260『日本人はScheveningenに、謝るべきだと思うのです。』
「その、もう一人の【人狼の巫女】候補を探す手段は───」
「一人一人、手探りしか無い。
自分も、貴女が【巫女】かどうか見た目では分からない」
「そ、そう・・か」
手探りなんて絶望的だ。
ザレみたく、己が【人狼】だと知らなければ特に。
「質問は以上か?
許されたのなら、もう行きたい」
「えっ?
あー・・っと」
国境の村の前に訪れた村にて『三者を超えし者』が洗脳を解いた女性は、結果的にそのせいでクズに襲われた。
気まぐれに助けただけ、結果は問わない───という言い草に腹立ちはしたものの・・謝罪を受けて許した以上、「 次からは注意するように 」としか言えない。
俺達とて自分の都合だけで助ける人間を選び、あまつさえ世界征服しようなんて言っているんだしな。
「じゃあ、あと3つ。
①【空の口】は封印するしか方法無いのか?
②ヨランギって異世界の人間なのか?
③一緒に来ないか?」
「・・・・・・。
まず、貴女は【空の口】を封印するのが目的なのでは無く、自分の仲間と良く在りたいが為その過程として【空の口】をどうこうしたい?」
「ああ」
「なら③は辞退する。
考え無き救助は反省するけど、自分の目的を優先」
「・・そうか」
彼女の目的から言えば、俺達は寄り道ばかりしているようにしか見えないんだろう。
「①【空の口】は封印するしか方法無いのか? については、「 そうだ 」としか言えない。
アレは魂だけの存在。
生や死を超越している」
「あー、やっぱそうゆう系かあ」
【空の口】の本拠地がこの世界の何処にも無い、という話からある程度予測はしていたけど。
「②ヨランギって異世界の人間なのか? については、この世界で産まれ育ったこの世界の人間」
「異世界からの転移者でなくとも転生者とか・・そもそも、異世界って分かるかな?」
「分かる。
自分はドイツ人だから」
「・・・・ん?」
「ヨランギは転生者とか言う者でも無い。
3つの質問に答えた。
では失礼する」
「あっ、ちょ───」
別れの挨拶とほぼ同時に土中へと消えた『三者を超えし者』。
・・・・えっ?
ドイツ・・って、ドイツ?
◆◆◆
「ザレが、スケベニンゲンだった事実以上の言葉ね」
「アヤカ?」
全員と合流。
クズはディッポ団長達が上手い事してくれたらしい。
他には・・国境の村商工ギルド支部長には【人土村】との協力を確約させた。
世界の現状は、いくらでも証拠が有ったし・・『三者を超えし者』が、立ち去る際、村内の洗脳された人間の洗脳を解いて去ったらしい。
俺達が村に居るんだから『考え無き救助』では無い、という事か。
「そのドイツってなァ、御姉チャン達の世界に有る国なンだな?」
「はい。
アッチにドイツという国は有ります」
「オレも世界中の国名を知ってる訳じゃ無ェが・・」
『三者を超えし者』のあの言い方だと、まずアッチの世界のドイツだとは思うけど。
「そういえば、僕が【魔力体】にとり憑かれてた時、「 魔女の本当の敵は僕達の世界の人 」みたいな事を言ってたんだってねぇ?」
「そうだなあ・・」
「『アッチの世界』『魔女』『怨み』・・まあ、中世暗黒時代の『魔女狩り』を想像するわよね」
「うーん・・ドイツの魔女狩りは酷かった、とかは聞いたけど・・」
『自分はドイツ人』の『は』は、『俺達』に掛かった言い方では無く・・【空の口】達、魔女全体に掛かった台詞っぽいんだよな。
時代考証もムチャクチャだし、『魔女』の定義は『中世暗黒時代ヨーロッパの人』だけじゃあ足りない気がする。
正式な発音はスヘフェニンゲンだそうです。
( wiki情報 )




