316『ディッポ団長・・やらないか?』
「ディッポ、いっそアレに体当たりしてくれないか?」
「オメェがヤれっ!
滅茶苦茶こえェンだぞっ!?」
「あたし達も、この周りを小石がグルグル回る奴・・メチャ怖いわよねー?」
「ねー?」
「皆おンなじだ、小娘どもっ!」
「「「きゃーっ」」」
「・・・・。
カンタ達が帰ってきただけで、戦場が一気に遊び場だな・・」
◆◆◆
コチラの基本方針は決まった。
ザレ達が、ザリーから情報を得る。
その為に、俺達はフォローにまわる。
後は周囲を固める。
「ジキアやリラキアさん───魔力パスが繋がっている人は何となく分かるけど・・他の皆は避難し終えてんのかなあ?」
「えぇーっと・・全外部監視カメラに人影なし。
各避難地点の点呼に異常なし。
───【人土村】内にて、異常在りませんね」
「そうですか、良かった。
コレで多少の無茶は利く」
『ヴォイド』が一つとは限らないからな・・。
「村全体に大小自動追尾魔法っ!
弾数超マシマシ、威力極限抑えめ!!」
「おお・・っ!?」
「カメラからの映像はどうですか?
見辛いとは思いますけど」
「確かに見辛くは在りますが・・『ヴォイド』と思われる空間は確認出来ません」
ザリーは、『ヴォイド』を操れるようになった・・けど、完璧じゃないとは思う。
複数同時操作とか。
・・ただ。
「王族が・・なあ」
「ザリーの『協力者』ですね」
【人土村】に侵入してこそ無いみたいだけど・・いつ来るか分からんし。
「私達の植物は村中は勿論、【人土村】周囲数100mに植えています。
不審者が近づけば分かるでしょう」
「・・ちなみに、牢屋付近は?」
「あ・・アハハァー♡」
囚人が怖かったんだな・・。
魔物や敵には容赦無い【人花】も、囚人という訳分からない存在にビビったか。
( 【人土】と同じく犯罪者という概念が無い種族が、同族だけで閉じた集落に二千年近く過ごしてきた訳だし )
「我等が【人狼の巫女】よ・・」
【人狼】達は、かなり殺気立っているな。
ザレの身を案じているのか。
本来は今すぐ飛び出し、駆けつけたいんだろうけど・・。
「命の使いドコロを間違えちゃ駄目ですよ」
「うむ。
【空の口】の手の者をにこの牙を。
【巫女】の敵にこの爪を・・!」
目のギラギラが凄い。
『三種族』にとって、長より【巫女】なんだなあ。
「【人狼の巫女】、傭兵団、牢屋の入口に到着っ!」
「皆の安全を最優先に。
俺の責任で、囚人の命は在りと在らゆる理由で無視して下さい」
「はっ・・はひ、了解ですっ!」
まあ、囚人どもの本来の使い道とて・・【人茸】化なんだけどね♡♡
◆◆◆
『ぉらあっ!?
出せよ、糞どもっ・・!』
『なんで女が出歩いていて、オレ達が牢屋に入んなきゃなんねえんだっ!?』
「オメェ等がゴミだからダろ」
「確かコイツは・・。
【人土村】に入る時は、飢えてた事もあってペコペコとしてたクセに───腹が満たされた途端、配給係りの女に『飯を運ぶのが遅い』って殴りかかったんですよね」
「その女性は無事だったのか?」
「このコですよ。
女学園の戦闘最上位組のコだったんで。
リャター学園長の剣術とソウタ先生のアキハラ甲冑柔術を会得してます」
「いやあ、ついウッカリ全身の関節を外しちゃいました♡」
「・・そーかい」
〔ソチラの角を曲がって下さい〕
「あイよ。
・・しかし牢屋がバラバラ過ぎンだろ。
迷路でも作ろうとしてたのかァ?」
〔正直彩佳さんが帰ってくるまでの・・良くて倉庫、ほぼゴミ溜め扱いでしたから〕
「無計画って訳かい・・」
〔次は右・・ソコは真っ直ぐ進んで最後は左───その突き当たり、最奥に【人土村】最初の囚人、ザリーが居ます〕
「おう・・見えてきたゼ。
・・ザレ嬢チャン、元大将の御出座しだ」
「・・はい」
◆◆◆
「ザレ・・」
〔───は・御姉・・ワ・クシ・大丈夫───〕
「ん?
無線機、壊れたんですか?」
「いえ・・原子操作魔法により、劣化部分はほぼ新品同様になっていますからソレは無いかと。
おそらく電波障害ですね」
そういや日本で、『異世界物質』と魔力のぶつかり合いが電波障害を生み出していた事もあったっけ。
今まで起きなかったって事は・・やはり元凶はザリーであり、元凶に近づいたからか。
「無線機魔法に切り替えま───」
『───愚か愚か愚愚愚愚かかしいぃぃ愚者どもがああぁぁぁっっ!』
「・・っ!?」
『我れれれコソは【空の口ち】を退治せせし人ろろ狼の長なあああるぞォォっ!?』
あ、コレ・・やばいヤツだ。




