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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
支配階級と男尊女卑
277/547

277『初期なら、ガチショタに成り得ました。』


「貴女の妹さんの旦那を処刑した『御貴族様』と『我々』は別の組織です」


「は、はあ・・」




最初こそ警戒していた女性達も、俺の魔力付与料理やら村破級の肉やら栄養剤やら・・全て食べ終える頃には心身共に元気を取戻し、警戒心も解けていた。




「警戒心・・解けてるかしら・・?」




解けたのだ。

ので、妹が旦那に暴力をふるわれていた女性を中心に俺達の素性を理解出来る範囲で説明。

( 日々を生きるのに必死な彼女達に、余り全てを詰め込んでもな。)




「彼の御貴族様の目的は、人民の安全優先です。

しかし我々は我々の仲間を守るため、【空の口】と戦います」


「は、はあ・・」


「また・・あのように、男を『教育』したりもします」


「「「・・・・・・」」」




言われ、彼女達が視線を向けた先には・・妻と娘に土下座する男。

彩佳に【人茸じんたけ化】された男だ。



◆◆◆



「【空の口】の洗脳のせいで、御貴族様が気づかなかった『村一番の暴力男』などはいますか?」




という問いに、皆の視線が集まった女性がオロオロする。

どう考えても・・『処刑』を、連想してしまうんだろう。


俺達の事を『貴族、ないし、権力者』だと勘違いしているっぽい女性に『あえて』何も言わず、自宅へと案内させる。


その途中、彼女に引っ付き歩く少女もまた・・殴られた痕だらけ。

不安がる女性には悪いと思うけど・・躊躇いも何もない。




「こ・・ここ、です・・」


「なるほど。

・・彩佳、済まないけど」


「ええ」




【空の口】の洗脳は解けたとしても・・完全な意味での『暴力の恐怖(せんのう)』からは開放されていない女性は───男が居る我が家に、彩佳が入って行くのを・・懺悔するかのように見守っていた。


───が・・。




「御免なさい!

御免なさい!

御免なさいぃっ!!」




暫くして出てきた男に、イキナリ土下座された女性と少女はあたふたするばかり。


村の女性達も呆気にとられていた。



◆◆◆



「『我々』と『彼の御貴族様』とは違う組織ですので、貴女方には幾つか選択肢が有ります」


「せ・・選択肢?」




人茸じんたけ化】した男とその妻と娘を横目に、広場の野外食卓に戻り会議。

女性達は・・恐怖すればいいのか、開放に喜べばいいのか、ただ呆然としている。




「一つは、かの御貴族様の元へ行くものです。

ゲラェブ領領主ダロス様の御長男で・・」


「ダロス様のっ!?」




女性の一人が突然叫ぶ。

聞けば、彼女は【北の村】村長の兄が運営する村・・ゲラェブ領出身らしい。

そこから男尊女卑の村に嫁いで来たなら・・色々大変だったろう。




「ガロス様はダロス様と同じく、民にも御優しい方で・・かつ、悪意には大変厳しい御方でした」


「信頼出来る方、という訳ですね」


「はいっ!」


「そのダロス様がこの【空の口】による洗脳世界で、新たな領地にて被害者達を集めているらしく、ソチラに行く選択肢が一つ」




呆けから戻り、彼女が友達であろう他の女性達に『絶体スバラシイ所だから共に行きましょうよ』等々、説得している。




「もう一つの選択肢は、我等の拠点である【人土じんど村】へ行く事です」


「あ・・貴女様方の」


「すでに幾つかの村の女性が住んでいて・・ああ、もちろん貴女方に【空の口】との戦いを強要する事は有りません」




警戒心が再び芽生え初めた女性達の中から3歳ぐらいの少年が近づく。


当然、【人茸じんたけ化】によってでは無く、他の女性達と同様の方法で洗脳を解いた子だ。


・・・・あれ?

この子───





「・・そこに行けば、またあの紐みたいなののスープが食べれる?」


「もちろん」




少年が一人の女性に微笑む。




「・・お母さん、この人ウソつきじゃ無いよ?」


「こ・・こら・・!

も、申し訳有りません・・!」


「大丈夫ですよ。

君、魔法使いなんだね」


「・・たぶん」




洗脳されていた時は皆、魔力が澱んでいて気づかなかったけど・・今なら微かとはいえ魔法使い特有の『魔力を自ら生み出す』様子が見える。




「その嘘が見える目で、お母さんを守るんだぞ」


「・・うん」




頭を撫でてやると、決意ゆえか顔を赤くする少年。

うんうんと頷いていたら彩佳に「 アンタ、あんな小っちゃい子まで・・ 」などと言われる。

何を言ってんのか分からんけど、違うよ?


また、『料理』と聞いてウズウズしている人、ウットリしている人が数人居た。




「最後の選択肢はこの村に留まる事です。

・・むろん暴力男達はみな、強制的に『説得』しますが」




コレには・・多少ザワつく。


ロクな想い出しか無い場所から逃げたい人もいる。

でも・・どんな所であれ、故郷を捨てられない人がいる。


まして怪しげな『説得』付きなのだ。

どちらかが良いかは、直ぐには決められないだろう。




「今すぐ決める必要は有りません。

明後日、【人土じんど村】から物流の為に此方へ救援物資と共に人が来ます。

ソレまでに進退を決めて下さい」




顔を見合せる女性達。

多少、安堵したようだ。




「・・まあダロス様の方は分かりませんが、【人土じんど村】に来る方と此方に残る方は───

何時になるかは兎も角、別の場所へ行くチャンスは有りますけどね」


「わ・・分かりました」




ソレで、その日は御開き。

・・そして【人土じんど村】からのトラックが来た日。


3割がガロスの元へ。

2割が【人土じんど村】へ。

残りの5割が、この村に残る事を決めた。



◆◆◆



「初めて洗脳を解いての説得だからなあ・・2割は多いんだか少ないんだか」


「まあ、そンなもんだろ。

むしろ故郷に半分残るっつった方が多いと思ったゼ?」


「多いんッスか?」


「暴力男共が、チョチョイと『何か』を『された』ら急に真人間になるンだぞ?

事情を知らねえ奴からしたら、気味悪ィ事この上ねェよ」


「うーん、まあ・・『3日分』食事を用意しましたしね」


「はン・・。

───悪ィ小娘だぜ」


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