362『あのサイズ。』
最後、貴族区の壁を越え・・王族の住む区域。
中心区域とはいえ・・かなり広大な土地だな。
『美しい景色』と言えるだろう。
「この森や湖も、王族ん家の庭なの?
幹太姉ちゃん?」
「だなあ。
村なら幾つも入るぞ、コレ」
以前女学園が管理する山にて、湖に住む『村破級【ケルピー】』を探索した魔法を使う。
湖には・・数種の高級魚。
あ~、アレ刺身で食いてぇ~。
「森も草原も食材の宝庫だわぁ~。
少なくとも・・王族と、城で働く人間全ての数年分を賄う事が出来るでしょうねぇ~」
「王区その物がシェルターになってるんだね」
リャター夫人と山柄さんの分析。
見える範囲だけで、ソレだけの食材は有る。
「人の気配は・・やっぱ無ェな」
「使用人とかの姿まで見えないのは・・」
ココまで食材が豊富に揃っているのは・・管理する人間が居るから。
『絶景』なんて言葉があるが・・『美しい景色』なんてのは、大概人工物。
大概の自然は、もっとカオスと言うか・・ゴチャッとしている。
人工物という事は、管理する人間が居なけりゃ、廃れるもの。
俺達を待ちかまえている・・にしては、なあ。
「王区の仕組みなンざ下々の人間にゃあ想像もつかンがよ・・こうもカラッポなのは異常だろ」
「ですよねー」
【銀星王国首都】のココまでを、全て調べた訳じゃないけど・・今んトコは誰一人として、会っていない。
『アキハラカンタ』
「ん?
どした、『三者を超えし者』?」
『この現象について───
万に一つも有り得ないが・・億に一つぐらいの可能性に、心当りが有る』
「えっ?」
『もし・・もしそうなら、自分は貴女達の敵に成らないといけないかもしれない』
「はあっ!?」
目を伏せ、申し訳なさそうにする『三者を超えし者』。
ソレ以上は言わない、とばかりにクチをギュッと閉ざす。
「そ・・そうか。
ま、まあ・・億が一の話だしな?」
「ソレで良いのかしら?」
彩佳が腕を組み、睨んでくるが・・そうゆうレベルの話をするなら俺だって、『三者を超えし者』が颯太達家族や仲間に手出ししてきたら、『三者を超えし者』といえど、敵と見なす。
誰だって譲れない『ナニか』は、有るだろう。
そもそも、『三者を超えし者』と俺達とでは【空の口】との関係がだいぶ違う。
完全なる敵同士とは言い難いんだしな。
「『アレ』を、ヤるのは・・良いんだな?」
『良い』
「分かった」
「・・ハァ。
ったく、しょうがないわね」
『ソレ』は、いわゆる『中世ヨーロッパ風』だとか『ファンタジー風』では無い・・強いて言うと、『タワー』。
東京タワー系じゃなくて、バベルの塔系のやつ。
高さは・・アレやコレやで、200mにちょい足らない程らしい。
「『城』・・か」
かなりの異常事態だ。
ひょっとしたら、城の中には人一人も居ないかもしれない。
なので、城ごといく。
もし、居たら───ゴメンね?
「【スライム】の腕・・!」
俺の腕を【スライム細胞】に纏わせる。
俺が本気を出す合図。
父さんが泣きそうな顔をしている・・けど、歯をくいしばり、頷いてくれた。
有難う。
皆の立つ場所ごと地面を沈下させ、地下シェルターのような物作る。
起こる衝撃波は想像つかないからな。
ココまで壁を破壊し、破壊した壁を吸収し、巨大化した・・超大型巨人を、一発の弾丸にする。
「『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』『硬度』『速度』・・・っ!」
確実にダメージを与えられるよう、内部破壊力よりも貫通力重視。
颯太と源太ちゃん、ディッポ団長からも、「 行けっ! 」という魔力パスが来る。
「───行くぞ!
全力全開・非爆発型貫通魔法っ!!!」




