294『大根のクセに、殺気( 魔力 )だけは本物だからタチが悪いです。』
なんだろう・・。
一番最初に頭に浮かんだのは『大名行列』とか『お裁き』だった。
ゆっくりと玄関扉を閉める。
・・えーっと・・。
「何ッスか?
外が騒がしいみたいッスけど・・」
「・・何ッスか、って・・何だろう??」
ジキアを呼び、交替して扉を開けさせる。
「御早う御座い───・・なんだ」
「・・・・」
ジキアが何とも言えない表情で、扉を閉める。
ジキアがザレを呼び、交替して扉を開けさせる。
「御はよ───・・なんだ」
「・・・・」
ザレが何とも言えない表情で、扉を閉める。
ザレが彩佳を呼び、交替して扉を開けさせる。
「───ん・・ぉわうっ!?
お、御早う御座います、アヤカ様!」
「・・・・」
彩佳が何とも言えない表情で、扉を閉める。
彩佳が俺を呼び、朝食を上から出させようとする。
酷ないっ!?
「───『あれ』、ガロス関係よねぇ?」
「た・・たぶん」
「どうすんの?」
「えーっと・・」
どうすんの・・って言われてもなあ。
ココの人達は救われた人達で───有る意味、俺達の手から離れた人達だ。
俺達が出来る事は無
「とっとと行け」
ディッポ団長にみんな蹴飛ばされる。
酷ないっ!?
・・はあ。
仕方ない、俺を先頭に家の外に出ると、
「おっ・・、
御早う御座います、カンタ様!」
「お・・御早う御座いまーす・・」
秋原家の庭におよそ30人ぐらいが居た。
秋原家から彼等の土地に続くスロープには行列が列び・・見えない8m下からは、すげぇザワザワ聞こえる。
・・やな予感しかしない。
「領主夫人と為られる御方に、数々の無礼・・失礼しました」
「あ・・あの」
「領主夫人と為られる御方に、数々の無礼・・失礼しました」
「ち・・違」
「領主夫人と為られる御方に、数々の無礼・・失礼しました」
「・・」
代わる代わる人が俺達の前に来ては平伏し、謝ってゆく。
特に俺達の働きかけでジート砦へ来た( 【人土村】のトラックで安全・短時間に来た )人達は、震えてすらいる。
話しかけようとしても、更に身を縮こませてコッチを見ない。
「あっ・・君、コレどういう事なん?」
初めて納得出来る【巫女化】にて、洗脳を解いた村に居た魔法使いの少年だ。
その母親( と、村人 )が平伏しきりで・・コッチを見ない、話を聞かない、埒があかない。
ので、コッソリ呼び話を聞く。
「カンタお姉ちゃんとアヤカお姉ちゃんが、ガロスさまと " けっこん " するってみんなが・・。
だから、カンタお姉ちゃんのワルクチを言ったお母さんが、ころされるって」
「こっ、殺さないよ!
俺達はお母さんに悪クチを言われたとは思っていないから!」
「ボクもそう、いったんだけど・・お母さん、まほうつかいじゃ無いから、しんじてくれないんだ」
うーん・・。
彼女等は産まれた瞬間から男尊女卑に晒され、『ソレ』が当然と考えている。
『正しい』を変える者は『悪い』者、って訳だ。
しかもその手法が『洗脳』だものな。
怪しさ満点だろう。
だから俺達を信用しなかった・・というのは、コチラも分かっているんだけどな。
・・仕方ない。
「み・・皆の者、面を上げよっ!」
「はっ、はいぃっ!」
演出に、ちょい炎を纏い出来るだけ『ドス』を効かせた声で目前の人達に語りかける。
慌てて顔を青くしつつ、顔を上げる村人たち。
後ろからは何人かから「 ぷふっ! 」と吹き出す声が聞こえる。
おのれ。
「わ・・私の慈悲を無下にする事、許し難し!」
「ひいっ!?」
絶望に叩き落とされたような顔の面々。
隣の少年の頭を撫でつつ、炎を噴かす。
「されど、子を、家族を守る為であった事は情状酌量の余地あり!
よって、滅私奉公にて罰とする!
励み、村を復興せよっ!!」
「はっ、ははーっ!」
・・なんだこりゃ。
何処の時代劇だ。
ビビりまくった彼女達に『おとがめ無し』と訴えても、どうせ信用せまい。
なら、罰( っぽいモノ )でも与えた方がまだ話が早い。
「ノリノリじゃない」
彩佳がボヤく。
好きでヤッテナイ。
「【巫女】様の御慈悲に感謝するように!」
【人土】の人達が村人に下知する。
ノリノリか・・と思ったけどコレ違う、マジでやっている。
勘弁して。
形だけの罰を与えられた人達は、やっと家から去った。
少年にだけ分かる感じで手をふる。
向こうも振り返してくれた。
・・後は彼が母親を説得出来る事を祈ろう。
「・・やれやれだぜ」
「アリーヴェ デルチ!(さよならだ)」
彩佳もウンザリしている。
なんでこんな事になった?
ガロスが言いふらしたのか?
「ガロスに文句を言いに行こう」
「そうね、アタシも『被害者』だし」
「あ、会いに・・ッスか?」
「へー・・はー・・出来た方ですものね」
「へ、変な意味じゃないぞっ!?」
なんか俺と彩佳が、ガロスに会いたがっているみたいじゃないか。
そもそもで言えば───
「ジキア───ってか、ディッポファミリー傭兵団の若手のみんなは・・俺達に、『こーゆーの』じゃ無くて『あーゆーの』だったしぃ~?」
「「「うぐぅっ!?」」」
「ザレも女学園のみんなと一緒に、『なあなあ』が有ったしぃ~?」
「あぅ」
まあ、『なあなあ』は俺もだけどな。
・・とにかく、だ。
保護した村人の中で【人土村】に行きたく無い人の受け入れ先が出来た。
【人土村】との相互援助先が出来た。
ココそのものの用は終えた。
決着はつけなきゃな。




