表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/547

293『トゥーハンドクロー。』


───私は森の民。


外の人間は、私達を森の妖精だとか呼ぶが・・妖しい精は、欲にまみれたアナタ達だろうと何時も思う。


ただ私達は森の奥に住み、森の恵みを余す事なく受け取っているだけ。


たまに外の人間が私達が森の恵みから作る薬を求めてやってくる。


薬を求める間はペコペコする癖に、手に入れた途端に唾を吐くような者たち。


そんなある日、森の外から・・鎧を着た連中がやって来て───


──────


────


──





◆◆◆



「うああっ・・あがああ・・っ!!」

「ぉおお・・ぉああ・・っ!!」


「ふぁっ!?」




何っ!?

なんなんっ!?

ガロスにプロポーズされた次の日の朝、獣のような咆哮で目ぇ覚めた。


俺は恐怖に身がすくんで動けない。

何か、変な夢を見てた気がするけど・・一気に吹き飛んだ。




「・・んぅー?

ジキアさんとザレさんー?」


「あっ?

ああ・・そういや、二人の声だな」




同じ布団で寝ていた颯太も、この声で目覚めて状況判断をする。




「何やってんだ、あの二人・・?」




魔物が襲ってきてヤられた・・なんて訳ないしな。

別の意味で嫌な予感しかしないんで、ゆっくりパジャマを着替えてから部屋を出て居間へ。




「あ、アヤカさん、ギブっ!

ギブギブッス!」


「あ? ギブ?

何かくれんの?」


「アヤカっ、ゴメンなさいいっ!」




彩佳が女海賊みたいな形相で、ジキアとザレの顔面にアイアンクローを食らわせていた。


・・とくに深い意味は無いが───

居間に行く前にトイレを済ませておいて良かった・・。




「よう、お早うさン」


「お・・お早うございます、ディッポ団長。

な・・なんですか、アレ?」


「昨日のガロス様の事らしいゼ」


「ああ・・」




昨日、ガロスが俺と彩佳にプロポーズしてきた時・・二人は最後まで固まったままだった。


実際、俺達も似たようなモンだったから気持ちは分からんでもないけど・・もうちょい動いて欲しかった、かな。




「彩佳、流石にもう許してやれよ」


「ふぅー・・。

───ったく」


「・・痛たた。

全く、照れ隠しでこんな・・ハイ、ゴメンなさいですわ」




ザレにぼやかれ、彩佳の顔が紅くなる。


俺と颯太が( 源太ちゃんも )女体化し、再構成されたように・・彩佳も【人茸じんたけ】になって再構成された結果、この見た目で0歳児の肉体なんだよな。


赤ちゃんの体だから自分に利する者には、すぐ懐く───

けど、魂は16歳のままだから・・懐く(イコール)そういう感情になってしまうのだ。


今、彩佳はガロスを意識せざるを得ない状態で・・若干のNTRを感じさせるけど、俺自身がこの『呪い』を経験済みだからなあ。




「はあ・・。

確かに『呪い』って言うぐらい鬱陶しいわね、コレ・・」


「初めての感覚はどうだ?」


「・・『初めて』じゃないわよ。

『初めて』は───直して・・」


「んあ?」


「・・・・。

・・死ねっ!」




何故か俺もアイアンクローを食らう。

ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ。


・・暫くして朝食が出来た合図で、やっと解放される。


なんなん?

・・初めてじゃない・・?

彩佳が初めて【人茸じんたけ】になった後に会った、善い男・・??

・・・・父さん???



◆◆◆



「まさか貴族と一緒に食事するとは思ってなくて・・緊張してたら、突然の『あの』台詞で頭が真っ白に───

確かにアヤカさんの言う通りッス。

動けなかった自分が情けないッス!」


「ガロス本人には兎も角・・乙女として、言われてみたい台詞に気を取られた感は在りますわ」


「カッコ良かったのです」




朝食。

ジキアとザレの反省会。


ビタは・・ヒトゥデさんの話では【人花じんか】の能力もガロスは欲していたようだけど、流石に5歳児にプロポーズするのは躊躇っていたっぽい・・との事。


事案だよな。

( 40歳が16歳に手ぇ出すのも・・事案か? )




「まあ以前に、御姉チャンが危惧していた事態っちゃあ事態だな」


「何でしたっけ?」


「オメェ等姉妹が『黒い川騒動(魔物の大はっせい)』を解決したせいで、アスェベタ家に目ェつけられた時だよ」


「ああ・・」




あの時は『アスェベタ家』とは分かってなくて『謎の権力者』に目をつけられた、と思っていたっけ。


権力者に目をつけられる、という事は自由を奪われるという事。




「そんで逃げるように受けた傭兵の仕事が、リャター夫人が出した女学園の仕事なんだよな」


「そうでしたわねえ」




その後の【ファフニール】騒動でガロスの弟であるザーロスさんとも出会ったけど・・ザーロスさんは俺達のチカラ(チート)を持て余したようで、「 目の届く範囲でなら好き勝手にやってくれ 」と、放置された。


・・まあ、その挙げ句に世界征服するとか言いだしたんだからザーロスさんには迷惑かけただろうけど。

( もしそーゆー感じになってたら、フォローはしましたよ? )


ガロスは・・いろんな面倒も、デロスの事の恨みと共に呑み込む、と言っている訳だ。

その根性は感服す───


・・あー、ダメだ。

ガロスに対してホンの僅かでも感心したり、好意的に考えると顔が紅くなってまうぅ。




「け、結婚うんぬんは兎も角・・様々な国の内情に詳しい人が身内になるのは助かるけど・・」


「「身内っ!?」」


「だから結婚うんぬんじゃ無いっつうの。

な・か・ま!」




ジキアとザレが素早く反応するけど・・その反応速度は昨日のお昼に見せて欲しかったぜよ・・。




「確かになァ。

本気で世界征服するっつうなら、欲しい人材では有らァな」


「団長までッスか!?」


「人材として、だ。

オタつくんじゃ無ェよ」




・・『痛し痒し』ってこういう時に言うのかなあ。



◆◆◆



朝食後。

昨日は魔力切れから2日ぶりに目覚めた後、あんな事になり・・悶絶して終わった。

なので、自分で地震対策をした土地をまだちゃんと見ていない。




「なんで、今日は取敢ず土地を見───」


「「「御早う御座います、カンタ様」」」


「───・・んあ?」




───家を出た途端に見えたのは・・老若男女の頭、頭、頭。


俺達に反感を持っていたはずのジート砦の民達が平伏する姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ