338『彼女SUKEBEEEEEEEEEEEE!』
「は・・はあ!??」
一言発するのがやっと・・といった【人狼】達。
「【人狼】の先祖、『覇者』は子煩悩で・・」
『子煩悩、と言うかドスケベ・・』
「しっ!? 」
『でも覇者は、朝昼晩とヨランギに跨がり───』
「しぃーーっ!? 」
【人狼】達はフリーズしたまま。
ザレは顔が赤い。
彩佳は「 ドスケベんベんベん 」などと、訳の分からない歌を歌っている。
耳に残っちゃうから止めろ。
「更に覇者が、物凄く女が産まれない一族だったらしいから・・。
覇者の娘から代々続いた『女達の家系』なら無条件で【人狼の巫女】に選ばれても、オカシく無い───っていう説だ」
「覇者の娘の娘の娘の・・」
【人土の巫女】の資格条件は【人土】最強。
その座を、俺と颯太は奪いあう事なく( 望んだ座じゃあ無いけど )魔力の大きい俺が選ばれた。
【人狼の巫女】の資格は、約20人分の1人の確率で産まれてくる女。
一時代に二人も女が産まれる事を想定すらしてないシステムだ。
「【前巫女】に、子供・・特に女は居なかったんだろ?」
「ええ。
【前巫女】は、その・・ブラコンで、他の男を受け付けず・・」
「別に兄弟姉妹の仲が良いのは、全然ちっともさっぱりまったくコレっぽっちも悪く無いけどさ」
「・・・・・・そうですね」
何故疲れた顔をする?
・・まあいい。
「───『代々続いた女の家系』が、【前巫女】で途絶え、ザラクスさんの血に【巫女】の家系が移ったんだな」
「ザレ様ですね」
「もし今時代に、ザレ以外の『女』が居たとしたら、二人で【巫女】の資格を奪いあう形になったかも・・って話なんだ。
───全部、仮定だけどな」
「か・・仮定、ですか」
『あの時点での少女なら、【巫女】として覚醒していても不思議ではない。
何らかの不確定な要素はあった』
「そ、その不確定要素が───」
「ドスケベんベんベんっ♪」
彩佳とザレがドツキあう。
身体強化魔法に馴れつつある彩佳は、手に作用反作用防壁を作って「 ピン○イントバリアパンチ 」とか言いだすし───
ザレは【人狼】として目覚め、元々の身体能力が上がってきている上に指先だけ狼の爪にしている。
怖えぇよ。
「ま、まあ・・あの二人はアレで仲良いから放っといて───
旅の間、ザレは本当に修業を頑張ってたんだ。
ザレが未熟者だから【巫女】に選ばれない・・なんて事は有り得ない」
「・・はいっ!」
本当に嬉しそうだ。
・・だからこそ、【巫女】の資格の事はなあ。
「【人狼】達に、もう一人の【巫女】候補に心当たりは有る?
・・例えば、ザラクスさんが里を出る前に子が居たとか」
「ザラクス様の、そういった話は・・無いですね」
「他の可能性としては・・。
ザラクスさんみたいに、直系の誰かが出奔していた・・かなあ?
分家の里って線も・・」
「我等が住んでいた里は覇者の生まれ故郷でして・・我等以外に【人狼】が里を作っている事は無いでしょう」
この辺はどうも、『三種族』共通っぽい。
「里は森の結界に囲まれています。
ザラクス様が出奔した時、すぐに里の者全員が気づいたように・・嘗て、誰かが出奔したなら知れ渡っているはずです」
「そうか。
なら違う説、なのかなあ?
・・侮辱に聞こえたら悪いけど、覇者のザレを見る目が無かっただけとか」
【人土】にとって、『三者を超えし者』との関係は飽くまで『先祖崇拝』に近く、【人土】と【巫女】のような絶体的なパスは無い。
【人狼】にとっても、ザレと覇者なら、ザレの方が大事なようだ。
苦笑いしつつ、
「まあ、厳しい方だったのでしょう」
・・との事。
ザレ自身が【人狼】を深く信頼しないといけないという条件だったのかもしれない。
「よければザレ様と【人土の巫女】殿との出会いなど、お聞かせ願いませんか?」
「俺とかあ・・。
最初は男尊女卑の件で、
『傭兵=男の仕事=傭兵である俺』の事を、スゲえ嫌ってたんだよなあ。
その後、色々あって和解したんだ」
「なるほど」
「和解した後は、幹太姉ちゃんの胸を揉んでたよねぇ」
「「「!?」」」
颯太の台詞に、皆が一瞬止まる。
・・止まるよなあ。
ザレは顔を真っ赤にして慌てている。
「そ、そそそ、ソウタ様っ!? 」
「・・そ、そういやオレと初めて会った時もカンタさんの胸を揉んでた・・っつうか、顔を埋めて笑ってたッス」
「ちっ、違───」
「いぃぃやあぁぁぁぁっ!
ザレの、DO・SU・KE・BEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEっ!?」
「御姉・・っ!?」
「あー・・うん。
最近は着替えを覗くのが、減ってきたりはしてるよな・・有る程度」
「御姉様あぁんっ!?」
「「「・・・・・・」」」
魔法使い( 相当 )に嘘は通用しないからなあ・・すまん、ザレ。
グダグダになった場を、【人狼】達が納める。
「ど・・ドスケベとかで【巫女】を見棄てたりはしませんぞ!
【人土】達と同じく!」
おい。




