287『『王』ではなく、いち『貴族』なので、全てを欲しがったりはしません。』
「───わ、罠に決まっています【巫女】様!」
「わ、わなわな・・ナンチャッテ♡」
「しっかりして下さい、【巫女】様っ!?」
えーっと・・えーっと・・?
「ガロス ダ アスェベタ!
貴方は【巫女】様を、利用するつもりなのでしょうっ!?」
「利用価値が有るからな。
強い魔力、確かな知識、人々を導く意志・・ついでに美しい。
誰から見ても、魅力的な人間であろう」
「・・そ、それは・・」
なんか、【人土】の人達とガロスが・・言い争っているぞ?
けど、内容が理解出来無い。
皆も似た感じ。
・・明日の天気はどうなんだろう。
「たっぷり我の為に、働いて貰う。
・・だが、その分この世界の誰よりも幸せになって貰う。
年老いて死ぬ時、笑って逝かせよう」
「わ・・私達の方が【巫女】様を幸福に出来ますっ!」
「下働きとして、だろう。
男として、では有るまい?
我が妻の下で存分に助けるがよい。
我と目的は、ほぼ同じなのだから」
「・・う、うーん?」
「間違って・・は、いない?」
「あ・・愛するとか、今だけよ!」
彩佳が呆気から回復し、なんか叫びだす。
元気だなあ。
「コイツはデロスの事で、幹太を恨んでんのよ!?
愛なんて結婚3年目ぐらいで、冷めるんだわっ!」
「父さんと母さんは、ずっとラブラブだったぞ?」
「ア・ン・タ・は、黙・れ・っ・!」
「はい」
「恨みは有る。
間違いなく、一生涯な。
だが貴族なんて物をやっていれば、そんな物は『常』だ。
恨みは飲み、愛は一生涯貫こう」
「そんな事・・!」
「お前達が同性愛者でも構わん。
二人とも、等しく愛でよう」
「・・・・。
・・・ふ、二人?」
なんか彩佳から、怒気が消え・・青ざめているなあ。
「言ったろう、利用価値が有る女よ。
強い魔力、確かな知識、人々を導く意志・・ついでに美しい。
御前も『アヤカ ダ アスェベタ』と成れ」
「~~~~~~ッッ!?
ど、ドコの金ぴかよっ!?」
「ふん。
意味は分からぬが、ソレも一興」
あんなパニクってる彩佳も珍しいな。
顔色が青くなったかと思えば、紅くなったり・・今日の晩御飯、何だろう?
「イイ加減にアンタも目ェ覚ませっ!」
「ふぎゃっ!?
・・えーっと」
「我の妻に成れ。
カンタ、アヤカ。」
「・・あー、ああ・・───」
そういや、ジキアやザレに『好かれ』はしても・・『愛の告白』なんて物を受けた事は無い。
こんなん、生まれて初めてだ。
さっき迄の、呆気とは別ベクトルに頭が働かなくなる。
顔熱い。
「そ、そうなあ・・えーっと。
取敢ず、俺達は【人土村】を助ける為の行動途中だ」
「人は誰しも行動途中だ。
その中で、出会い、共に進む」
「うんうん」
「『うんうん』じゃ無いでしょうが!?」
「アレっ!?」
あかん、ヤバい。
絶賛、『呪い』発動中だ。
ってか、ジキアとザレは何やってんの!
弾幕うすいよ?
「・・・・」
「・・・・」
固まっとるがな。
「あ、あー・・ガロス様よ。
あンま世間知らずの小娘たちを、からかってやンなよ」
「からかっているつもりは無いが?」
左舷からディッポ団長の援護射撃。
頼りになります。
「確かにオレ等の知らん異国の知識を持ってらァな・・馬鹿げた魔力も有る。
だがよ、小娘は小娘共なンだ」
「道理ぐらい分かろう」
『ガキ、ガキ』って、言い過ぎじゃないですかね?
「オッサンが若ェ娘たちに舞い上がってどうするよ?」
「───舞い上がって・・か。
確かにな。
ソレは否めん」
「ソレにな・・あンま、便利使い出来るとは思わ無ェほうがイイぜ?
ちょっと目ェ離したスキに明後日に飛んで行く糸切れ凧だよ、御姉チャンは」
酷い事を言われている気がするけど・・ディッポ団長の事だ。
・・うん、きっと裏の意味が有る。
うん。
「・・分かった。
今日はココまでにしておこう。
───話し合いも有るしな」
「えっ?
こんな空気の中で話し合いするの?」
「とは言っても単純だがな。
『【空の口】の、肉も剣も、女が成る』
・・コレは『英雄ヨランギ』の次は『三種族の【巫女】』が【空の口】に突き刺さる『剣』となる───
という意味ではないか?」
「なるほど」
【人土】達が大きく頷く。
ディッポ団長もすっかり冷めたオムレツを食べつつ「 ふむ 」と、同意する。
「では、我は帰るとしよう。
民の様子も気になるし・・『新たな仕事』も増えたしな。
カンタよ、魔力など関係無く美味かったぞ」
うぁー・・フイにそういう事を言うの、止めれ。
せっかく冷めてきた顔がまた熱くなってきた。
「幹太姉ちゃん、うぶだねぇ。
僕、もう理太郎君と " ちゅー " したし♡」
ん?
そういや俺、颯太に恋愛経験負けてんだ。
・・あの騒動の中、颯太だけ冷静にオムレツを食ってたし。




