307『何故か『戦士の為来り』後、極希にやたら目を潤ませる者が出てきます。』
「幹太、有難うのう」
「何?
源太ちゃん?」
やや顔を赤らめた源太ちゃんが調理場に来る。
源太ちゃんも結構モテモテだったからなあ・・何やらナンパをかわしたい人が、どんどん調理場に集まってきている気がする。
( ちなみに合コンスタッフへのナンパは禁止。)
「【巫女】の事で、最近の【人狼】達は沈んでおった。
・・じゃが、みな楽しんでおるようじゃ」
「そう・・ソレなら良かった」
さっき、【人狼】の戦闘力NO.1・NO.2であるプッチとポチが颯太に腹を見せて寝っ転がっていた。
一瞬・・颯太に裸で迫っているのかと、全力・大小自動追尾魔法をブチ込みそうになったが───
強さを信奉する彼等の忠誠心を示す所作らしい。
初めて会った時、颯太に二人がかりで負けてたからなあ。
おそらく・・は、囲炉裏じゃない。
戸惑う颯太に、腹を踏ませて恍惚の表情を浮かべていたけど・・たぶん。
アレを楽しんでいると言うなら・・楽しんでいる、と、しておこう。
「『あの事』は?」
「まだ、皆には言うてはおらん。
ザレちゃんの決意を優先するでな」
「そう・・有難う」
合コンの方は始まって数時間。
来人はいろんな職業の人が居るので、入れ替わり立ち替わり、悲喜交々って感じか。
上手く関係を築けた人。
上手く築けなかった人。
飯だけ食うつもりで来て、何だかんだで善い人を見つけた人。
男尊女卑の世で、こういった事柄に馴れない人達も───
ディッポファミリー傭兵団の奥様方、『三種族』の女性達・・そして自ら立ち直った人達のサポートのお陰で、楽しめているようだ。
◆◆◆
「幹太、大丈夫?」
「そうだな・・まだ平気だけど明日の事も有るし、ちょい休憩するか」
疲れたとか魔力切れといった程じゃないけど・・無理する必要も無いしな。
彩佳が様子を見にきたタイミングで休憩する事に。
「例のイベント以降にもやる予定なんでしょ?」
「ああ。
ザレと一緒にリャター商会へ行っている女学園の生徒達が、無線機で聞きつけてスゲえ楽しみにしているから」
「元々は、彼女達の為に計画した合コンだものね」
無論、この村に居る全ての女性には幸福になって欲しい。
・・だけど、俺と颯太がこの世界に来て特に世話になった男尊女卑の被害者である彼女達の為でもある。
「良い男が売り切れていたら・・恨まれるわよぅ?」
「うっ・・。
あ、明日のイベントを円滑に進めるには必要だった───・・って、理解してくれる筈。
・・たぶん」
適当な料理を器に入れ、合コン会場をで食うかと調理場を出て・・ん?
「彩佳、あそこに監視の目は有るのか?」
「ビルの上層部?
クワガタやアローバードの飛べる高度の上だし、監視カメラに任せてあるけど・・魔物?」
「いや・・何か微かな違和感が───
気のせいか?」
「問い合わせてみるわね」
彩佳が、携帯無線機で監視室に連絡。
「監視カメラには何も写っては無いらしいわ」
「やっぱ気のせいか。
悪かったな、彩佳・・さあココで飯を食お───」
「・・幹太、『花火』を打ち上げて」
「んあ?」
「良いからっ!
一発の爆発魔法を、威力より遠くまで爆風が届くイメージで!」
まあ、出来るけど。
・・ってか、合コンが始まる時にヤれば良かったな。
「ド派手にねっ!」
「花火大会魔法っ!」
皆が夜空を見上げる。
炎色反応は上手く想像しきれなかったんで、赤か白色だけだけど・・。
『キレイ・・』
『まあ』
『君の方が美しいよ』
日本人の感覚だと何で今頃? って感じだけど・・たぶんこの世界で初めて花火を見た人達は『盛り上げの為の演出』として受け入れたっぽい。
「うん、比較的上手く───」
「幹太っ!
アソコ、花火が欠けてる!」
「え?」
彩佳が指刺す先。
夜空を彩る花火の中・・まるで削りとられたかの如く、『何も無い場所』が在った。
囲炉裏・・花火・・欠ける・・・。
他意は有りませんが、気づきたく無かった・・。




