356『多くの日本人は、間違った英語を使っているらしいです。』
「『アキハラカンタ』・・『自分』・・『良き日』・・『耳にバナナが詰まってますよ』?」
「この時期に咲く花が、風に揺れる音を聞きつつ貴女を想う───
・・っていう、愛の詩の出だしよ~」
父さんとの契約? か、なんかで、ガロスと文通する事になった。
で、ガロスから手紙が来たのだけれど・・未だコチラの文字を勉強中の俺には、たどたどしくしか読めない。
なので、リャター夫人に解読・・というか文字の勉強を依頼した───ら、何人か付いてきた。
俺に文字を教える、あるいは、共に教わりたい・・という事を免罪符に、人様のラブレターを見たいって人達。
「春は曙!」
「ど定番っちゃあ、ど定番なのね」
「定番の中に、如何に自分らしさを込めるのが貴族流なのですわ」
颯太と彩佳とザレに。
「ああっ、やはり官能小説ではないか!?
イヤラしい!」
「もう、嫉妬する旦那様・・カワイイっ♡」
父さんと、女学園生徒達。
「キザ~♡」
「え? 何でこの言い回しで・・」
「コレはアレに見たてて・・」
「超エロいじゃんっ!?」
後、何人かの各種族の女性達。
男は( 無理矢理ネジこんできた父さん以外、)シャットアウト。
やや、女子会じみてきたなあ。
人様から来た手紙を、他人に見せるのはどうか・・とも思ったけど、そうしなきゃ俺には読めないし。
( ガロスも、俺の語学力がこの程度だと知っているし。)
たぶん、ガロスもこの結果は想定済みだろう。
たぶん。
「貴族の子女の勉強で、手紙を使う事は無いワケじゃ無いわぁ~」
「リャターさん!
幹太は貴族では有りません!
貴族にも成りません!!」
「あらあら~。
ゴメンなさいね、オホホ♡」
そこじゃないけど・・まあいいや。
日本人も多いので、勉強会になっている。
「えーっと続きは───」
『どんな気分で』『過ごしているのか?』
「・・何かちょっと、ケンカ腰っぽいわね」
「本来は、相手を気遣った台詞よ~」
『猿ですら笑うというのにな』
「ケンカ売ってる?
ねえ、ケンカ売ってるわよね?」
「い、いろんな生き物が心安らぐみたいな意味ですわ」
『( 笑 )』
「ガロスと戦争よっ!」
「あ、貴女と笑顔でいたいって意味よ~」
『貴女が、怪我や病で苦しんで居ないか心配です』
「き、急にマトモに成ったわね」
「一応ずっと、マトモな文章なのですわ」
『なので、貴女の肉体を常に想像しています』
「ひいぃぃっ!?」
「貴女の体を常に案じています、って意味・・ぶ、文章的にはあまり変わり無いわねぇ~」
『監視してぇよ』
「ストーカー!」
「様子を見に行きたいって意味ですわ・・たぶん」
『( 笑 )』
「朗らかストーカー!」
「カンタさんの自己再生魔法なら、そんな心配しなくて良いから安心って意味よぉ~」
『クチバシの生えたジキア』
「幹太の体を想像し過ぎて、幻覚を見始めたっ!?」
「人の善意を盗むという伝承のある鳥・・から転じて、『貴女の心を奪う者』『恋敵』みたいな意味ですわ」
『雉も鳴かずば撃たれまい』
「殺されちゃった!?」
「恋敵に負けない・・みたいな意味でしょうねぇ~」
『シぃ~死ッ死ッ死ッ!』
「( 笑 )の方がマシ・・って言うか、笑ってるの!? それ!?」
「い・・いえ・・。
こ、ココはワタクシにも・・。
たぶん、ガロス特有の言い回しですわね」
『ああっ、口付けしたい』
「フンガあああああああああっ!!!」
「オジさんがキレたっ!?」
「に、ニホンより口付けは軽い意味だから~」
『口付けしたい口付けしたい口付けしたい!』
「ゴオおっ、グカっ!
ンガがかかかかかかかかかかっ!!!?」
「嫁部隊、オジさんが変なモンに進化する前に連れてって!」
「「「ラジャー!」」」
『ジキアと』
「彼は何を言っているんだ」
「急に冷静になった!?」
「ぶ、文法の違いよぉ~。
ココはココと繋がって・・」
『敬具、平穏な世にて平穏な生活を貴女と共に送りたい。
ガロスより』
「「「・・・・・・」」」
◆◆◆
「アキハラカンタよ。
最近、三種族達の・・とくに、女性達の我を見る目が変なのだが───
心当たりはないか?」
「さ、さあ?」
───人様から来た手紙を、他人に見せるのはどうか・・とも思ったけど、そうしなきゃ俺には読めないし。
( ガロスも、俺の語学力がこの程度だと知っているし。)
たぶん、ガロスもこの結果は想定済みだろう。
たぶん。




