327『おま言う。part2』
「あっ、そうだ・・イーストさん」
「ん?
なんだ、カンタ?」
「今、【人土の巫女】である俺と・・【人花の巫女】であるビタと・・」
チラッとザレを見る。
ザレは一瞬、ビクッとするも・・意を決したように頷く。
「覚醒した『かも』知れない【人狼の巫女】であるザレが居ます」
「・・っ!」
俺のその台詞に、イーストさんがハッとした表情でクチを開───こうとして、【人狼】達に遮られる。
「カンタ殿、今の台詞は聞き捨て成らぬぞ!?」
「ザレ様は我等の【巫女】!
コレは動かぬ事実っ!!」
「覚醒した『かも』、とは、貴女といえど無礼である!」
うっ・・【人狼】達が「「「そうだそうだ」」」と、騒ぎ始めた。
【人土】達も俺に対する騒ぎに、淡く殺気立ち・・どうしようかとたじろいでいるとザレが【人狼】達に注意する。
「ワタクシも貴方達も、御姉様に救われているのですよっ!?」
「も、申し訳ありませんザレ様!」
途端にシュンとする【人狼】達。
「この村で、御姉様に救われていない人を探す方が大変ですわ!」
「いや~、巻き込まれただけって人も多いんじゃない?」
「貴方は黙ってて、アヤカ!」
シュンとしない彩佳。
彩佳がチラッとディッポ団長の方を見て・・ディッポ団長が顔を背ける。
・・なんなん?
そのアイコンタクト?
「と、とにかく・・。
ワタクシが未熟者である事に変わりは無いのですし、御姉様の話を聞きなさい」
「分かりました」
「じゃあついでに【人土】の皆さんも。
『三種族』の仲間同士なんだから、簡単に殺気立っちゃダメですよ?」
「申し訳ありません、【巫女】様」
【人狼】と【人土】を、御互いに謝罪させる。
うんうん、丸く収まった。
【人花】達は・・我関せず、仕事は終わったとばかりにニコニコとゴハンを食べている。
・・ある意味、アレが目指すべき平和の体現なのかもしれないなあ。
元の話の続き。
「本当は合コンの後、『ザレが【巫女】の資格を持つ者でしたー』・・って、御披露目と洗脳を解く場を作るつもりだったんですよね」
「おおっ」
未だ【変換機】の必要なイーストさん他、戦士達がどよめく。
・・けど、【人狼】達は意味深な単語に引っ掛かる。
「【巫女】の・・『資格』?」
「ソレは───っと。
颯太と源太ちゃんが帰ってきたな。
二人の話を聞いてからにしよう」
またも話が中断されるけど、今回の黒幕であろう敵を対処した二人の帰還だからな。
皆に異論は無かった。
「ただいまっ!」
「颯太、源太ちゃんさん!」
「ゲンタ殿・・は、まあ無事に決まっているか」
みな、銘銘が颯太や源太ちゃんに声掛けをする。
俺も掛けようとして───
「颯太、源太ちゃん、お帰───んあ?」
「何、幹太?
なんか見つけたの?」
「地面になんか居る?」
彩佳は・・というか皆、気づいて無いっぽいな。
俺の言葉に、土中を進む『村破級』の魔物である【ワーム】や【ノヅチ】を連想した皆が一斉に反応した・・けど。
・・んん?
「わわっ!?
みんな、違うよ!」
「ソウタ殿?」
「【ワーム】だとかにしちゃ、悪意が無いしなあ?
・・えいっ!」
なんか居る、その場所を土ごと魔法で持ち上げる。
『わっ!?
わわっ!?
なんだコレはっ!?』
「「「お・・女の声?」」」
なんかどっかで聞いた事、有るような───
『貴女か、アキハラカンタ。
相変わらず理を超えた出鱈目なチカラだ』
「さ、『三者を超えし者』・・『賢者』っ!?」
「「「・・は?」」」
皆の目が点になる。
・・なるよなあ。
土の中から現れたのは・・最初の魔法使いたる『英雄ヨランギ』に仕えし三人の乙女『三者』が一人、『賢者』。
【人土】の先祖にして、『魔王の粘土』とかいう生物と合成してしまった結果、『三者』の誰よりも強い者・・『三者を超えし者』となった人だ。
歴史的重用人物が土の中から生えてきました。
『日本出身の魔女から聞いた。
つまらぬ物ですが。
・・何故日本人は、つまらない物を渡す?』
「に、日本人の謙遜の美とでも言おうか・・って、なんでお前がココに───んがっ!?」
「幹太っ!?」
『三者を超えし者』から貰った物を受け取った瞬間、腰をヤりそうになった。
慌てて、隣に居た彩佳が支えてくれる。
あの細腕で普通に渡してきたから、普通に受け取ったけど・・何だコレっ!?
立方体の『箱』で、70kgぐらいの大人一人分は有るぞ───ん?
「そ、颯太?
源太ちゃん?
・・『ヴォイド』の使い手は、どうなった?」
「えーっとねぇ♡」
颯太がクスクス笑う。
颯太はあんまイタズラとか、しないからなあ。
微笑みとかならともかく、こうゆう系の表情を俺に向けるのは珍しい。
超可愛い。
「いや、ウットリしてる場合じゃ無くて・・幹太、まさか」
『ヴォイド使いを『箱』にした』
「何やってんのォーーーーっ!?」
キショイもん持たせんなっ!?
「ね、ネウ○の赤い箱・・?」
「い、いえ・・微かに魔力が有るから、B○ACK BRAINの未来人よね・・」
い、生きてんのか・・この『箱』。
展開がブッ飛び過ぎてて、頭がついていかないよ・・。
『ヴォイドは使え無い。
安心しろ』
「あ、安心出来る要素が一つも無いよ!?
ドレから突っ込んだら良いんだ?」
「か、カンタ先生がボケからツッコミに回っているっ!?」
今、言ったの誰?
俺はボケじゃ無い。
『そこの少女。
自分はボケでは無い』
充分ボケだよ。
自分の事ぐらい分かれ。




