276『魔改造を魔改造。』
「お願いよ・・!
私はどうなっても良いから旦那様を・・!」
今もまだ、【空の口】の───
・・ではなく、男の暴力による洗脳を残す女性達。
『虚ろな目』から『暗く濁った目』に変わっただけ。
今、ココで旦那を助けねば・・暴力を奮われると思っているんだろう。
「も・・申し訳有りません・・。
彼女達は、村の女達で何とか説得致しますのでどうか御容赦を・・!」
「幹太、どうすんのよぉ・・?」
「・・お腹すいた」
「「「・・は??」」」
「か、幹太?」
「カンタさん?」
昨日の昼前から、細かい休憩を挟みつつでは有るけど・・今日の夕方まで。
30時間以上、働きかけっぱなしだからなあ。
「みんなもお腹空かない?」
「空いたねぇ」
「お野菜、用意するのです!」
「では、我々《じんど》が竈等を用意致します」
「ではワタクシは【人土】の方々の御手伝いを致しますわ」
「お願いします。
流石にヘトヘトで力仕事はキツいんで。
ディッポファミリー傭兵団の皆には・・」
「ああ、分かってンぜ。
おい、精の付くモンをじゃんじゃん持ってきな」
「「「うぃーっす」」」
【人土】達やザレ、ディッポファミリー傭兵団が、村の広場にどんどん野外用キッチンと食材の準備をする。
( 忘れていたけど、洗脳されていた行商人も良く分からぬまま手伝っている。)
「はいはい、洗脳が解けた皆さんも。
手伝って手伝って」
「えっ? は?
あ、は・・はい・・・」
「彩佳とジキアも呆けて無いで。
お腹すいただろ?」
「・・ハァ。
真面目に考えてるアタシが馬鹿みたいじゃない」
「カンタさんらしいッスけどね」
場のみんなで調理準備。
村の多くの女性は勿論、「 旦那様を助けろ 」と言っていた女性達も「 ?? 」という表情を浮かべたまま手伝う。
「・・よーし。
まずは『前菜』に、お腹に優しい消化に良いモノを作ろう」
「幹太姉ちゃん、何を作るの?」
胃腸に優しい料理は───
温かい。
柔らかい。
味付けが濃くない。
小分けに食べれる。
消化に負担がかからない食材。
───だっけ。
「うどんにしよう」
「わーい♡」
「コレが、ニホンの『前菜』ですか」
「いや、勘違いしないでよねっ!?」
以前作っていたうどんタネを、商工ギルド職員さんが用意してくれる。
商売人として異国の料理は、ウケる・ウケない問わずに気になるらしい。
『トラックや懐中電灯』等は再現出来ないので、料理など再現可能なものは色々調べようとしてくる。
「粉料理は有るけど、練った物をそのまま焼く( パンの出来損ないみたいなの )らしいし、こういうのも良いでしょう」
「コッチの人用に調製した味付けの汁も温めて・・はい、どうぞー」
村の女性達にどんどん配る。
彩佳が「 折角の日本食チートがあ! 」とか言っているけど、日本人だって外国食を日本人向けに味付けを変えて、和食とか言ってんじゃん。
「・・おいしい」
村の女性達にも好評みたいだな。
「うっ・・ううっ・・」
何人か泣きだす人が居た。
「旦那様」と、言っていた女性達だ。
「・・魔力付与をしたんッスよね?」
「ああ。
彼女達のトラウマを癒す願いは、込めたけどさ・・ホントの所はこうやって、皆で料理を作る楽しさも有るんだろうな」
・・コレも有る意味、洗脳かあ。
でも、それでも良い。
所詮エゴとエゴのぶつけ合いだ。
俺はこの方法で、彼女達を助ける。




