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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
支配階級と男尊女卑・幕間
289/547

289『様々な視点・if『ホラー編②』』

 

「( さ、佐竹君?

ど・・どうすんのよ? )」


「( どうする・・と言われましても・・ )」




想定外の場所で出会い、共に行動する事となった坂ノ上さん。

徐霊ツアーは一時中断だろうな。




「( 教室まで付いてって、ソレっぽい事を言えばイイさ。

その後で俺達だけになれば問題ない )」


「( な、なるほど! )」




佐竹君は学校では、ソツなく行動するイメージだったけど・・案外、想定外の事にはパニクりやすいみたいだな。




「秋原さんと妹さんも一緒という事は、佐竹君の親戚だという先生に頼んだのかな?」


「ああ」


「海野さん、秋原君のお見舞いには行ったのかい?」


「えっ?

ええ、まあ・・」


「何処の病院なんだい?

クラス委員長として、お見舞いに行きたいのだけど・・担任も知らないそうなんだ」


「・・【人土じんど村】内の病院よ」


「【人土じんど村】・・!

・・何でまた?

彼処は怪獣騒ぎで立ち入り禁止らしいじゃないか。

一部の、品の無いマスコミからは『政府の陰謀』だとか『あの村の人間が騒ぎを招いた』とか言われているんだよ?」


「そんな噂が有るんだねぇ」




生放送のTVカメラの前で『村破級【ナーガ】(巨大コブラ)』が人間を食い殺した。


その後『街破級【アジ・タハーカ】』が街一つを破壊した。


多くの死者が出た一連の事件を、ネタ(食いモノ)にしたい『屑マスコミ』や『政治家』連中がウロチョロしている・・とは、自衛隊員の崖下さんが言っていたが。




「あそこは普通の村ですよ。

・・寧ろ、村は被害者です。

弱味を見せた者をイジメるのが好きな連中は何処にでも居るでしょう?」




異世界の屑男たちは、弱味を見せた瞬間に襲ってきた。

あんなのは、何処にでも居る。

日本も異世界も変わらない。




「・・そうかもね、詰まらない事を言った。

海野さん、もしまた秋原君の所(じんど村)へ行けるなら、自分の───クラスメイトの分も見舞ってくれないかな?」


「ええ・・分かったわ」


「有難う。

じゃ、行こうか」



◆◆◆



学校の玄関へ。

人土じんど】だという教師が居た。




「【巫女みこ】さ───?

さ、坂ノ上!?

何故ココにっ!?」


「自分も忘れ物を。

・・ソレより先生。

今、自分をみことと呼ぼうとしましたか?」


「あ・・いや・・」


「わ、私の事ですよっ!?

フルネームは『秋原 巫女みこ』と言います!」


「ふーん・・そうだったんだね。

先生、失礼しました。

秋原さんも。

いやあ・・自意識過剰で恥ずかしい」


「い・・いえ」




ふう・・完璧だ。

ディッポファミリー傭兵団と出会った頃は『元・男』だとか、この手の嘘が苦手だったけど・・傭兵たる者、腹芸も必要だからな。




「( アンタねえ・・サラリと嘘つかないでよ。

コッチがヒヤヒヤするから )」


「( し、しょうが無いだろ? )」


「( で?

どうやってそんな嘘を覚えたのかしら? )」


「( え"っ? ど、どうって・・。

『元・男』を隠す為に─── )」


「( お風呂 )」


「( だ、だからアレは覗こうとしたんじゃなくて )」




誰も見てないスキに彩佳に殴られる。

痛いでゴザル。




「(『お風呂』っつった『だけ』で、その話にたどり着く事がもう既にアウトよね? )」


「( イエッサー )」


「どうしたんだ?

【巫女・・さん、海野さん?」


「ナンデモアリマセン」


「何でカタコトなんだい?」



◆◆◆



ホラー物だと、電気の付いていない真っ暗な学校を懐中電灯だけで歩いたりするけど───

教師が居るから、目につく範囲は全て電気が付いている。

不気味っぽさは全然無いな。




「あはっ、あははははははははは♡」


「だ、大丈夫か、海野さん?」


「海野さんが、怪談系が苦手だとは思わなかったよ」




ただ外の夜闇だけは如何ともし難く、コレだけで彩佳が壊れた。

こんなんで震える彩佳が可愛い───なんて言ったら・・サイコかなあ。




「幹・・巫女姉ちゃん、『明かり()』とか無理かなぁ?」


「うーん・・」




坂ノ上さんに魔法を見られ無いようにするのもそうだけど、今の彩佳の前で光源に火球なんか使ったら・・人魂と勘違いされそう。

・・仕方ない。




「彩佳、大丈夫」




お互いが変に為らないギリギリ出力で、この前ビタにやった『心を癒す魔力譲渡』。


今の彩佳は【人茸じんたけ】で魔力を有するし、効果はある筈。




「おお・・【巫女、さん!

───美しい・・」


「こ、コレが・・!」




多少漏れでる魔力に【人土じんど】二人が反応する。

・・けど。




「せ、先生? 佐竹君?

どうしたんだい!?」


「あっ、いや・・」


「う、海野さんを心配していたんだ」


「そ・・そうか。

あと佐竹君は『秋原さん()』を、下の名前で呼ぶ関係かい?」


「えっ!?」


「秋原君と海野さんのように、古い知り合いにしては・・その親戚の『秋原君()』は苗字で呼ぶし・・」




坂ノ上さんって妙に鋭いなあ。

あと佐竹君が【人土じんどの巫女】に対しての『割り切り』がしっかり出来てないよ。


学校だと、もうちょい小器用に生きてた気がするんだけど。

・・ん?




「ソレに───」


「皆、ちょい待ち!

・・颯子?」


「・・うん、何か聞こえる」


「先生、今この学校に私達以外に誰か居ますか?」


「いえ・・あ、いや。

誰も居ないはず・・だ」


「佐竹君、『例の美術準備室』って・・」


「に、西棟ですけど」


「秋原さん?

君は───」




──うっ・・ううっ・・──




「な・・何だい、今の声・・?

女性の啜り泣く声?」


「みんな、早く目的地の教室へ!」


「あっ!?

ちょっ───」




俺が彩佳を抱えて逃げ始めたので、皆が慌てて付いてくる。

坂ノ上さんの目の前だから、超速歩魔法カタパルトを使えないのがもどかしいけど仕方ない。


さっさと坂ノ上さんには、忘れ物を取ってきて、帰ってもらった方が良いだろう。




──うっ・・ううっ・・──




「つ、付いて来てるようだね」


「佐竹君っ!?

『例の奴』は・・美術準備室だけじゃなく、至る所を彷徨きまわるタイプなのかっ!?」


「いや・・そんな筈は───」




啜り泣く女の声は、確かに近づいてきている。

・・なのに足音がしない(・・・・・・)


幽霊かどうかは、今まで信じた事が無かったんで分からない。

───けど、人間じゃない。


・・マズイかもしれん。

 

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