366『またゲシュタルト崩壊。』
前話の『山柄・最年長』は、いちおー肉体年齢の話です。
肉体年齢 実年齢
山柄( 73歳 )( 73歳 )
源太( 28歳 )( 84歳 )
三者を超えし者( 18歳 )( 2018歳 )
【核】。
【人土】にとっての【土の核】。
【人狼】にとっての【狼の核】。
【人花】にとっての【花の核】。
各種族を象徴する、魔力集積装置。
そんな程度の認識しかなかった。
「今・・【土の核】って・・」
「じ、【人土村】に置いてきたよ。
いざという時は、幹太さん代わりに・・と」
まだ、ザレが【人狼の巫女】だと分かっていなかった頃、【三種族の巫女】として洗脳を解くため・・【人狼の巫女】の代わりに【狼の核】を代用した事がある。
効果は・・微妙ではあったけど、無いでもなかった。
そのため【核】とは【巫女】の、劣化代用品だと思っていたんだけど・・。
「源太ちゃん、ビタぁ!」
「うん?
なんじゃい、幹太?」
「幹太お姉さん、どうしたのですか?」
源太ちゃんはザレと【人狼】達と共に、ビタは【人花】達と共に、それぞれの作業を交代しつつ汁料理を飲んでいた。
のを、呼びだして斯斯然然。
「【狼の核】と【花の核】は?」
「儂が持っとっても関係無いからの、【人狼】の長に渡したぞ。
・・ザラクス殿の形見は、この剣だけで充分でな」
「私はピヒタ姉様に渡したのです」
基本ナンダカンダで、パワーアップした俺達には・・あんま【核】って必要無いんだよな。
三種族も、パワーアップした【三巫女】の恩恵をちゃんと受けられるし尚更。
ある意味、唯の『長を証明する品』でしか無い。
【人狼】の長と、【人花】の長が【核】を持って来たのでついでに族長会議。
「それぞれの【核】ってさあ。
当時ジート砦と共に日本へ転移したせいで無くしちゃって・・苦労したとか?」
「いいや。
当時の先祖は知らんが・・少なくとも儂等は、失われた秘宝が戻ってきた程度としか・・。」
「私達もですよ、【人土の巫女】。
正直、ビタと共に居れば事足ります」
ピヒタが飲む汁入りマグカップの中に、俺が入れた記憶の無い干し魚。
この国に住む人って、基本は肉と野菜だけなんだよな。
大陸の内側ゆえ、あんま魚料理は盛んに無い。
在っても小さい川魚。
日本人の多い【人土村】は多少高くても海の魚が売れるので、リャター商会や各商工ギルドが持ってくる。
( アッチも冷凍トラックがあれば、海の幸が内陸で売れると分かるだろうし。)
その中の一つ。
俺と颯太達の影響で、海の幸好きになった人間が多いディッポファミリー傭兵団が保存していた魚を・・ピヒタにあげたっぽい。
タカリ・・じゃあ無いよな。
この前、アナナゴさんウーニさんと手を繋いで歩いていたし。
・・つか、【核】だ。
「なんか伝承は?
伝え残ってないのか?」
「さあ?」
「【人土】は・・死ぬ時、枕元に置いとくって言ってたねぇ?」
「そうだよ、颯太さん。
血の薄まった【人土】は、そうまでして少しずつ【核】に魔力を貯めてったんだ」
「ほぼカラッポだった【核】に、幹太さんが一瞬で満タンにしたんだよ」 という山柄さんに、颯太が 「エヘヘ♡」 と笑う。
・・エヘヘ♡
「そういやその時・・三ジジイ達が死後の魂を、【核】に捧げて云々・・とか何とか?」
「ザラクス殿が死した時、【狼の核】が光り熱を持ち始めたがのう」
アレは・・死んで肉体から飛び出た魔力が吸収されているだけ、だと思っていたんだけど。
「人一人分の魂から得られる魔力が、この【核】の中に納まるとは思えない。
チートとか関係なくな」
「でも、ただの魔力保管庫とは・・言い難いのかもね」
山柄さんが、【核】と思われる王区を眺めつつ溢す。




