355『火ぃ吹いたり、土地をコロがしたり、男を次々とたぶらかしたり・・。』
「うーん・・。
自失している【銀星王国】の貴族達が目覚めた時、どうなるかは分かんないですよねー・・」
「そうだな。
ガロス様は───【人土村】の化物の恐怖に・・ゆっくりじっくり晒されたから、実質植民地支配を受け入れたようなモンだしよ」
「【人土村】の化物・・」
無線機やトラックの事だろうか。
「まあ・・ガロスには悪いけど【人土村】に損が無いなら、良いかなあ?」
「・・【人土村】には、な」
「な、なんですか・・?」
元々、半日の会議で疲れた表情だったディッポ団長の表情が・・更に疲れた、というか、ゲンナリといった表情になる。
「親の愛は偉大っつうかな」
「ソレって・・」
「父さんの事だねっ!?」
父さんと源太ちゃんの姿は見えない。
父さんの今の仕事は・・色んな『人と人』『立場と立場』を繋げる仕事、とのこと。
なので今日の会議が終わって・・ある意味、コレからが父さんの仕事場なんだろう。
源太ちゃんはその護衛。
と・・思っていたんだけど───
「なにやら───
御姉チャン達の親父サンが、ガロス様と向き合って・・『今からが本番だ』とかなンとか言ってたゼ?
歴戦の戦士みてェな気迫を纏ってよ」
「あっ!
ソレで思い出したわっ!?
ジキア、アンタ・・オジさんに、幹太やアタシ達の情報を売ったわねっ!?」
「・・うっ!?」
「どうせ『喋ったら、御姉様との仲を少し融通する』・・とか言われて、ペラペラ喋ったのですわ!」
「あっ、アレは・・オレも気づかないウチに暴露されてて───誘導尋問ッス!」
「「問答無用っ!!」」
ジキアを使って、俺とガロスのやり取り等の情報収集をしたっぽい父さん。
何を会議しているのやら。
正直、自分の話とはいえ・・俺にはどうしようも無いからなあ。
『呪い』のせいで・・ガロスに対し、『そういう感情』は・・ある。
あるけど、ソレは───
ジキア達、ディッポファミリー傭兵団の皆に対してや・・男尊女卑を止めてくれた傭兵団、その他、複数の男女に抱く感情だ。
今は・・応えられない。
【人土村】の盟主として。
・・個人的に気にくわない【空の口】をブン殴るため。
「ソレは父さんも分かっていると思うんだけどなあ」
「『だからこそ』じゃねェか?」
「はあ・・?」
「【空の口】との戦争が終わったら次は・・ある意味もっと厄介な、ドでけェ『トロフィー争奪戦』があンのさ。
ぷらぷらと自由気儘に・・回りの心配だの気遣いだのを無視してくれる、『トロフィー』のな」
「トロフィー???」
よく分かんないけど・・【空の口】を倒すのは、俺の『目的』ではなく『手段』でしか無い。
俺の家族が、恩人が、仲間が、幸福になってもらう『目的』の為の・・『手段』。
本番は、この戦争の後にこそ有る。
「勘弁・・ッス!
勘弁して下さ・・・・」
こうゆう馬鹿騒ぎを何時までも続ける為の。
「・・もう・・だめ・・・・ッス」
◆◆◆
「くっ・・済まない、幹太」
何やら憔悴しきった父さんと源太ちゃん。
帰ってきたのは、他の皆から約二時間遅れ。
疲れ、憔悴ぐらいするだろうけど・・。
「だっ、大丈夫・・!?」
「ガロスとの文通を、止める手段が無かった・・!」
溜めて言う台詞か。
「・・いや、文通ぐらい良いけど。
どうせ提示報告とか有るし」
「幹太・・貴族との文通を舐めちゃいけない・・!
汗水垂らして働くのは一般市民、貴族の仕事は恋愛と言わんばかりに・・貴族の手紙は官能小説と化しているんだぞ!?」
「それ・・地球のどっかの歴史の話でしょ?
ガロスは本来、人類最高峰の魔法使いだし・・割りと汗水───」
「そうやって、油断させているんだ!
手練手管、どんな手段で幹太を落としにくるか・・!?」
どうしよう・・。
父さんがアホになってる気がする・・。
「颯太に関するアンタも、こんなモンよ」
「お、俺は颯太の幸福を願っているだけだ」
「ああ、後ついでにガロスは後方支援に回るそうだぞ」
そ、そんな魔王との最終決戦の配置を、ついで話で。




