359『怒られませんように。』
「門・・ですね」
「門だな」
【銀星王国首都】。
その最外周壁。
高く分厚く巨大な壁と門。
ソレらが、先行する自衛隊協賛( 協賛らしい )カメラを登載したクワガタで確認出来る位置まで来た。
( 颯太と源太ちゃんはもうちょい前から。)
その門が完全に、閉じられている。
「ウォールマリ───」
「そうゆうネタ禁止」
彩佳の何時ものボケに俺がツッコむと、回りは「 ・・またか 」といった顔。
・・何故、俺だけボケボケと言われて、彩佳はボケ扱いされないのだろう。
『三者を超えし者』が、やや鼻息荒く答える。
『街の奥にはローゼとシーナも有る』
「ボケが増えた!?」
「ウルセェぞ、お前ら。
敵の本拠地を前にしてンだから、もーちょい緊張感を持ちやがれ」
何で俺まで怒られてんの?
・・ま、いいや。
「門の回りに居るのは、行商人や旅人だけっぽいな」
「そうッスね。
洗脳・・されているの、いないの。
旅人は避難民ッスかね?」
「たぶんそうでしょうね。
装備がソレっぽくボロボロだわ」
物流回復の旅で何度も見た、行商人の格好をした者と・・ボロボロな格好の家族っぽい集団。
そんなんが門の前に集まっている。
コッチを気にして無いみたいだし、【空の口】関連とは違うようだな。
「洗脳されている行商人さん達は、助けたいです」
「・・御姉チャンが、そう言うならそうすりゃ良い。
俺からは特に反対理由は無ェな」
コッチの意見は全員から賛成、もしくは、俺が言うなら・・と、受け入れられた。
信用第一の行商人として働いている人間だ。
悪感情を抱かれる人は少ない。
「・・問題は回りの旅人だな。
この洗脳世界で行商人以外の旅をする者は、ほぼ確実に『洗脳されていない者』だぞ」
「音は拾えないけど・・喚いて暴れてしてる奴も居るわよ。
大概、いい年した男ね」
けど、行商人以外には・・やや殺気立つ。
「女性や子供もおる。
アキハラカンタよ、行商人の洗脳を解くだけならともかく・・今までの手段は通じんぞ」
今まで、家族連れを救ってきた時は・・トラウマを癒す料理で落ち着かせてから、暴力夫を【人茸化】してきた。
ソレをする暇がなあ・・。
「・・うーん。
【空の口】、魔女、王族、貴族、騎士団・・【銀星王国】のアッチ側の人間は、俺達の接近に気づいてますよね?」
「たぶンな」
「仕方無い・・。
彼女達に、有無を言わせないため・・多少ビビらせます」
「ビビらせ・・って」
皆が怪訝そうな顔をする中、辺りの・・生態系に影響が小さそうな岩や土を集める。
・・なんだろう。
楽しさと───ドロドロした感じ。
「【人土】の皆さん」
「は、はいっ!?」
俺が・・ゆっくり、優しく、【人土】の皆に語りかけると───
何故か、皆一斉に顔を青くする。
こんなに優しく語りかけているのにねえ?
「日本に居た頃に・・勝手に俺のフィギアを作ってましたよねえ・・」
「は・・はい」
「───あれ、誰ですか?」
「あ・・アレは【巫女】様のTV特番を作ったディレクターさんが・・」
「彼は飽くまで、企画者ですよねえ?」
知らん間に作られた俺の写真集とフィギア。
呆れはしたけど・・怒ってはない。
ただ───
「ザレ嬢チャンが持ってた『アレ』か。
ニホン人の手先の器用さの極限っつうか、スゲエ出来だとは思うがよ・・。
・・執念じみてたな。
たまに戦場で見るぜ、妖剣の類いだ」
「そーなんですよ!」
───何と言うか・・俺が、妙にエロく作られていた。
妖剣・村正ならぬ、妖フィギア・幹太。
「そ、そうだったかしら?」
「綺麗に、幹太姉ちゃんを作ってたと思うけどなぁ?」
パッと見は、そうでも無いけど───
「・・・・」
「・・・・」
「ほら、ザレとジキアがソワソワしているじゃんっ!?」
「二人とも・・?」
「「ゴメンなさい( ッス )」」
何つうか、特定の人だけに通じるメッセージとでも言うか。
エロく作られた側は、たまった物ではない。
俺はエロくない。
【人狼】が俺のフィギアを真似て、ザレのフィギアを作ったけど・・失敗して皆に大不評だったが、まだソッチの方がマシだ。
「フィギア、作ったのは誰ですか?」
恐る恐る、山柄さんが答えてくれる。
「た───田坂だよ」
「選りにも選って・・」
俺に惚れている、【人土】代表8人の一人。
【人土村】を長時間空ける訳にはいかない、という理由で・・置いてきた。
・・だってキモいから。
傲慢な性格はナリを潜めたけど・・とにかく、酷いナルシストでキモい。
「アイツが俺への性欲を全乗せしたフィギアかあ・・」
「 」
「 」
「 」
「ジキア?
ザレ?
・・あと、イーストさんも何か?」
「な、何も無いッス!」
「そ、そうですわっ!?」
「き、気のせいだ!」
何をブツクサ言ってんのか知らんけど・・。
ガロスが、「 ほう・・我も見たいな 」等と言っているが───絶対見せねえよ?
「そうか・・田坂か・・。
アイツは【人土村】に置いてきたし、そうでなくとも頼りたく無いし・・」
「あ、あの・・フィギアが何か?
エロ云々はともかく、フィギア作製の教師は私です。
田坂氏から伝授を頼まれたので」
彩佳以外でオタク談義をする( 最近は『三者を超えし者』も )【人土】の一人がオズオズと手を上げる。
「じゃあ、フィギア作製のコツを教えて下さい。
この岩土で、進○の巨フィギアを作りたいんで」




