『・・そう』
───でも、ソレって・・。
「俺・・今まで何匹か殺したぞ・・!?
『街破級【ファフニール】』。
『街破級【アジ・タハーカ】』。
『街破級【フレズベルグ】』・・」
「儂も・・『街破級【にいずほっぐ】』を殺したのう・・」
俺が・・俺は、男尊女卑に疲れて眠る魔女達を殺し───
『あ、飽くまで、貴女が殺したのは寝所を守る魔物。
寝所で眠る魔女ごと殺した訳では無い』
「・・でもっ!?」
「幹太、落ち着きなさい。
幹太一人に、『魂』だけの存在である寝所の魔女を殺す能力が有るなら・・【空の口】相手に苦労しないわ。」
『アヤカの言う通り。
貴女が、街破級の魔物を殺したとしても・・『別の青い世界』に移動するだけ』
「・・移動?」
『本来あの世界は、同じ立場の魂のみで集まる。
罪を犯した日本人のみの寝所。
罪を犯したドイツ人のみの寝所。
苦しみながら死んだ日本人の。
苦しみながら死んだドイツ人の。
自殺した。
老衰で。
・・【空の口】の呼び掛けに応えた魔女のみの寝所』
以前、ピヒタが言ってたな・・。
マグカップの汁を「ズゾゾッ!」っと飲みほし、ピヒタが手を軽く上げる。
「ソレって・・【人花】にも伝わる『魂の大樹』の話ですか?
同じ立場の魂が、同じ枝葉で眠る・・という」
『青い世界の、都合の良い部分を繋いだのが宗教。
三途の川だったり。
他国の民を殺した者が行く『世界』を天国と呼んだり』
「俺は・・魔女達の安らぐ『世界』を・・」
俺の顔色が悪いのを見て・・颯太が優しく抱きついてくる。
俺の全部を包みこむように。
・・暖かい。
『貴女に倒された魔物の中の魔女達は・・別の安らぎの『寝所』へと移動する』
「別の安らぎ?」
『【空の口】の術式により、出来るだけ近くで同じ立場の『青い世界』へと行く』
「ソレって、幹太姉ちゃんは悪く無いって事だよね♡」
颯太が満面の笑みで、ギュッとしてくる。
・・ああ、颯太はマジ最強だな。
「颯太・・有難う。
そうだな、俺は撃つべき魔法を撃ったんだ」
「うんっ♡」
俺が魔法を撃たなければ、ココに居る皆が死んでいたかもしれない。
必要な一撃だとしよう。
彩佳がマグカップをガンガン叩きつけ、底にへばりつく野菜くずを取りながら・・聞いてくる。
「ソコだけ聞いたなら・・別にアタシ達の『敵』宣言なんて、必要ないわよね?」
『貴女達からすれば、そう。
ただ・・自分としては、友達の魂が『知らない青い世界』に行くのは───』
「なるほど、そりゃ俺達の敵になる十分な理由だなあ」
『三者を超えし者』の思惑で、俺と颯太が離ればなれになる───
・・まず、その思惑を阻止したいと思うだろうなあ。
『『寝所』は、【空の口】による手作りの世界。
自分では、『近い世界』が分からない』
「・・・・」
『だけど覚悟した。
彼女達は、自分の知らない別の『安らげる世界』で眠るだけ』
後悔したような表情が『三者を超えし者』の顔から消えた。
何時もの、ポーカーフェイス。
『・・王区が、魔物であろうと───
王区に、魔女が眠っていようと───
まずは【空の口】を封印する』
「・・ソレで良いのか?」
『再び、次の千年で友達と会う』
「・・分かった。
出来るだけ、俺達を助けてくれ。
俺達も、『三者を超えし者』を出来るだけ助けるから」




