298『食の恨みは忘れません。』
「───って訳で、コッチの皆は【人土村】の物流は最低限回復したから『帰るのもアリ』って話なんですけど」
〔確かにね。
幹太さんの御陰で【人土村】は大分ヤリクリ出来るように成ってきたよ〕
【人土】総代表の山柄さんと無線機で、今後の進退を相談する。
「魔物の素材加工技術が上がったとか?」
〔ああ。
コッチの世界の職人の技術と、日本の技術と───ふふっ〕
「な・・なんですか?」
堪えきれず、吹きだした山柄さん。
イタズラを企んでいる子供みたいな雰囲気だな・・。
〔まあ、素材加工技術も『そう』だけど『他』にも【人土村】・・って言うか【人土】も色々有るよ」
秋原家の【人土】達も、俺の魔力付与料理でかなりの魔力量になった。
ソレより凄いのか・・?
〔だから現状で幹太さんに、無理して貰わなきゃ成らない要件は無いよ。
みんな会いたがってるしね〕
「俺もですよ」
〔仁一郎さんはアンタら姉妹に、変な虫が付いて無いか心配しきりだし〕
ガロスどうしよう。
「そ・・そうですか。
リャター夫人の方は?」
〔彼女の商会も独自のツテで、人員と資材を集めてるしね。
相互協力は順調だよ〕
「良かった。
ザレも会いたがってますし」
〔ザレさん・・ね。
一応、【人狼の巫女】だったとは聞いたけど。
・・覚醒しつつ有るって?〕
「そうですよ。
・・何か問題が?」
山柄さんの声に、ちょい陰りが出る。
〔【人狼】達がね・・『三種族』中、唯一【巫女】が居ない事で───〕
「まさか・・反乱、とか!?」
〔そうじゃあ無い。
ただね、『三種族』最下位みたいな劣等感を感じててね・・。
魔物の襲来時、ムチャをしたがるんだよ〕
「あー・・」
コッチの【人土】達が一時、我等が『三種族』no.1だ!
みたいな雰囲気になっていたけど、ソレの逆か。
〔【人狼】の限定リーダーの源太さんは、かなり心苦しそうだよ〕
「源太ちゃんが・・」
〔ザレさんの気持ちも分かるから無理強いは出来無い、っつってたけどね〕
源太ちゃんが苦しんでいるなんて心が張り裂けそうだけど───
ザレだって、ずっと親に捨てられたと思いこみ、親を恨んでいたのに・・やっと親が見つかったと思ったら『半分人間じゃ無かった』だからなあ。
( しかも『あんな』祖父だし。)
「分かりました。
俺もフォローします」
ザレは今まで世話になった仲間で、【三種族の巫女】同士でも有るしな。
〔【人花】は・・まあ相変わらずだね。
強いて言うなら幹太さんの話をヨダレを垂らしつつ話す程に、帰りを待ち望んでいるよ〕
ソレ、俺を待ってんじゃなくて魔力付与料理を待ってんだよな。
まあ良いけど。
以前ビタが無線機で、姉ピヒタと話すのを聞いた事があるけど・・俺が【巫女化】修行で魔力付与料理の練習を始めた頃から、ピヒタがちょい怖いんだよ。
「まあ、色々有りますし一度ソッチに帰ります」
〔待ってるよ〕




