332『問題解決編が手に入りません。』
「【空の口】から魔法を盗む・・ソレは【空の口】を倒すためなのか?」
たぶん、身体強化魔法は当時から合っただろうけど・・コレは魔力さえ在れば自然に起きる現象みたいなもんだ。
( 嘘を付いたら魔力が歪む、みたいな。)
颯太や源太ちゃんクラスでもないかぎり、身体強化魔法だけで【空の口】を倒せたとは思えない。
『自分は当時、まだチカラを有していなかったので詳しくは知らない。
だが、魔女仲間に後から聞くと───
権力を欲した一人の男が【空の口】に近づき、子供を産ませた・・らしい』
「どこぞの侵略者が、魔女に自分の子を無理矢理孕ませた・・って事ね。
・・っかあ。
やっぱアタシ、この国の男キライだわ」
「男で一括りすンな・・と、言いてェ所だが───まあ、しょうが無ェわな」
『魔王【空の口】』を倒すため・・では無く、本当に自分の手元に魔法使いが欲しかっただけ?
もしソレが本当なら、寧ろその事件が【空の口】を魔王に・・。
「【空の口】の子供が、ヨランギ。
ヨランギの子孫が、王族。
・・だから、強い魔力とヴォイドを使えるって訳ね」
『そう』
【空の口】の子が、ヨランギ。
ヨランギの子孫が、王族。
三者の子孫が、三種族。
魔女の子孫が、魔法使いって訳だ。
魔女の血を引かない者には魔法使いに成れない。
そういう意味ではジキアも、【空の口】の子孫っつう事だな。
「アタシや幹太達って・・異世界転移するまで元々、魔法・魔力と関係無い( 魔女の子孫では無い )人生だったんだけど・・」
俺が、『生まれつきの魔法使いじゃ無い』と知っているのは、
【人土】
ディッポファミリー傭兵団
ザレ
ビタ
リャター夫人
ザレを通じての、女学園の皆
・・そんぐらい。
知らなかった他の面々は、「 あの魔力で・・!? 」と、驚いている。
「貴女はドイツ人ですってね?」
『確かに自分はドイツ人』
「貴女や【空の口】も・・異世界転移をして、魔女になったのかしら?」
『・・・・』
もしコレで「 そうだ 」と言われれば、俺は・・チート組は『魔女』って事だけど───
『───違う』
ほっ、良かった・・・・のかは、一概に言えないけど【空の口】と同一存在という訳じゃなかったようだ。
・・けど、『三者を超えし者』の様子が・・?
「ど・・どうしたっ!?
凄い汗だけど・・」
『───自分は・・魔力を、転移に依ってでも、生まれつき持っていた訳でも無い。
・・才能は有ったらしいが、この世界の子供以下の微々たる物』
かなり辛そうだ。
一旦会議を中断するかと聞くも・・『大丈夫だ』と、呼吸を整えて再び話し始める。
『当時、ドイツで超能力を研究する極秘機関があった。
自分は秘密警察に拐われ、ソコへと収容された』
・・ん?
い、いやいや、ドイツでは1980年代でも魔女だと騒がれて殺された人が居たらしい。
なら・・。
『ソコで様々な人体実験の末・・二千年前のこの世界に、魔女として転移した』
・・・・。
「・・『 アレ 』よね」
「・・『 アレ 』なのか」
『 アレ 』なんだろうなあ。
『【空の口】の出自は知らない。
だけど彼方の世界で、すでに魔女と呼ばれていたらしい』
「魔力持ちだった訳ね」
『【空の口】は、そうゆう
『彼方に居ながら魔力を有する人間』を、時代を問わず魔女として召喚する能力が有る。
日本人のチズコは、メイジ44年から来たと言っていた』
「チズコ・・メイジ───
・・はあ」
彩佳が目頭を押さえる。
とある作品のモデルになった事件は思い出すけどな。
『自分は【空の口】陣営で、疲れを癒していたが・・【空の口】は、彼方の世界も此方の世界も、全ての人間を滅ぼすつもりだった』
「そんなん・・何百年かかるんだよ?
怨みは分かるけど、途方も無さすぎる・・」
『自分も同意件。
疲れて、寝ていたい魔女が集まり、英雄を望む『ヨランギ』を『英雄ヨランギ』にした』
千年の封印を施したって訳ね。
「【人土村】に来たのは・・颯太と源太ちゃんが王族を殺すのを防ぐ為だけなのか?」
『一応は。
後はまあ・・色々と忠告?
後・・この本の続きは?』
「無えよ」
日本に行かなきゃ買え無えよ。
はよ返せ。
「王族と【空の口】の関係ってどうなん?
洗脳されて無いっぽいけど」
『・・はあ、無いのか』
人の本を、懐に仕舞うな。
『【空の口】とヨランギの関係は・・横から見ても不思議な物。
愛する親子同士にも、敵同士にも、ソレ以外にも見えた』
「・・・・・・。
・・ひょっとしたら戦うしか、大好きな人を救う手段が無かったのかなぁ、幹太姉ちゃん?」
「・・かもなあ」
颯太と敵同士になったら・・考えるだけでキッツいなあ。
颯太が・・嗚咽をもらし出したので抱きしめる。




