282『「情報を吐いてもらう、カードで勝負だ!」「洗脳? よし、カードで勝負だ!」みたいな。』
「───我が・・であり・・然るに・・可愛い・・アレこそ次期当主・・ああ・・───」
ガロスが・・ナニヤラ演説をしており、ガロスに心酔している人はガロスにだけ注目している。
「・・・・」
だけど・・俺達はガロスの左腕にばかり注目してしまう。
ガロスが左腕を天に掲げると天に視線が行き、チカラを貯めるように左腕を腹に持っていくと視線も腹に行く。
( ガロス派より俺達派の人達は・・そんな俺達の視線に気づいて気不味そうにしている。)
ヤバいな、この感覚・・。
もし【ファフニール】騒動の時、ザーロスさんが頭頂部に『特殊装甲』を装着していたら・・気を乱して、負けていたかもしれん。
「( 幹太・・かく村々で洗脳された人々を探査してて、気になっている事があってね? )」
「( ・・ハイ )」
「( コッチの世界で子供のオモチャって木彫りの人形とかだけで、ちゃんとしたぬいぐるみとか見た事ないんだけど )」
「( ・・そうですかね? )」
「( 何で敬語なのかしら? )」
気のせいッスよ。
「( 昔・・アタシがちょっと病んでた頃に、アンタに『ああいうの』頼んだ事が有ったわよねえ )」
「( あ・・有ったなあ )」
「( アタシ、母娘で行商やってる人の商品は見た事無いけど───服屋以外で唯一ぐらいに、いつも毛糸とか買ってるわよね )」
「もう分かってて言ってんじゃんっ!?」
「な、何がだっ!?
アキハラカンタよっ!??」
「えっ?」
皆の視線が・・一斉に俺へと集まった。
ガロスの、ガロス派の、俺達派の───視線。
・・やっちゃった・・。
俺の回りにいる人達は・・あっ!?
全員、一歩後退りして目ェ反らしやがった。
隣にいるのは・・颯太とビタとモスマンのみ。
ええコ等やで。
取敢ず、みんなを「 キッ! 」と睨んでおいて───
( スットボケられて。)
「も・・もう分かっているんだろう、と、言ったんだ。
───ガロス ダ アスェベタ!」
「( なにカッコつけてんのよ )」
無視。
「『デロス ダ アスェベタ』は、世間話の通りの愚者だった」
「・・何?」
「我欲に捕らわれ、救国の英雄たる『白百合騎士団団長リャター』氏の経営する女学園を急襲した者を、愚者と呼ばず何と呼ぶ?」
場の一般人達がザワつく。
この国におけるリャター夫人の知名度・人気は、王族をも凌ぐしな。
【デロスファフニール】は、ザーロスさんの策略により
『偶然に偶然が重なって、1000人で街破級を退治出来た』
という事実のみが、一般に広がっている。
リャター夫人が、どうこう・・というのは初耳らしい。
「リャター氏の教え子、ザレさんはその時の・・憎悪を、恐怖を、知っている!」
「え"っ!?」
「【銀星王国】にその人有り、と言われたディッポファミリー傭兵団の面々も死に物狂いで参戦してくれた!」
「あっ、この・・っ!?」
死なば諸共。
渋々前に出てきた面々。
後ろに控えていた【人土】達が「 当然です! 」と、皆を前に促す。
「・・リャターが、広域指定盗賊団と関係が有った可能性が有る」
皆を忌々し気に睨みつつ、ガロスが呟く。
広域指定盗賊団?
リャター夫人が?
何の話だ?
「ザーロスさんが言ってたよ、幹太姉ちゃん。
デロスが、リャターさんのお店が邪魔だからリャターさんを盗賊にしたって。
だからあの時、デロスは僕たちのオフロを覗いたんだ」
なんか色々抜けている気がするが・・。
気絶したり女生徒達の卒業準備の旅をしたり───
色々あって、あの時デロスから感じた『狂気じみた悪意』ゆえに深くは考えなかったけど、源太ちゃんとザーロスさんと数十人の騎士団を連れていけたのは、そんな大義名分をでっち上げていたからか・・。
俺達の風呂を覗いた、辺りで彩佳とジキアの鼻息が五月蝿くなった気ぃするが後だ。
( クラッゲさんとナムァコさんは、たぶん颯太に。)
「ソレは貴様等だけの、言い分だろう」
「【ファフニール】は『悪意』に取り付く魔物だ。
ソレはアスェベタ家の聖獣【モスマン】が証明してくれる」
「チャーっ!」
ガロスに心酔する人達なら( 【ファフニール】の死体の存在は知らずとも )アスェベタ家が【ファフニール】の居た山を管理し、その山に住んでいたモスマンの繭を王族に献上していた事を知っていてもおかしくない。
つか、聖獣あつかいはモスマンも満更じゃないみたいだな。
スゲえ、ノリノリだ。
「・・ふん」
「───俺の目的は責任逃れの弁明でも・・そちらへの責任追及でもない。
『魔法使いの目』に誓って、【空の口】の被害者と・・男尊女卑に苦しむ女性達を救いたいだけだ」
「【ムセンキ】とやらで対話した時も言ったが、我とて寄る辺無き者を見捨てるつもりは無い。
『魔法使いの目』に誓って」
俺もガロスもソコに嘘は無い。
「───それでも・・我はデロスを愛していたのだ・・」
ガロスから一条の涙が零れ落ちる。
ガロス派・俺達派を問わず、一般人からもすすり泣く声が聞こえる。
「(『愛していた』の意味、違ってそうよね )」
「( シッ! )」
愛して・・か。
「俺とて兄弟愛、家族愛は分かる。
颯太が・・離れて住んでいる家族が死ぬ所なんて、想像もしたくない」
「・・・・」
「だから俺自身も認めて貰うぞ!
『男尊女卑』と『男しか居ない魔法使い』と『女しか居ない【空の口】と魔女』の秘密を語ってもらおうか!」
「秘密・・?
魔女・・【空の口】だと・・?
何の───む、そういえば───」
ガロスが意味有りげに溜めを作り───
「ならば決闘だ、アキハラカンタよ!
我が負ければ貴様の知りたい秘密を全て教えよう・・。
しかし貴様が負ければ・・貴様だけで良い、デロスに謝罪してもらうぞ!」
「はあっ!?
何で、ソッチにしかメリットが無いような事を───」
「良いんだ、彩佳」
ガロスの気持ちも分からないでも無い。
「受けるぞ、その決闘!」




