353『絵面的にはオッサンと多少増えた美少女達でギュウギュウです。』
「表面の植物は同じなのです。
けどその下の苔などは、別の場所から持ってきた土のモノなのです」
「土の中身かあ。
ソレは分かんないなあ」
【ジート砦】の、崩れていない入口側と・・崩れた奥部側。
植物を操る【人花】のビタの目から見ると、この【ジート砦】は『継ぎ接ぎ』らしい。
何らかの理由により、倒壊した部分を新たに建てなおしたのは良いけど・・【旧ジート砦】に劣る強度ゆえに崩れた───ってトコかなあ?
「じゃあ、ココから直せば良いか。
でも、これだけ崩れてんなら『修繕』よか『新築』の方がイイかもな」
区画整理は、住む人達に任せた方が良い。
使いやすさは人それぞれだろうし。
「ビタ、教えてくれて有難う。
修繕は出来ないけど、たぶんガロスにも役立つ情報だろう」
「良かったのです」
頭を撫でると、うっとりしてくれるビタ。
日本で・・数人の専門家が、沢山の計器を使って、数日を使い・・地質調査をやっていた。
ウチの、目の前の道が調査対象で、その数日間は数kmが使い辛かったのでハッキリと覚えているのだ。
あの手間暇が・・ビタ一人、一瞬で終わったのは土地の支配者にとって、値千金の情報だと思う。
「悪いけど、砦全体を見てほしいな」
「おまかせあれ、なのです!」
てな訳で、砦の探索再開。
【ジート砦】、新旧の境目が有る広場で変な所に出た。
なんだ?
この沢山の穴?
・・でも。
「せっかくの広場なのに、走ることも運動も出来ませんね・・ザレ様」
「そうですわね、露天風呂でしょうか?」
ザレ達、【人狼】が怪訝そうにし。
「植物を育てるにも邪魔だな。
埋めるか、ビタ」
「土は良い土なのです」
ビタ達、【人花】は微妙な反応をする。
・・けど。
「・・そーかなあ?」
「調度よくない?」
「幹太? ・・颯太??
アンタ等、何を言って───」
俺達【人土】は・・吸い込まれるように、穴の中へと入ってゆく。
「って、他の【人土】達もっ!?」
「おお・・効くう・・♡」
「はふぅ・・♡」
「【巫女】様ぁ・・。
なんで他種族は分かんないんですかねぇ・・こんな癒しをぉ♡」
「幹太姉ちゃん・・コレがパワースポットってやつなのかなぁ・・?」
「彩佳・・【人土村】に届けてくれ。
コレは良い穴だ・・・・」
あああ・・落ちつく・・・。
マジ持って帰って、ココで寝たい。
「・・マジで何言ってんの?
アンタ等??」
「あ、アヤカ?
お・・御姉様達の様子が・・!??」
「───あ。
アタシ・・この光景、見た事あるわ」
「何なのです?」
うー・・。
颯太や皆も、うつらうつらと・・。
俺も・・。
「む、無線機!
だ、誰か『三者を超えし者』を呼び出して!」
「彼女も会議に参加していま───」
『なんだ?』
「ぎょわああああっ!?」
あの品の無───個性的な悲鳴は、彩佳かなあぁ・・。
何かあったのかぁ・・まあ、ザレやビタも居るならなんとか成るだろぉぉ・・。
「つ、土の巨人!?」
『自分を呼ぼうとしたか?』
「さ、『三者を超えし者』!?
アンタ、会議に出席してたんじゃなかったの!?」
『【空の口】関連の議題には興味があったが、ソレ以外はどうでも良いので分身を、面白そ───何かやらかしそうなソチラの『ネ○バス』とやらに張り付かせていた』
「ああ・・国境の村で見た、自らの一部で作った巨人なのね」
『三者を超え・・あああ、眠いぃ。
「ま、まあ良いわ・・。
【人土】達がウットリしてる、あの【穴】ってもしかして───」
『【スライムの穴】、だな』
「やっぱり・・」
彩佳達がコッチを指さしてきながら叫んでるけど・・ああ気持ちイイ・・。
『自分が【魔王の粘土】と混ざりながら戦った後。
穴の中で傷を癒していた名残。
【スライム】は。
【スライム】の子孫の【人土】は。
あの種の穴で、肉体と精神を癒す』
「・・もしかして、ココの穴・・全てが【スライム】の?」
『そうだな。
・・・・ん?
ココは・・この砦は───』
「知ってるの?」
『・・・・・・』
『三者を超えし者』がぁぁ、彩佳の質問を無視してぇぇ・・体を小刻みに震わせてぇぇぇ・・。
『・・ヴ・・ヴヴヴヴ───』
「さ、『三者を超えし者』?」
『・・・・今後、この砦は『三者を超えし者』の名において、立入禁止にする。
・・では皆を連れて帰ろう』
「ちょ・・っ!?」
何か、彩佳と『三者を超えし者』が言い争いをして───
「───おわあぁぁっ!?」
「なっ、なにっ!?」
「いやあんっ、もっとこの穴に入っていたァァい!!」
俺達の入っていた穴ごと、土が持ち上げられてゆく。
・・ああ・・ああああ・・・・!
『穴は【人土】にあげるから、もう帰る』
◆◆◆
充実感と喪失感から目覚め。
気づいたら、土魔法で作ったバスの前だった。
バスの上に、【スライムの穴】とやらを積まれて【ジート村】へと帰らされる。
・・つーか、『三者を超えし者』?
何時の間に来てたんだ?
『・・あの砦は千年前、【空の口】の最後の一撃をくらい消滅した筈の砦』
「ソレって・・」
「【人土】達が、日本へと転移した一撃っ!?」
確か日本に住む【人土】達の先祖は、【空の口】との戦いの果てに・・砦ごと日本へ転移したという。
ソレが【ジート砦】( の一部 )だったってのか?




