364『エルフもゴブリンもオークも。』
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俺の本気の一撃で、城が・・破壊された───ハズだ。
慣性作用反作用制御魔法で衝撃波の大部分は逃した。
辺りの被害は・・あの威力にしては少ない方だろう。
「───・・っ?
・・空っぽ?」
城は、確かにバラバラの破片になっていた。
・・けど、何か変だ。
城に誰も居ないのは、状況証拠から分かっていた。
「・・けど、中身まで無いものなのか・・?」
城はバラバラになっていた。
コンクリートだか何だか・・城の破片だけが、辺りに散らばっている。
調度品、家具、武具、生活用品、国旗・・あと、なんだ?
とにかく・・城を破壊したら出てくる筈のアレやコレの破片だとかが一切無い。
脱出するなりして、人間は居ないとしても・・持ち出す筈の無いものまで無い。
城の破片が残っている以上、調度品とかだけ溶けて蒸発した訳じゃない。
「元からそういった物が、まったく無かった・・訳ないしな」
ディッポ団長が子供の頃 ( まだ貴族だった頃 ) 出会ったという王子は、嫌みったらしいクソガキだったそうだ。
そんなんと、そんなんの家族が、なんも持って無いってのはなあ・・。
「・・っと。
颯太達からの魔力パスか・・」
どうする?
何かがオカシイ。
そんな場所に呼び戻して良い───
「・・いや、今さらか」
俺にゃあ今、何が起こってんのかサッパリ分からん。
今までだって皆と、助け助けられてココまで来たんだ。
「取敢ず、困惑の感情をパスに乗っけて・・と」
颯太達が居る、地下シェルターを持ち上げる。
颯太達からも、俺のパスを受けて困惑しているようだ。
「幹太姉ちゃん!」
「颯太!」
皆は俺の方へ。
俺は皆の方へ駆け寄る。
「うっわぁ~・・ヤりにヤッたわねぇ~・・」
「・・っは!
本当に『城』を破壊しやがったゼ」
「カンタさん、城に・・誰も居なかったのね!?」
「アキハラカンタよっ!?」
皆が思い思いの台詞を喋る。
リャター夫人は白百合騎士団、ガロスは城に潜入したという使用人が気になるみたいだな。
「ソレが斯斯然然・・。
調度品の類いも、人間の類いも・・何も無いんです」
「そうね・・この破片の総数が、『城ひとつ分』とは思えないけど───こうも、何も無いのはねえ」
「おう、オメェ等!
油断すんじゃ無ェぞ!」
「「「了解!」」」
やっぱ皆も俺と似た感想を抱いたようで、警戒している。
『・・っ』
「・・・・?
『三者を超えし者』、どうした?」
『そんな・・有り得ない!』
「『三者を超えし者』っ!?」
状況を聞いて、辺りを確認をしていた『三者を超えし者』が・・どんどん顔色を悪くしてゆく。
呆然としだしたんで、俺が大声で叫ぶと・・やっと顔をコチラに向ける。
『・・あ、アキハラカンタ』
「ああ」
『再び・・【スライムの腕】に成れるか?』
「あ、ああ?」
多少、疲れちゃあいるけど・・【スライムの腕】を展開するには、あんま関係ない。
「出来たぞ・・・・んん?」
『見えるか?』
「・・ああ」
青い世界。
魔力を、流れとして見える世界。
魔力の流れが・・おかしい?
「まるで・・城が───いや、王区そのものが、魔法を使っているみたいな・・!」
「幹太姉ちゃん?」
「幹太、どういう事?」
『城は・・破壊されていない』
「「「はあっ!?」」」
『三者を超えし者』の言葉で、皆に動揺が広がってゆく。
「『三───」
『・・近寄らないで欲しい』
「どうして?
やっぱり、さっきのこと・・怒ってるの?」
『アキハラソウタ、それは違う。
貴女は何も悪くない』
颯太と何か、在ったのか?
まあ、ソレそのものは大した事じゃ無さそうだ。
「俺達じゃ・・チカラに成れないのか?」
『・・・・』
「もしかして・・さっき言っていた、『俺達の敵になる』って話か?」
『・・・・。
・・まだ、確定ではない。
しかし・・ 「 億が一 」 から 「 万 」───いや、「 百が一 」 ぐらいには確率が上がった』
『三者を超えし者』が───
絶望に塗れた顔とも、希望に満ちた顔とも言える・・表現しようの無い表情を浮かべていた。
『泣き笑い』が、一番近い表現か?
『『王区』そのものが『魔物』と化した可能性がある』
「『王区』が・・?」
皆は『三者を超えし者』が、何を言っているのか・・計り兼ねているけど───
この・・青い世界を見せられたらな。
この『王区』は生きている。
『魔物とは・・本来、何らかの魔法を使うのに特化して進化した動物の総称だ』
「ああ、なんとなくそうゆう説は聞いた事がある。
人間以外の魔法使い、ソレが魔物だと」
三種族は・・狭義では人間と別種族扱いをしているけど、広義では人間との差は殆んど無いので魔物とは言い難い。
この世界に ( たぶん ) エルフだのは居ないし、『人間タイプ』 の魔物は居ない。
『今でこそ他の種が混ざり、魔法使いでは無い魔物も存在するが』
「【コカトリス】とかが、そうだよな」
『そう。
王族の先祖が、魔法使い欲しさに【空の口】に子供を産ませたように・・原初の魔物も、【空の口】の肉体から産まれた』
「【空の口】の肉体から?」
『【空の口】クラスの超絶的魔法使いは、命を賭して・・まったく新しい生物を産みだせるそうだ』
「【空の口】クラス・・」
だけど、【空の口】は封印はまだ解けていない。
そもそも・・・・。
『今の【空の口】は、『生と死』を超越した『魂』だけの存在。
つまり・・肉体は存在しない』
「【空の口】クラスの『魔力』と『肉体』が無い。
なので、新たな魔物が産まれるハズが無い・・ってことだな?」
「技術は有る。
材料は無い。
だから 「 億が一 」 って訳なのね」
ん・・?
命ってことは・・。
「まさか、都民や騎士団が消えた理由って・・」
俺の一言に・・ザレやリャター夫人に女学園の皆が青ざめる。
・・けど『三者を超えし者』がリャター夫人達の方へ向き、首を横に振る。
『何百年か前・・この事を知った邪教( 【空の口】を崇める( フリをした )集団 )が、300人の魔法使いをイケニエに、新魔物を作ろうとしたみたいだが・・失敗した』
「その話は聞いた事が有るのぉ」
源太ちゃんから怒気が洩れでる。
確か、『街破級【ニーズホッグ】』を育てるのに、300人の魔法使いの子供が利用されていたんだっけ。
『例え【銀星王国首都】全ての人間をイケニエにしようと・・そんな事は「億が一」レベルで有り得ない』




