308『「俺はかなり思慮深いしなあ・・?」「そうね」』
「なっ・・何だありゃ?」
花火の一部が不自然に欠けた、『何も無い場所』。
『無い』のに、異様なまでの『存在感』だ。
「コッチの世界に来て───
是か非かで迷ったら『直感』だけで生きてる奴の感を信じるって事を覚えたけど・・正解だったみたいね」
そんな奴が居るのか。
誰の直感か知らないけど・・感だけってのは、良くないなあ。
ディッポ団長の直感とかスゴい頼りになるけど、飽くまで、長い傭兵・行商人生経験に裏打ちされた上での直感なんだぞ?
「幹太。
今、不安?」
「えっ?
まあ不安かな」
「監視室、幹太の敵よ!」
〔り・・了解っ!〕
イキナリ、彩佳が無線機にて連絡。
響き渡るサイレン。
テキパキと避難する村民。
この辺は流石、突然の敵襲慣れしている。
しかし・・彩佳の決断力が凄いけど、なんなん?
どうゆう経緯で『アレ』が『敵』になったん?
まあイイ。
今は怪しい『アレ』を、敵と認識して動こう。
「小半力・指向性面制圧魔法っ!」
炎魔法の燃料や、土魔法の材料など、戦場じゃ無いんで用意していない。
ので、全力は出せず間に合わせの小石を打ち出す。
威力はともかく・・範囲はこの広場をカバーするのが精一杯。
「あそこ・・また欠けてるっ!?」
「小半力・大小自動追尾魔法っ!
小弾は周囲を、大弾は『アレ』をっ!!」
ソレで、やっと目に捉えられたが・・大弾が『アレ』に近づいた途端に、大弾がチカラ尽きたかの如く落下してゆく。
「弾丸その物が消えているんじゃ無くて・・弾丸に込めた、俺の魔力が消えている?」
「魔力が消える・・ソレって・・!」
「「日本の『異世界物質』っ!?」」
『気』
『世界のナニカ』
『異世界物質』───
『ソレ』に、ちゃんとした正式名称は無い。
『魔力』と対になっており『魔力』と触れるとお互いに消滅する、という事ぐらいしか分からないからだ。
俺達が、異世界から日本へ帰ってきた時・・日本に充満していた物質である。
共に日本へ転移した、ザレ達『魔法使いではない人』にはソコまで影響は無い。
けど・・魔法使いには効果覿面であり、源太ちゃんは全身ヒビ割れるという謎の現象に襲われた。
「あの辺に、異世界への穴が開いて『異世界物質』が漏れ出てきている・・って訳じゃ無さそうだな」
「そうね・・。
『何も無い場所』が移動しているわ」
見た目は球体が、俺の大小自動追尾魔法の中を流れているように見える。
「御姉チャンっ!」
「ディッポ団長っ!」
「ンだあ、ありゃ?
穴か?」
「あの空間だけ、俺の魔法が効いて無いんです」
ディッポ団長が『アレ』を睨む。
頼りになる横顔。
コレだからディッポ団長の直感は信頼に足るんだぞ。
「あそこだけ『何も無ェ』なァ・・。
ガロスが言ってた『ヴォイド』ってなア・・」
「・・『何も無い場所』って意味よね」
『ヴォイド』、か。
つまり───
「『ヴォイド』を使える王族が・・攻めてきた?」
「限定は出来無ェが・・面倒クセェ奴が攻めてきたって見るべきだなァ・・。
御姉チャンの魔法は全く効かねェのか?」
「本気の一撃はまだ試してませんけど・・少なくともこの威力だと」
日本では魔力が弱まっても、魔法が無効化されるなんて事は無かった。
思ったより、ヤバいかも知れないな。
「この小石の嵐だけ意地して、御姉チャンは武器ンとこまで行きな!
あれは俺達が引き受けるからよっ!」
「分かりましたっ!」




