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その姉妹品、危険につき──  作者: フユキ
支配階級と男尊女卑
273/547

273『日本人の何人かはこの植物を手にとり、べこべこ押したがります。異世界人はそれを奇異の目で見ます。』


「・・ジぃーキぃーアぁー君♡」


「・・・・・・。

お断りさせて貰って良いッスか?」




何故だ。

ジキアの警戒心が、0%からイキナリ100%に跳ねあがったぞ?

あと、何で頼み事だとバレた?




「オレ達に転移のことを隠そうとした時と、アヤカさんに【人茸じんたけの巫女】の話を持っていった時と同じ顔ッス!

御義父様も言ってたッス!

言いにくい事を頼みに来た時の顔ッス!」


「失敬な・・別に、言いにくい事じゃあ無いぞ。

それに多分、ジキア自身の魔力増加にも役立つ」


「な・・何スか?」


「俺のピーマン料理を食ってくれ」


「絶体いやッス!?」




苦い物、特にピーマン嫌いのジキアが本気でイヤがる。

・・昔の日本の子供か。


ちなみに一言でピーマンと言っても、ウチでは二種類ある。

日本から持ってきて、【人花じんか】が増やしてくれた普通のピーマンと・・異世界の植物だ。


一見・・セガ○ターンコントローラーみたいな形と大きさで、弦がコードと同じ場所から出ている。

色は真っ白。

それ以外は、味も食感も完全にピーマン。


中は種が詰まっていて、輪切りにしたり細切りにしたりと料理方まで同じ。

( ただ何故か、『イスカンダル』という小生意気な名前なのでピーマンと呼んでいる。)


異世界ピーマンは『旅人の主食』と言われるほど、至るところに自生しているので食卓にも出しやすいのだ。




「「ジキア君?」」


「何ッス・・か───って、アナナゴ兄さんとウーニ兄さん?

・・な、何ッスか?

顔が怖いッス」


「美少女の手作り料理を断るなんて、良い御身分なのである」


「あーあ、心の中ではオレ達を馬鹿にしているんだろうなあ?」


「し・・してないッスよ!?」




なんかワチャワチャしてきたので、事情説明。

人土じんど】の本質、

『魂の集束』

『敵性魔力の吸収』

『分身への譲渡』の話をする。


人土の巫女(おれ)】が【人土じんど】の料理に魔力付与しても、「 美味い 」としか言わない。


なので他種族のジキアが、しかも嫌いなピーマンを「 美味い 」と言わせられれば『分身への譲渡』の練習になる。

・・かも、しれない。




「ソレなら普通にオレに直接、魔力譲渡して下さいッスよ!

そもそも、アレってオレだけにする約束ッス!」


「いや・・状況次第で必要だったし・・。

ジキアが拘る理由が分かんないし・・」




意識や前後の記憶が混濁する事を、心配してくれているんだろうけど。




「・・あと直接の魔力譲渡は魔物みたく、頭パーンなる可能性が有るけどイイか?」


「酷い二択ッス・・」




感動に全ジキアが泣いた!




「う、うーん・・しょうがない。

食ってくれたら、水着で一緒にお風呂に入ってやるぞ」


「「「「 !??? 」」」」


「・・分かり───モガッ!?」




鼻の穴を広げたジキアが、立候補するが如く手を上げて近づくも・・【人土じんど】の一人に止められた。




「か、勘弁して下さい【巫女】様!

我々が仁一郎さんに殺されてしまいますよっ!?」


「やだなあ、父さんを何だと思ってんですか」


「父さん優しいよねぇ」




しかし、皆が首を横に振る。

そりゃ惜しみ無い愛情は貰っているけどさあ。




「彩佳さんも怒ると思いますが」


「よし、止めよう」




全ジキア、NO.1の大絶望。




「お、俺だって昔から料理はしているんだ。

不味くは無いはずだぞ?」


「・・・みず・・みず・・・・」




嫌いな物を食す緊張から喉が渇いたか・・済まん。

こうして、ジキアが快く俺の手作りピーマン料理を食ってくれる事となった。



◆◆◆



「・・世界が青みがかってるッス」


「えっ?

ジキアも魂のチカラに目覚めた?」


「・・死んだバアちゃんが、川の向こう岸で手を振ってるッス」




ソレ、大丈夫なやつ?




「よぉし、今度はピーマンの肉詰めを・・」


「カンタちゃん、料理修業になってる!

ピーマン料理そのものは美味くなってても、魔力譲渡? は正直、変化が無いよ!?」


「あれ?」




ジキアのみならず、ディッポファミリー傭兵団の数人や【人土じんど】の人達にもピーマン料理を作る。


人土じんど】達は最初に懸念した通り、俺が魔力付与した料理は何でも至上の美味さになるようだ。


ディッポファミリー傭兵団は・・ピーマン嫌いでも無い人は普通に美味い料理として食ってくれている。




「うーん・・失敗かあ」


「いや、失敗って事は無いと思う。

魔法使いで無いオレ達も、魔力の充実を感じたよ。

最初よりどんどん上手に(美味く)なってるさ」


「ただな・・今までカンタのそばで見てきた身としては、物足らんと言うか・・」


「御姉チャンの最終目標は『三者を超えし者』並に、洗脳魔法を食い千切りてェンだろ?」


「はい」




庭で武器の手入れをしていたディッポ団長が、休憩がてらに来てピーマン料理を一摘まみ食う。


特に何も言わず、取り皿に自分の分を移して庭へ持っていく。

・・おおぅ、ニヤケちゃうぞ。




「成果は出てる。

コレばっかりは地味に修業しろってこった。

ジキアは貸すから、好きに使うとイイぜ」


「そんなっ!?」


「そもそも『イスカ───・・ピーマン嫌いで、傭兵や行商の旅が出来るか。

この際だ、御姉チャンにピーマン嫌いを直して貰うンだな」


「・・・・はいッス」




無表情になるジキア。

・・済まんね。


要は───

男や傭兵に恐怖するザレや、アニメに吐いたビタに対し、トラウマを癒す為に使った魔力譲渡だ。


リャター夫人は『三種族』だと効果が大きい、みたいな事を言っていたけど・・ジキアの、俺の料理を食う人の為にという想いを込めて魔力付与をする。



◆◆◆



「・・なんか、美味い気がするッス」


「そ、そうか・・!」




三日後には大分成果が実ったらしく、ジキアはピーマン料理を。

他の皆も其々が嫌いな魔力付与料理を「 美味い 」と言ってくれるようになった。




「まさか【人茸じんたけ】になってすら苦手だった椎茸が、食べられるようになる日が来るとはねえ」




彩佳も機嫌がいい。

良かった良かった。




「・・でもコレ・・。

わざに幹太が料理まで作る必要、有ったのかしら。

料理は誰かに任して、その時間を幹太は魔力付与修業に当てればもっと───」


「「「・・・・・・」」」




毎食の秋原家の調理担当【人土じんど】の人達が引きつってんのを感じる。


「【巫女】様に食事の準備だなんて、申し訳ない!」「いやいや、一日一食分だけですから」といったヤり取りを思いだす。


・・うん。

別に俺、料理キライじゃ無いし?

皆の為に美味い料理を作るという心構えが、円滑な魔力譲渡に繋がったんだ。

そうに決まっている。



◆◆◆



そして次の日。

次の村。

俺の、俺達【巫女】の、修業の成果を見せる時が来た。


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