275『ヤバイお薬、的な成分は有りません。 ・・たぶん。』
ミスでデータの一部が消えてしまい、この村の話を全部終えられませんでした。( 泣 )
「こ・・ココは・・?
私は・・?」
「大丈夫ですか?
痛い所、気持ち悪い所、辛い所は有りますか?」
「え・・?
あ、いえ、有りません・・」
俺達【三種族の巫女】と、彩佳とジキアの尽力により【空の口】の洗脳魔法を解き、正気を取戻した女性。
見た目に異変は無いけど、呆然としている。
「ビタ、何か心が安らぐ植物とか持ってない?」
「お任せあれ、なのです!
日本の名前を言っちゃイケない植物と、此方の植物をナナさんと一緒に交ぜた・・どんな犯罪者も立ち所に大人しくなる『クイーン・ラベンダー』なのです!」
「相変わらず法律的にヤバそうな事をヤってんなあ・・まあイイけど。
ビタ、有難う」
俺達にまで効果が出ないよう、真ん中に座る女性にだけ香りが行くようにして事情説明。
「【空の口】の声・・。
た、確かに記憶が有ります。
その後は、夢の中に居たような・・。
か、彼女達も全員洗脳を解いて貰えるのでしょうか?」
「彼女達の洗脳を解く前に・・『○X』という男をご存知ですか?」
問うた途端、クイーンラベンダーの効果が一瞬効かなくなる程に顔しかめる女性。
感情レーダーも振り切る程に悪意が溢れる。
「実は貴女方が洗脳されている間・・『○X』が、何方かに酷い暴力を振るっていたようでして」
「そ、ソレは私の妹と・・その『旦那様』です!」
「『○X』の、余りの暴虐ゆえに・・通りすがりのとある御貴族様が処刑し、被害者は保護なされたそうです」
「・・・・っ!
そう、ですか・・妹は無事なんですね?」
『暴力』と『処刑』という言葉を聞いた時は、興奮していた女性だけど・・被害者が保護されたと言った辺りの頃には落ち着きを取戻していた。
コレは、クイーンラベンダーの効果だけじゃあ無いだろう。
明らかに『○X』・・ガロスが処刑したクズが、この世から居なくなった事に安堵している。
洗脳から解かれ、目覚めれば目の前には見知らぬ人間。
その上、自分の村から処刑者が出た───
そんな話をするのはカケだったけど・・俺達も暇じゃ無い。
この村だけでも救いたい女性は数十人も残っている。
○Xなる男が余程嫌われ者だったようだから、こんな話をする俺達の信頼を失う事は無いみたいだ。
「あの『おと───』
『旦那様』は妹を・・妹をずっと・・!」
「妹さんでしたか・・ソレは心配でしょう、ぉ・・私も妹が居るので大変よく分かります・・!」
「・・はい」
「ですが、その御貴族様は信頼出来る御方です」
「え、ええ」
「今は貴女にも此方の方々の洗脳を解く、手伝い・事情説明等をして欲しいのです」
「わ・・分かりました・・。
ですが・・その───
・・何故、この場に『女』しか?」
やっぱ、その話題になるよなあ・・。
「・・正直、我々は処刑された者以外の『村の男』も、信用していません。
我々がこの村に来た時、洗脳されていた貴女は洗脳されていた男に、物を投げ付けられていました」
「・・・・」
女性が顔を伏せる。
まあ、自分の事だ。
心当たりが無い訳が無いだろう。
「愛しあう夫婦。
男尊女卑意識の薄い男。
年端もいかぬ少年。
・・そういった男なら兎も角、暴力的な・・我々に敵意を持つかもしれない男を今すぐは助ける訳には行きません」
「わ、私の『旦那様』は・・頭の良い女性が嫌いで、貴女様のよう御方を見たなら───」
「ふん・・自分の嫁に『様』付けで呼ばせる男なんて、放っておきゃ良いのよ」
「彩佳」
「ハイハイ、見張ってまーす」
まったくもって、彩佳の言う通りなんだけどな。
「・・済みません」
「い、いえ。
彼方の方の言う通り、『旦那様』も他の村の『殿方様』も・・その」
「・・・・・・。
分かりました、取敢ず女性達の洗脳を解きましょう。
颯太、悪いけど【人土】の方々に救援物資を持ってきて貰え無いか?」
「うん、分かった!」
◆◆◆
次の日の夕方。
やっと最後の女性と行商人の洗脳を解け終えた。
ヘトヘトで何にも出来ないけど、事情・進退の説明は先に洗脳を解いた女性達がしてくれた。
男共については・・。
やはりクズしか居らず、怪我の無い・栄養失調で無い女性は───
一人も、只の一人も居なかった。
ソレでも何人かは
「 私が悪い 」「 旦那様を助けてくれ 」と懇願してくる女性が数人・・居た。
しかもそういう女性ほど、頭の先から爪先まで殴られた跡のある女性ばかり。
男の『洗脳』が骨の髄まで染み込んでいるようだ。
「ヤりきれ無いわね」
「ふン・・。
この世界、何処もこんなもン・・いや、まだマシな方だゼ?
クチをきけるンだからな」
───はあ。
ほんと、ヤりきれ無いな。




