284『シャイニングカンタに成り損ねました。( タイトルを書いて気付きましたが、かなり名前が似てる・・。)』
「ぜぇー・・ぜぇー・・」
「はぁ・・はぁ・・」
秋原家のメンバーも、ジート砦のメンバーも・・時に喚声をあげ、時に息をのみ、俺とガロスの決闘を見守っている。
戦況は・・互角だと思う。
俺は、まだまだ魔力に余裕が有るけど・・スタミナがヤバい。
流石にこの衆人観視の中で、可憐な乙女がゲロインになる訳にはイカン。
ガロスは、俺の逆だな。
スタミナに余裕は有るが、魔力切れが近いみたいで眠そうだ。
ゲーローになる様子は無いもよう。
( 万が一、食後の人達ばかりのド真ん中で、ゲーロー・ゲロインの登場なんて事になったら・・阿鼻叫喚だろう。)
「ど・・どうした・・?
ずいぶん目ぇシパシパしてんじゃないか・・」
「ふ・・ふん、貴様も魔力を無理に振り絞っているだけだろう・・?
嗚咽を隠しても無駄だ」
魔力切れで嗚咽が出た事は無いなあ・・オェ。
「幹太はねえ、一人で家をココまで動かした後にアンタと決闘してんのよ!」
「は、ははっ・・。
確かに疲れてはいるな・・今、あの娘が嘘をついていないように見えたぞ」
彩佳の台詞は嘘じゃあ無い・・が、ココで全力魔法を使えば、その証明になるけど───
そんな事をすれば、ガロスはたぶん納得するだろうが・・ジート砦のガロス派の人達は『俺に恐怖する』ばかりで『俺を認める』事は永遠に有り得なくなるだろう。
寄る辺無き民の旗印たる者が、民が納得していないのに民を無視して俺を認めるかは・・分かんないな。
・・しゃあない。
ココが踏んばり所か。
「来いっ、ガロス ダ アスェベタ!
俺を認めて貰うぞっ!!」
「・・ぐっ、良かろうアキハラ カンタ!」
動きは最小限に・・心の目だ。
明鏡止水の境地に立て、俺!
( ゲロインにならない為に。)
「行くぞ、アキハ───」
──ズン・・ッ──
「「・・っ!?」」
・・なんだっ!?
今、なんか地揺れみたいな・・?
「な・・なんだなのだっ!?
まさか、この大陸で地震・・っ!?」
「が・・ガロス様っ!」
「【人土】の皆さん、【人土村】から連絡はっ!?
魔物の群ですかっ!?」
「い・・いえ、【巫女】様!
朝に、魔物の襲来は暫く余裕が有ると・・ソレ以外の事前連絡のは何も来ていません!」
事前連絡ナシ、通信障害でも無いもようだ。
魔物の群じゃないみたいだし、ホントに只の地震か?
「ガロス、決闘は一時中断っ!
民を安全な場所へ!」
「う、うむ!」
「みんなは秋原家へ!」
「「「お・・おうっ!」」」
普段は冷静沈着なディッポ団長も、おそらくは生まれて初めての地震に焦っている。
秋原家なら耐震設計も確りしているし、土台の下の『土魔法の足』も形状変化させる事でかなり免震出来るからな。
実際ココまで、かなりの悪路でも震度2以上に揺らした事はないし。
「ふぅー・・ビビったゼ。
他大陸の商人に地震の話は聞いた事こそ有るが・・」
「ざ、ザレさん・・平気そうッスね。
ビタちゃんも」
「ニホンは地震大国ですもの。
彼方にいた一カ月強の間に今のクラスが1回、以上のが1回、以下なら数回在りましたわ」
「初めての時は眠れませんでしたが、慣れたのです」
「今のは震度3・・ってトコかな。
───ん?」
ガロスと、ガロスと共に避難した民達が戻ってくる。
「どうしたっ!?」
「広場に地割れが見つかった。
かなり丈夫な砦とは言え、廃砦は廃砦だ。
万一を考え、建築家・大工等の洗脳が解けて集まるまで・・別の拠点を探そうと思う」
ガロスは貴族の風格とでも言おうか、弱音は出さない。
・・しかし、他の民達は───
元々、逃げてジート砦へと来たんだ。
誰も彼も・・絶望の表情。
「・・仕方ない。
みんな、我慢しろよ!」
「───えっ?」
ガロス達が、俺の言葉を理解する前に・・ガロス達の立つ地面を持ち上げる。
「「「えええぇぇっ!?」」」
秋原家を歩かせる魔法を、土地だけで再現した訳だ。
「こ・・この魔法は・・この魔力は・・っ!?」
「彩佳、クワガタで周辺の土地チェック!
みなが安心出来る場所を探してくれ」
「分かったわ、まかせて!」
彩佳のナビゲートで、ココに来るまでに作った日本式道路に面した平坦な土地まで行き、ガロス達を降ろす。
「【人土】の皆さん、申し訳有りませんがこの土地のチェックを。
取敢ず、ザッとだけで良いので」
「分かりました!
・・・・。
【巫女】様、周囲に『地割れ・陥没・隆起』といった異変は見つかりませんでしたよ」
「なら、土地の補強だけしとこう」
確か『マンションが傾いた』とかいうニュースでは───
地中深くの『支持層』なる、硬い地盤のトコまで支柱となる物を、必要量刺さなきゃいけない所・・ケチって必要量未満しか刺さなかった事が原因、だとかなんとか。
取敢ず、土に魔力を送り硬い層を探すと・・だいたい地下30mぐらいのトコに、明らかに硬い層を発見。
確か支柱は最低直径30cm以上、一本で100tぐらい耐えれる強さが必要とかニュースでは言っていたので、土魔法でおもくそ固めた支柱を作る。
支柱の周囲に出来た隙間を、近くの小山の土から取って埋め───また少し離れた場所に支柱を作る。
完全なる素人知識なので、この支柱で大丈夫なのか、量は足りているのか・・丸で分からないけど、高層マンションを立てる訳で無し───ソレに残存魔力量がヤバい。
支柱の上に蓋となる地盤( 建物を直接建てる部分 )を作り完成。
「ううぅ~・・眠いぃ。
が、ガロス・・決闘は・・また今度で・・良い、か・・?」
「───あ?
・・あ、ああ・・」
「ディッポ団長ぉ・・?」
「ああ、任せてサッサと寝ろ」
「さっ、御姉様!」
ザレと彩佳に両肩を支えられ、秋原家の玄関・・の辺りで記憶が途切れた。
◆◆◆
「───んっ・・」
「あっ、幹太姉ちゃん!」
えーっと・・何で自室のベッドで寝てるんだっけ?
「お早う、颯太。
今、どういう状況なんだ?」
「えーっとねぇ、幹太姉ちゃんが地面を硬くした後、ディッポファミリー傭兵団とか【人土】の人達とかジート砦の人達とかが家を建ててるよ」
「・・ああ、そういや。
じゃあみんなの所へ行こうか」
「うん!」




