329『せめてラッキースケベな目に逢ってなきゃズルい・・とかなんとか訳の分からない事を言っています。』
『ヴォイド』騒ぎの次の日。
戦った人、その補佐をした人など、不休で働いた人達は無理にでも休ませた。
そして更にその次の日。
「ふぁ~。
御早う、颯太」
「御早う、幹太姉ちゃん」
『御早う、二人とも』
秋原家、俺の部屋。
ヴォイド使いの王族を、生きた『箱』にした『三者を超えし者』が・・何故か俺の部屋で、マンガを読んでいた。
「・・何で、俺の部屋に居んの?
何で、俺の漫画を読んでんの?
何してんの、『三者を超えし者』さん?」
『『箱』も、ソコに居る』
「おわっ!?」
俺の部屋の入口辺りに、例の『箱』。
もうホント肉で出来た『箱』で、変な位置に『目』が付いてたり。
勘弁してくれ。
「だからコレ、キショイんだって!?」
『慣れたら可愛い。
ソレより・・起きたなら、支度して』
「え・・?
何の用だ?」
『ソレは、この村の代表者と【巫女】達の前で語る』
「はいはい、分かりましたよ。
───って・・この『箱』、男だよな?
コレの前じゃ着替えらんないよ・・」
今着ている寝間着はパジャマ。
インナーは、家で寝る時は着ない。
着ないというか・・活動時みたいなガッチリしたのじゃない、ゆったりしたのを着ける。
颯太はベビードールやネグリジェなど( 子供用とはいえ )女らしい寝間着を好む。
好きな人が男女ともに居る俺は、男と女をフラフラしてる感じだけど・・颯太は理太郎君、男一人だけ好きなのでほぼほぼ女として生きているっぽいのかなあ?
( ビッチじゃ無いですよ? )
まあ、ソレはともかく。
『分かった。
『箱』と共に、居間で待ってる』
『三者を超えし者』が、『箱』を抱えて部屋を出ていく。
( 俺の漫画ごと。)
よく見ると『三者を超えし者』の手の平が、『箱』と同化している。
扉をくぐる時に立方体から変形した『箱』が、苦しいのか・・ドコかに有るらしきクチから『呻き声』を出す。
・・ホントきしょいなあ。
二人( ? )が部屋を出たのを確認してから着替え始める。
颯太は最近ずっと俺の部屋で寝ているので、颯太の着替えもコッチ。
「あーあ。
早く、僕もブラを着けたいなあ」
「母さんも婆ちゃんも大っきかったし、颯太もすぐ大っきくなるさ。
( 母さん達よか、俺の方がデカイ気がするけど・・ )」
俺はパジャマを、颯太はベビードールを脱ぎつつ、今日着る服を選ぶ。
活動時のアウターは、コチラの服を着ているけど、インナーは上下とも日本製の女性用下着を身に着けている。
異世界製・男物とかだと、この胸を支えんのは大変だし。
颯太も、インナーは日本製。
俺はインナーが、ビスチェ( その・・ね? お腹がまだ・・ね? )とペチコート。
アウターが、ガウンとマント。
腰まで伸ばした髪はストレートに。
颯太はインナーが、キャミソールとショーツ。
アウターは、ややゴシックドレスっぽいワンピース。
脇ほどに伸ばした髪をアップして御団子に。
「うん、今日も可愛いぞ颯太♡」
「幹太姉ちゃんこそ綺麗だねぇ♡」
暫く颯太と誉めあってから、一階に下りて居間へ。
『三者を超えし者』はテーブルでコーヒーを飲んでいた。
居間の隅に例の『箱』。
朝食を準備してくれている【人土】のみんなは、目を反らしているけど・・俺は目が合ってしまった。
・・食欲が失せるなあ。
気を取り直し、皆と挨拶をかわして着席。
「じぃーーー・・」
「な・・何でしょうか、【巫女】様?」
「いやあ・・前に彩佳が言ってた【真の巫女】云々って、どうなのかなあ・・と」
『何の話?』
魔力は俺の方が多いけど・・洗脳を解くチカラは、『三者を超えし者』の方が圧倒的に強い。
真の【人土】である真祖、『三者を超えし者』は、【人土】達が真に崇める【真の巫女】ではないか?
・・というのが、彩佳の危惧した説だったんだけど。
( 当時は『賢者』とは思わず、俺より凄い【人土】が居る───という認識だったが。)
「あー・・。
我等の偉大な先祖として、敬意は感じますが───山柄総代表が言った通り、我等の【巫女】は幹太様ですよ」
「賢者様は我等の上位互換存在とでも言いましょうか・・」
『三者を超えし者』が「 フム 」と一息つき、
『もし、貴女達姉妹が居なければ・・自分が【巫女】に成っていたかもしれない』
「んぅ?
どうゆう事?」
「自分が設定した【巫女】の条件は、『最強の【人土】』。
貴女達が居なければ、自分が最強として、【巫女】に選ばれていたかも。
・・という話」
「かも、って・・自分が決めた事だろ?」
「【巫女】に関連する魔法は二千年にも渡る、世界規模の魔法。
完成には、自分一人の規模を遥かに超える」
ドコか遠い目で、やや他人事のように話す『三者を超えし者』。
まあ彼女より魔力の多い俺でも、途方もなさ過ぎてどうこう出来るレベルじゃあ無いけどさ。
『言わばこの魔法は、この世界に住む全ての人間が使っている魔法』
「この世界全て、って事は・・」
『【空の口】の魔法、ヨランギの魔法、『三者』の魔法・・貴女の魔法』
「ソレって・・」
『仮にこの『世界魔法』とでも言うべき魔法を完全に壊せば、【空の口】の洗脳魔法も破壊されるが、【巫女】という概念も破壊される』
うーん・・。
例えるならインターネットを使ったシステム、だろうか?
『世界魔法』を破壊すれば、【空の口】の魔法も『三者を超えし者』の魔法も全て、使えなくなる・・。
身体強化魔法や炎魔法はインターネットに依存しない、『会話』や『手紙』。
『実際には【空の口】だろうと、世界魔法は壊せないが。
・・食べ終わったか?
では、行こう』
「ん」
「はーい」
色々考察しつつ、朝飯を終了。
秋原家の管理・維持をしてくれている【人土】の方々を留守番に、俺達の秘書みたいな役割の【人土】の方々と共に、出ぱ───
「幹太ぁー。
起きて・・る・・みたいね?」
俺を起こしに来た彩佳が、真っ先に『三者を超えし者』と目があい・・ニコニコしだす。
・・うわぁ、昔懐かし古き良きラブコメみたい。
「ハイ。
昨日帰ってきて直ぐにグッスリ寝て起きて朝食を食べて出発しております。
ソレ以外の事は、ちっともさっぱりこれっぽっちもシテイマセン」
颯太と【人土】達は苦笑い。
当の『三者を超えし者』は───
『英雄ヨランギも、よく修羅場っていた。
この時代でまで、自分は巻き込まれたく無い』
と、そそくさ逃げ出した。
ずるい。




