320『相手が大貴族であろうと!退かぬ!媚びぬ!省みぬ!』
「【アジ・タハーカ】戦は、俺の魔法をパクられないよう魔法を使えなかったけど・・」
「試しに長距離から最大出力で撃ってみたらどうだい?」
「あー・・俺の魔法が、確実に通用するか分かんないんですよね」
山柄さん達も交え、作戦会議。
敵の行動パターンを見るに───
「俺達最大のアドバンテージは
『俺達の位置を把握されていない』
『敵の位置を先に把握した事を、把握されていない』って事です」
「一回だけ、最大限の不意打ちチャンスが有る訳だね」
もし、不意打ちに失敗したら。
俺達の位置がばれ、更に本命は自分だとバレているのがバレて・・形振り構わずコッチに『ヴォイド』を向けてくるだろう。
・・ザリー以上の脅威と成って。
「必中・気合・熱血、掛けまくらなきゃですよ」
「出来れば努力・幸運も掛けて、得る物タップリ得たいわよね」
分かる人は「 魂・援護攻撃もですね 」など言っているけど、分かんない人は・・まあ、『準備に準備を重ねて』という意味に捉えたようだ。
この辺の地図を出してもらい、王族の居る場所を指し示す。
超望遠監視カメラの映像では・・陰に居るのか、見えないな。
ビタが尋ねてくる。
「植物で探りますか?」
「・・いや。
奴の周囲植物の、魔力の変化に今は気づかれたくない」
「分かったのです」
「作戦決行時は頼むぞ、ビタ」
「お任せ有れなのです!」
ワザに自分の『ヴォイド』をザリーに託して、自らは遠距離からのサポートに徹しているんだ。
常に自ら周囲への魔力変化は、警戒してそう。
「ガロスの言だと、王族って超ビビりっぽいんですよね」
「ガロス?
男っぽい名前だな?」
何かを察した父さんが、笑顔のまま剣呑な気配を纏う。
今はそんなんちゃう。
( ・・颯太。
その両手でクチを押さえキョロキョロする仕草はスゲェ可愛いんだけど・・皆が察しちゃったよ )
「ま、まあ・・支配者たる者───
ヤる時はヤッて、ヤらない時はヤらない物なんだからビビりで当然だろうがね」
「高貴なる者の責任、とか言う奴ね」
「なるほど。
この国の戦争は、負け寸前だったのが・・突然、奇跡の逆点を果たしたそうなんですよ」
「その秘密が『ヴォイド』で・・今、ワタシ等が正に同じ目に会っていると」
「ええ」
その秘密主義から、自国の人間ですら誰も『ヴォイド』の正体を知らない訳だけど、使う時は勝利を確信した時な訳だ。
「ディッポ団長さん達に掛けた魔法は『ヴォイド』対策になってんのかしら?」
「防爆衣魔法のような、ディフェンス魔法じゃなく・・カウンター魔法だからなあ。
慣れないと、相当邪魔くさいみたいだ」
「繊細な技術で戦う人ほど大変なのね」
まるで俺の戦い方が繊細じゃないみたいに聞こえるけど、たぶん気のせい。
「じゃあ敵の内周囲に魔法使い以外の戦士を、外周囲に『ヴォイド』で無効化出来ない狙撃班を配置。
アンタの長距離狙撃魔法に合わせて、一斉攻撃ってトコかしら」
「まあそんな感じかね。
【人土】に、SATや自衛隊員がいたらねえ」
「うーん・・」
「なに?
気に入らないの?」
「つうか、さ。
王族は本来( 現存する人間では )、この世界最強の『魔法使い』でもある」
「・・・・」
ジキアとザレが、ガロスと決闘した時・・二人は油断して防御魔法を解いた。
けど、ガロスは油断なく常時展開していた。
王族程の魔力量なら・・油断とか関係なく常時展開していそうだ。
通常のライフル弾・・例えば竜巻型の防御壁なら不意打ちでも当たらないかもしれない。
「『対、ヴォイド』と『対、魔法』、両方に対処する手段が無いと・・な」
「そんな魔法・・作れるのかね?」
「え?
あ・・うーん・・?」
皆が、俺の反応に諦め掛けた───その時。
「───で?
どんな魔法なの?」
「うぇっ!?」
「もう・・出来てるんでしょ?
少なくともアンタの頭の中では」
・・う、ううぅ。




