360『御立派。』
「ぎゃあああああああああああっ!?」
「いやあああああああああああっ!?」
「お母さあああああああああんっ!?」
『はぁーーなぁーーれぇーーてぇーー下さーーーい』
うーん・・ビビらせるという目的は果たせたのかなあ?
「ねえ幹太ぁ?」
「は・・はい」
「あの人・・そんなにビビってないわねえ?」
「そうですかね?」
「そうよう♡
・・だって、アナタのコレカラを思うと───・・ねえ♡♡」
無言でカタカタと震える。
人は本当にビビると悲鳴なんて上げられないものな。
そうゆう意味では・・あの家族の恐怖は大したことも無いだろう。
笑顔の彩佳を前にしては。
◆◆◆
「分割せずに作りあげるのですね。
私も土魔法でイッキにヤろうとしたのですが、なかなか・・。
シッカリと形成するのは大変ですよ?」
「その辺はまあ・・」
【銀星王国首都】を取り囲む、分厚い壁と門。
コレを破壊するには中途半端な威力では足りず、ある程度以上の威力が必要なんだけど・・接近戦の不得意な俺の魔法は『高速で飛ばす』『爆発』『高熱』等で威力を上げる魔法が多い。
まあつまり・・『貫通弾』や『爆破片』で、街中や門前の人間に被害者が出る。
なので、そういった『攻撃魔法』は使えない。
かつ───
「門の外にいる男は無慈悲に。
女性と子供は恐怖より、威圧的なヤツでビビらす必要が有るんで・・出来るだけ『リアルな巨人』にしたいんですよねえ」
「成る程・・。
『見た目』で、素人が注意すべきフィギア作製点は『デフォルメ』ですね」
「デフォルメ?」
「顔を意識しすぎて、頭部が大きくなりすぎたり、手足の長さを間違えたり・・一カ所の崩れが、全体の見た目を崩します」
「バランスですか」
「はい」
魔法作製にも通じる話だなあ。
一カ所だけ歪だと、全体が無茶苦茶になる。
結果、込めた魔力の割りに弱い魔法になったり、唯の自爆技になったり。
「なので、出来るだけリアルな完成図を用意して下さい」
「リアル・・」
この世界において、鏡は超貴重品である。
なので、俺が俺の女体化した姿をハッキリ視認したのは・・日本に再転移してから。
つまり未だ今一つ、リアルな現在の自分というのを想像出来ない。
「って事は・・颯太の───」
「僕、ヤダよぅ」
「ええっ!?」
「だって・・その大きさの巨人を作るって事は・・・・スカートの中が・・」
「あ、ああ・・」
スカートの中までガチに作るつもりは無かったけど・・そう言われれば、意識せざるを得ない。
この手の魔法は、想像力がモロに出る。
「牢屋を作ろうとして、トイレを作ってしまったのはトラウマだし」
「・・ソレ、外の人間の前で言うンじゃ無ェぞ」
・・となると、ズボンの───
「ちょっ・・なんでコッチ見てんのよ!?」
「いや、彩佳・・今日はロングGパンだなあと」
「あ・・アタシ、嫌よ!?」
「源太ちゃんとザレもスカートだし・・男尊女卑の女性を救うのに、男の姿は的さない気がするし・・」
「・・っ。
・・・・後で覚えておきなさい?」
ううぅ・・。
彩佳の機嫌を損ねてしまった。
・・まあ、まだ女性達を助けたいっていう使命感も有るみたいだし、後でなんとか御機嫌をとろう。
「彩佳の顔・・彩佳の体・・彩佳の手足・・」
「ソレ・・手紙を思い出すから嫌だわっ!?」
「よし、仕上げ───あ」
ゾゾゾッ・・っと、身震いをした彩佳が、咄嗟にジキアの後ろに隠れ───
「あ」
「あ」
「あ」
ちょうど彩佳の隠れ方が・・彩佳の上半身に、ジキアの下半身が重なるような隠れ方で───巨人が・・巨人が、彩佳の上半身にジキアの下半身に・・・・っ!?
しかも巨人に、出動命令を出した後───
◆◆◆
「ぎゃあああああああああああっ!?」
「いやあああああああああああっ!?」
「お母さあああああああああんっ!?」
『はぁーーなぁーーれぇーーてぇーー下さーーーい』
うーん・・ビビらせるという目的は果たせたのかなあ?
門も、破片を上手く撒き散らさないように破壊出来ている。
「ねえ幹太ぁ?」
「は・・はい」
「あの人・・そんなにビビってないわねえ?」
「・・そうですかね?」
「そうよう♡
・・だって、アナタのコレカラを思うと───・・ねえ♡♡」
ジキアの下半身は未だ、脳裏に焼き付いている。
もう駄目ダ。
笑ウ彩佳ニ、ドンナ御機嫌取リモ、通用シナイ───




