305『数回の殴り合いの果てに、群のリーダーが決まりました。』
「幹太っ、颯太ぁっ!」
「「源太ちゃんっ!」」
熱い抱擁。
ガン泣き。
相変わらず、皆に引かれる。
何故に?
「源太ちゃん・・。
色々言いたい事は有るけど・・取敢ず、魔物はどうだった?」
「うむ。
残りは鈍重そうなんばかりでな、暫くは安寧じゃろう」
俺達が【人土村】に帰ってきて、ほぼ一日。
やっと源太ちゃんと【人狼】達が帰ってきた。
「・・そう」
チラッと、【人狼】達の様子を見る。
『三種族』イチの鼻を持つ彼等だ。
かなり遠くから、俺の料理に気づいていたらしい。
源太ちゃんとの魔力パスの距離から計算し、出来たてを出せるようにしていた。
【人土村】を旅立つ前、【人狼】も俺の料理を食っていたし、魔力付与料理の美味さは知っているハズだしな。
ヨダレを垂らしながら、源太ちゃんの指示を待つ。
・・泣いている人まで居る。
「儂は報告が有るで、先に飯を食うとええ。
終わったら【人土村】内の警備を頼む」
「「「はいっ!」」」
源太ちゃんに最大限の感謝を示しつつ、料理へ駆けより食事開始。
至る所から遠吠えが始まった。
・・・・。
・・言っちゃ悪いが、犬と、犬を躾るドッグトレーナーみたいだなあ。
◆◆◆
俺達と源太ちゃんは無線機の有る場所に移動。
〔嗅覚ぐらいですが・・【狼化】を成功させましたわ、ゲンタ様〕
「そ、そうかね・・!」
無線機の相手はザレ。
ザレは今、リャター商会へと行く車に乗っている。
思ったより源太ちゃん達の帰りが遅かったので、ザレには先に帰宅して貰った。
「 せめて儀式を終えるまでは残る 」
とは言ってくれたが───
源太ちゃんや【人狼】達が何を言おうと、ザレの『親』はリャター夫人で、『姉妹』は女学園のみんななんだ。
たとえコレで不具合が起ころうと後悔なく、まず『家族』に会って欲しい。
〔未だ未熟者の身ですが───
【人土村】に戻ったなら、【人狼】達の前に立ちたいと思います〕
一呼吸おいて、チカラ強く語るザレ。
〔【人狼の巫女】として・・!〕
「うん、うん・・。
その時は精一杯、儂も補佐するでな」
愛おしそうに、ザレの決意を聞く源太ちゃん。
「源太ちゃん。
俺に、【人土】としての本能が無いように・・ザレにも【人狼】としての本能が無いらしいから」
「うむ。
【人狼の巫女】で在っても、ザレちゃんが人間として生きてゆく事も望むなら、ソレを全力で護ろうぞ」
さて・・ザレは向こうで一泊するから、【人土村】に来るのは明日の夕方辺りか。




