365『推理物で、なんで皆あの手法を取るのか分かりました。スゲエやり易いです。』
「で?
【空の口】の『肉体・魔力』が無い云々は置いといて───
結果だけを言えば、この王区は生きているの?
魔物になったの?」
彩佳が腕をくみ、地面・・というか、王区をドシドシ踏みつけている。
【空の口】の方は、情報が無いし・・分かるところから手をつけようって考えだな。
「うーん・・同じ種類の小さい魔物がビッシリ地中に潜っていたら、こうゆう感じになると思うけど・・」
王区全体が魔法を使っている、この感じ・・余りに範囲が広大で、余りに意思薄弱すぎる。
生きているっつうか、機械的っつうか、無差別っつうか。
「まさか、【空の口】を復活させる儀式とか・・」
『そんな儀式は存在しない。
放っておいても復活するし、放っておく以外復活させる手段は無い』
「と・・取敢ず【巫女】様は腕の治療を。
我等は王区を攻撃してみます」
「・・・・。
分かりました、気をつけて下さい」
チラリ、『三者を超えし者』の方を見るが・・攻撃し始めた【人土】達を咎める様子は無い。
困惑した感じはあるけど・・自分でどうしたら良いか分かってない感じか。
ディッポファミリー傭兵団も、ジキアに聞きつつ・・困惑しながら地面に剣をザクザク刺している。
ジキアも答えようが無いよな。
青い世界から見ても、魔法が王区全体均一に使われている。
「ドコを刺せば良い?」と聞かれれば、「ドコでも良い」以外、言いようが無い。
【人土】は魔力吸収。
【人狼】は長槍を地面に刺す。
【人花】は巨大な根を張る植物を植えている。
腕に薬を塗り、包帯を巻いて貰ったら、辺りをプラプラ。
「ビタ、この土地はどうだ?」
「畑として見たら、最高なのです」
「何か・・地下に無いか?
その・・」
「人間の死体とか骨は無いのです」
「そ、そうか」
アッチではガロスが地面に亀裂を入れたり、木々を燃やしたりしていた。
「ガロス・・」
「・・・・。
我が家の使用人が、出入りの業者として城に潜入すると聞いた時・・何故、我は彼を止めなかったのか───」
「・・・・」
ガロスは【銀星王国】の最高権力者16人の一人、「 ダロス ダ アスェベタ 」 の長男。
クズだらけの【銀星王国】において珍しい、民想いの家で育てられた。
その矜持は強く、この家で働いていた使用人の人々もまた・・その矜持を持っていたんだろう。
「『人は誰しも行動途中だ。
その中で、出会い、共に進む』っつった奴を俺は知っているぞ」
「・・その者は、物知らずだったのだ」
「だけど俺は、その通りだと思う。
その使用人さんも・・行動しなきゃいけなかったんだ」
「・・・・」
ガロスが、微かに肩を震わせる。
・・後は彼に任せよう。
父さんが歯軋りしているのに気づいたから、とかじゃないよ。
( 流石に父さんも、今のガロスを慰める事を止めなかったし。)
「みなさぁ~ん!!」
「「「姐さぁんっ!」」」
リャター夫人達は、誰も居ない虚空に向かって呼び掛けていた。
「カンタさん・・」
「リャター夫人・・俺が・・」
誰も居ないと分かっていた。
・・でも。
極大の魔法を撃った。
白百合騎士団が消えた、この場所で。
「カンタさんは、やらなければ成らない事をやったのよ。
もし、あの時カンタさんが魔法を撃たなければ・・私は貴女を怒っていたわぁ~」
うっ・・ニコニコしつつ、手をワキワキさせてくる。
勘弁して下さい。
「あの娘達も騎士団なの。
・・人の命を奪い、奪われる事を覚悟しなきゃならない職業の人間だもの。
私だって覚悟だけはしていたわ・・」
「・・・・」
「・・だけど、こんな・・こんな訳の分からない理不尽な理由で───
騎士団員が死ぬ時は、それだけの平和をもたらさなければ成らないの」
「・・はい」
「だからカンタさん。
貴女は魔法を撃ちなさい。
フォローは私達が全力でするわ!」
「はいっ!」
ホント、凄い人だなあ。
女生徒達も、俺を微笑みながら見ている。
嘘も悪意も欠片たりとて見えない。
この人達にグチグチ自虐するのは失礼だ。
俺は撃つべき魔法を撃ったと理解し、彼女達から離れる。
彼女達が白百合騎士団を探すのは、また別だしな。
「ザレ」
「御姉様!」
「俺が魔法を撃つ前・・人の匂いとか在ったのかな・・?」
「いいえ、全く。
それこそ・・何年も無人だったかの如く」
「そうか・・」
「【人土の巫女】、土の匂いもオカシイぞ」
土を長槍でザクザク掘っていた、【人狼】一番の力持ちが巨大な穴を掘り、底の匂いを嗅ぎながら言う。
「というと?」
「「 何が? 」と、問われれば「 分からん 」としか、答えようが無い。
ただ───『コレ』は、土であって土では無い」
「そう・・か」
「同じ『土』が付くのだから、【人土】の方が分かるのでは?」
「分かるか」
茶化しレベルとは言え・・種族差別にも聞こえたので、湖の水で水鉄砲。
顔でも洗え。
「山柄さん」
「幹太さん・・こりゃ洗脳魔法を吸ってた時と、おんなじ感覚だね」
「表層の魔力だけしか吸収出来ない感じですか」
「ああ」
【人土】達が至る所で、王区から感じる魔力を吸収しているけど・・手応えを感じられないみたいだな。
「さっき、同じ【土】なんだから云々だなんて言われちゃいましたよ」
「【人狼】ですか?
戦争ですね。
取敢ずザレさんの恥ずかしい写真をバラ撒きましょう!
( 半目のやつとか )」
低俗な言葉に、低俗な仕返しせんで宜しい。
頭を冷やしなされ。
湖の───( 以下略。)
「私達だから分かる事ねえ」
「山柄さんまで【人狼】のジョークを、そんな真剣に・・」
「ああ、違うよ。
なんにも進展が無いから、只の気分転換さ」
「はあ」
まあ、みんな心労が見え始めている。
ココまでトラックやバス、キャンピングカーで来ていた。
一旦休憩をとるか。
数人の【人土】達を連れ、調理開始。
この場の人数分だから、食材を切って鍋にブチ込むだけの雑な汁料理だけどな。
俺が調理し始めた事に気づいた各々が、適当な所で食事休憩。
「ジート砦の一部ごと、地球へと飛ばされ・・異世界物質と戦いながら日本人と血が交ざり───」
山柄さんはまだ、さっきの続き。
一応・・この中で最年長なんだし、労いも込めて汁を飲む邪魔をしないよう肩揉み。
「───ジート砦の物を売って財を成し、【変換機】等を作って・・」
「そういや、地球のジート砦ってドコに有るんですか?」
「石材すら売ったらしいから、現存はして無───あ~ソコソコ・・転移した場所は、今の本部があった場所だよ」
「ああ、あの三ジジイが居た・・」
【人土】最高権力者は自分達。
【巫女】などと言う、訳の分からない奴など要らん。
【人土】は【核】だけ崇めていれば良い!
・・とかなんとか、のたまったまま死んでいったジジイ達だ。
「じゃあ、異世界から持ってきた中で残っているのは【核】だけ───」
「・・・・あ」
「・・・・あ」
この王区の魔力・・これ、【核】だ!?




