278『後に村の子供達は「 悪い事をすると、家が動いて襲ってくる 」と叱られるようになります。』
「・・って訳で洗脳を解くのと同時に
『男に意見するのは悪い事じゃない』と『説得』した女性達とその旦那が、【人土村】へ行きます」
〔ああ、【人土村】の受け入れ準備はOKだよ〕
【人土村】の山柄さんと定期連絡。
向こうは特に問題ないそうで、みんなも元気だし魔物退治・物流も安定してきているらしい。
〔洗脳が解かれないまま保護した女達も、最初こそ誘拐されたかの如くだったけど・・〕
「大丈夫でしたか?」
〔ディッポファミリー傭兵団の奥さん方や女学園のみんながフォローしてくれたんだ。
今じゃ、ぎこちなくも笑ってるよ〕
目覚めれば、見知らぬ人達と異世界都市。
さぞ怖かったろうが、まあその後が良かったなら、良い。
〔・・『説得』か。
・・何でソコまでしなきゃ為らない程のトラウマを、植え付けられなきゃならないんだろうねえ〕
「そうですねえ」
単純に『クズ男』ってだけなら、元の世界にも居た。
けど『コイツ等』の『コレ』は・・執念のようなモノすら感じる。
「・・やはり、
『男しか居ない魔法使い』と
『魔女』とが、関係あるんでしょうか」
〔『魔女』、か。
まさか『件の女』が【人土】の御先祖の『賢者様』だったとはね〕
「そういや『賢者』・・『三者を超えし者』が、
『現行人類の目的が、女を封印』とか何とか言ってたっけ」
あの時は、唯の『訳知りキャラ』『中二病』『ソレっぽい台詞好き』だと思っていた。
けど・・今、思えば多分コレは真実っぽい。
〔女を封印・・ソレがつまり、男尊女卑だと?〕
「さあ?
ただ、もしそうであるなら───
『宗教』や『文化』以外の・・『理由』が有りそうですね」
無論そんなのが、罪の無い人への暴力を許す『理由』には成らないけど。
〔『文化』じゃないって言うなら・・そこまでヤるなら一般人だけには無理だろうね〕
「そうですね。
ソレこそ『国包み』じゃあないと」
〔ガロス・・この【銀星王国】最高権力者16人のウチの1人の息子の話は、ぜひ聞きたいねえ〕
うーん・・。
ガロス本人は被害者女性を保護しているし、民からの評判は良い。
弟のザーロスさんは、リャター夫人や女学園と良好関係を築いていたし、怪しい所は無かった。
アスェベタ家現当主ダロスとは、源太ちゃんが一度面会したらしいけど「 問題ナシ 」との事。
源太ちゃんは感情レーダー魔法を持って無いとはいえ、人生経験豊富だし『魔法使いの目』を持ってすれば、人間性ぐらい分かるだろう。
アスェベタ家そのものは男尊女卑と関係無さそうだけど・・。
「一応『ジート砦』へ行く女性達を運ぶ方々には、注意喚起を。
必要とあらば、全責任を俺に」
〔分かったよ。
注意喚起は兎も角、責任を【巫女】様にってのは───
まあ万が一、武力衝突になったら、結局ソレが一番幹太さんの迷惑にならないか〕
あえて『迷惑』という言い方をするなら。
【人土】達だけで解決しようとして・・結果、怪我人や死者が出る事の方が───余程『迷惑』だからな。
〔会話する意思を見せたなら、無線機を渡しとくよ〕
「お願いします」
◆◆◆
「最初に洗脳を解いた足の悪い女性か、魔法使いの男の子、どっちかは【人土村】を選ぶかと思ったんだけどね」
「足の悪い女性はなあ・・。
治療も受けさせたかったけど『一からこの村でヤり直したい』そうだし」
「魔法使いの子本人は、魔法使いが沢山居る【人土村】へ行きたがっていたそうですわ・・。
しかし、親が『ガロス様の領地へ』との事ですもの」
ま、各々の人生だ。
俺達がすべき事は凡そ終えた。
『うどんタネ』と『レシピ』と『うどん粉』も渡し終えた。
村の皆に見送られ、村を出る。
( 一部、秋原家を動かしたのを見て「 魔王っ!? 」つったけど。)
◆◆◆
「女学園のみんなの洗脳を解いた時は・・ソレはソレで喜びが有ったけど、やっぱり『おんぶに抱っこ』過ぎる気もするんだよなあ」
最初は・・あの、莫大な人数の
『俺を助けてくれる人達』が揃って初めて、洗脳が解けた。
今回は、颯太ふくむ【三種族の巫女】と彩佳とジキアの助けが必要だった。
村から離れて活動する以上・・最少人数で洗脳を解くチカラは必要だろう。
「あンま気負うんじゃ無ェぜ?
助け助けられ・・だ」
「そうなんですけどね」
・・まだ『三者を超えし者』の、一瞬で洗脳を解くチカラには足りない。
未だ『破級外』『道破級』といった最下級魔物しか送ってこない所をみるに、【空の口】は封印中なんだろう。
今のウチに、チカラを蓄えなきゃならない。




