345『様々な視点⑧』
畑に毒を撒く。
領地に毒草を生やす。
風に悪性のカビを混ぜる。
鼠に糧となり薬となる草を与える。
蚤虱を増やす。
神も、神を信じる者も、神を信じる者を信じる者も、みんな・・みんな死んでしまえ。
踠き苦しみながら死んでしまえ。
◆◆◆
『魔女よ、神の御業にて浄化されよ』
殺す・・もっと殺す・・!
私は妹に誓った!
コレからは家族第一に成ると!
家族の幸福を願う!
家族の敵の破滅を願う!
家族の仇を取る!
『魔女と魔女の家族に、神の愛は届かない』
有相無相の愛など要らない!
家族、家族の愛のみでいい!
『魔女に家族など出来ぬ』
ウルサイっ!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
死ね!
『・・お前が、死ね』
◆◆◆
・
・
・
・
。
・
・ ま
た
こ
の 青
い
世界
。
誰
も
居
な
い
世
界。
・
・
い
ず
れ
戻
る
世
界
・
・ 。
◆◆◆
「シエル」
「・・はぃ、とおしゃん。
なんでしょおか」
「母さんの体調が悪くなってきた。
済まないが、薬を買って来てくれ」
「わかりぃました」
私は『シエル』。
今生の名前。
今の母は、身体が弱い。
今、母に死なれるのは困る。
・・何れ殺す。
だけど、今は駄目。
今の私は、腹の中からやり直して三年目の小さな子供。
親の庇護なくば、生きてゆけない。
父は母を愛している。
母が死ねば、父も死ぬだろう。
そうなれば、私が死ぬ。
・・死は怖くない。
ただ、ここの人間を皆殺しにする前には死ねない。
『青い薬』で青い世界を見てからは、『植物を操る』所を『想像』しながら、植物にチカラを送ると・・本当に操れる───という能力を手に入れた。
死ですら失われないこの能力で、病気の元を色々と増やしていたけど・・一人では非効率だ。
何か別の病気・・愛を紡ぐたびに死ぬ病気なんて皮肉が効いてて良いかもしれない。
◆◆◆
「シエル」
「・・はい、父さん。
何でしょうか?」
イライラする。
もうすぐ今生で十二になるというのに、私は未だ魔王と呼べる程のチカラを手に出来てはいない。
だから何となく、今の故郷を滅ぼせずにいた。
街に出て、見知らぬ大量の誰彼を殺しまくれば良いのだろうか?
「今すぐ、ウチから出ていけ」
・・っ!?
「なっ、何故・・!?」
確かに私にとって彼等は、唯の『金ヅル』。
家族愛など、微塵も在りはしない。
そして・・彼等にとっても、私は家族では無かったのだ。
「いいから早く、出てい───」
ごぼり。
父の腹から、尖った物が生える。
父の口から、赤い物が吐き出される。
「───シエル、ウチから逃げろ・・っ!」
「とっ、父さ・・?」
全身からチカラが抜けて、崩れ落ちる・・父。
『オマエかあぁぁ?
良い薬草の在処を知っているという娘はあぁぁぁ?』
「!?」
崩れた父の後ろから現れたのは、血が滴る剣を持った男。
視線が、私を見ているようで見ていない。
『おお・・ぉああおおおう、我がが神よ・・かか感謝しまます。
本ん隊のクズずずず共共に追放されされたワタシの前に、魔女を寄寄寄越してくれてぇぇぇぇ・・!』
神・・魔女っ!?
コイツ・・騎士───いや、騎士崩れの野盗か・・!
『さあぁぁ、魔女よぉぉ・・。
薬草そうをを寄越せぇぇぇ!
か身体だだだ中をお虫虫が這い回るるるんだよぉぉぉぉ・・っ!!?』
ウルサイ。
そうそうと殺し、村へと帰る。
我が家に着いて・・何?
何故、ウチに村人が集まって・・?
『まったく、この疫病神親子が!?
母親は伝染病、娘は薬草狂い。
だからあんなヤク中に、この村が目ぇつけられるんだよ!』
『さっさと父親には娘を連れてきて貰って家族共々、野盗共に渡さなきゃね!』
『教会じゃないのか?』
『どっちでも良いよ、ちゃんと死んでさえくれりゃあね。
高く金を出す方に渡すだけさ!』
・・・・。
「何をやっているの?」
『───わあっ!?
た、たまげたよ・・。
・・あれ、父親はどうしたんだい?』
『逃げたか?
・・まあ良い、一番金になるのはこの娘さね!』
「シエル、逃げて・・!」
『煩いよっ!』
「シエ・・ル・・」
『ちょいと、あんたら・・ヤリすぎだよ。
母親が死んじまったくじゃないかい』
『良いさ、見ろよ。
恐怖で固まってらあ・・両親と違って、簡単にコトが進みゅ~~い』
『『『あ?
何を言っれれレェエ───』』』
下顎が崩れ落ちた男の様子を、村人達は確認する事もなく崩れてゆく。
・・一瞬で成長した、私の毒草によって。
「───なあ~んだ」
『家族』。
『家族』が、魔王になる為に必要な存在だったんだ。
妹は逃がした。
アレから何百年経っているのか分からないけど・・もう、寿命で死んでいる。
家族の仇を取るという想いで、ココまできた私のモチベーションは・・知らず知らずのうちに低下していたらしい。
「父さん、母さん・・。
私は、貴方たちの家族で───
貴方たちは、私の家族だったのね」
次の生では、子を作るのも良いのかもしれない。
「私の命を糧に・・愛しあうたび死に絶える病よ、流行れ───」
この地の人が苦しむ様子を、私は確認する事もなく崩れてゆく。




