344『多くの男達にとっても眼福でした。』
「ぴ、ピヒタ・・旨いであるか?」
「ええ。
『村破級』の肉ともなると、【人土の巫女】の料理のような、充実感が在ります」
「ビタはどうだい?」
「気持ちが嬉しいのです!」
・・にたあ♡
「か・・カンタっ!?
お、お前・・何時からソコに居た!?」
「えーっと・・。
『 お、お前の為だけに狩った訳じゃ無いんだからなっ!?』
・・の辺り?」
「最初っからでは無いかあああっ!?」
魔物の素材回収解体現場にて・・野太いツンデレが聞こえてきたのでソソソと来てみれば───この現場。
「眼福です♡」
「ぐっ・・」
恥ずかしさに身悶えするアナナゴさんとウーニさん。
・・カワイイ。
「【人土の巫女】!
私もディッポファミリー傭兵団に入団しました!」
「私もなのです!」
「え? マジで?」
ディッポ団長に向くと、頷かれる。
焚き付けはしたけど・・食の為にソコまでするか?
【人花】の民の許可も、ちゃんと得たらしい。
まあ・・ビタはずっと俺達やディッポファミリー傭兵団と一緒に居たし、一緒に戦ってきた。
連携、【人花の巫女】としての戦力、共に申し分無いか。
・・ならダメ押し。
「アナナゴさんとウーニさんは、ディッポファミリー傭兵団戦闘部隊の中でも特に───美味い魔物を、美味いまま仕留める技術に長けててなあ」
「へぇ~♡」
「日本人の俺としては、やっぱり料理は素材が美味くないと・・。
その点、二人の素材は団員───いや、各傭兵団の中でも随一でなあ」
「アへぇ~♡」
ピヒタの目に、ハートマークが宿りつつある。
グッド!
後はアナナゴさんとウーニさんに小声で助言。
「( 大人の知識・風格といった許容を見せつつ・・男らしさも少しずつ織り交ぜてアピールして下さいね♡ )」
「( う、うむ )」
「( ・・ちなみに、ビタは?
彼女も可愛い上に性格が良いですよね? )」
「( ・・・・。
幼女趣味では無いので、妹のようなモノだが───
・・か、可愛いとは思う・・ )」
オ~ケ~、オ~ケ~。
オォォル・オッケェェェェイ♡♡
別に、恋人になれとは言わない。
ただ姉一人妹一人、この歳で家族を失った二人なんだ。
【人花】の民───
下から支える人だけじゃなく、隣に並び立つ人も居てほしい。
「・・いよいよ、【空の口】に攻めいる時だからな」
◆◆◆
凡そ、二週間後。
人材。
物資。
準備は整った。
俺達の眼前には、秋原家。
そして秋原家に随伴するように6台のキャンピングカーと、10台のバスと、30台のトラックが有る。
「キャンピングカーは平和になったら、ウチにも1・2台は欲しいゼ」
「そうッスね」
「平和になった後こそ、ディッポファミリー傭兵団のような行商隊が必要になりますから」
アレから、魔物もヴォイド使いも・・一切攻めてこない。
手駒が無いからか。
はたまた、戦力の分散に意味は無いと理解したからか。
【空の口】はその辺、無頓着っぽい。
日本に送られてきた『街破級【アジ・タハーカ】』も・・『対・魔法特化』の魔物を、魔力の存在しない世界へと送りこむぐらいだしな。
( ソレでも、勝てたのが奇跡なほど苦戦したけど。)
「国境の村の商工ギルド長から紹介された魔物の素材加工業者の助力で、オール魔物素材製の機械部品も幾つか出来たそうですしね」
「らしィな。
ゲンシ? 操作魔法?? ・・とやらのお陰で、加工速度も大幅に短縮されてるそうじゃねェか」
例えば溶接なら、金属同士どころか・・魔物の生体素材とですら物同士を接触させるだけで原子LVで溶接できる。
変形なら、圧力を掛ける訳じゃないので強力なプレス機やノコギリなどは必要としない。
つまり製造過程では、燃料や潤滑油やガスなどの消費は限りなく少なくなる。
生活用や戦闘用に回せる訳だ。
ソレも、【人土】の体内の【スライム細胞】を爆発的に増やしたから出来る・・との事。
「もう一週間も待てば、キャンピングカーやバス、トラックも倍は用意できるらしいんですけど」
「そう成りゃア助かるが───
『三者を超えし者』の計算じゃあギリギリだってなァ?」
「ええ」
現状、唯一洗脳されていない【銀星王国】の大貴族・・『ガロス ダ アスェベタ』の本拠地、『ジート砦』を襲った地震───
アレは、地震ではなかった。
『三者を超えし者』曰く・・『空間の軋み』、だそうだ。
故に、あの大震れでも極々限定的な範囲しか被害がでなかったみたいだな。
『 地殻をバリアで包み、その中だけがダメージを受けたと思ってほしい 』
との事。
空間の軋みは【空の口】の封印が解ける前触れであり、その揺れが・・ここ数日、連続している。
復活は目前。
・・今、出発しないと間に合わないようだ。
「まあ、【人土村】最強戦力が揃っているんです。
負けやしませんよ」
「はン、その最強の中の最強がナニ言ってやがる」
「はは・・」
「───ま、最強でも・・まだ小娘なンだ。
無茶だけはすンな。
・・死ぬんじゃ無ェぜ?」
「はいっ!」
昨日も父さんかにも、泣かれながら言われた。
大丈夫。
思いっきり長生きしてやるさ。
当然みんなにも長生きしてもらう。
「心配しないで~。
カンタさんは皆で守るもの~♡」
「えっ?
その声・・!」
声をした方を見ると───
真っ白なワーカーウェアの上に、真っ白な胸当て・籠手・脛当てを身に着けた、リャター夫人と女学園生徒達が居た。
「お久しぶりねぇ~カンタさん♡」
「お・・お久しぶりです!
でも、リャター商会は大丈夫なんですか?」
「うふふ♡
今日の出撃に合わせる為にずっと、会えなかったんですもの。
ワタシが必要な仕事は全部済ませたし、残りは主人と女学園の卒業生達に任せたわ!」
この日の為に用意した装備も、嘗て自分が所属していた白百合騎士団のデザインを組みつつ・・天然素材から作った『なんちゃらナノファイバー』とかいうカーボン繊維よか強い素材の服と鎧で固めているらしい。
「・・って事は、【空の口】退治の旅に・・」
「当然よ。
ワタシは【銀星王国】を守護する騎士団団長であり・・カンタさんの保護者でもあるんだから~♡
・・会えなくて寂しかったわあ」
「俺もです・・まさか来てくれるなんて、有難う御座いま───」
「・・だから久々のぉ・・えいっ♡」
「ぎにゃあああああああああああああああああああああああああああっ!?」
「ああ・・やっぱり可愛いって正義だわあ♡♡」
颯太は一瞬で。
ドン引きしていた源太ちゃんはやや遅れで逃げだしたけど・・こうゆう時のリャター夫人は、ほぼ瞬間移動するからなあ・・。
・・二人とも容易く捕まって、「 ぎにゃあ 」されていた。
( ついでに彩佳とピヒタも。
ピヒタはコレで、ちょい女恐怖症になってしまい、俺の妾だ何だとかと言わなくなり、アナナゴさんウーニさんとの距離が若干縮まった。)




