26『小説で、ざわ・・ざわ・・を再現しようとすると微妙です。』
『目標は北の村から魔物の森へ変わった』
───そう伝えるため、イーストさんが所属する傭兵団の一人が【銀星王国首都】へ伝令に行って暫く・・斜め後ろから馬群が現れた。
街から来た傭兵連中だな。
下種傭兵ABCもいる。
( 泣きそうな顔で。)
タイミング的に、伝令さんと途中で出会ったのか。
・・遅くね?
この調子だと、村・・ヤバかったぞ?
「オ、オレ達は『対人』傭兵なんだ!
魔物なんか相手に出来るか!?」
「まだ言ってんのか・・?
【コカトリス】は災害指定なんだぞ!」
メソメソする下( 略 )ABCと、その他。
ほぼ、傭兵ギルドで俺達姉妹を『女』ってだけで見下していた連中だな。
災害指定とは放っておけばどんどん被害が拡大する、余程でない限り何より優先して対処 ( 今回は魔物なので討伐 ) 義務がある存在の事。
「なに、今回はまだ楽だの。
黒い川の直後は一時的に周囲の魔物が沈静化するしの。
原因は、この濁流の跡を遡れば簡単に見つかるよの。
・・そしてなにより───」
「───切り札がある、ですか?
全く・・ディッポファミリー傭兵団もトンでもナイ人材を発掘したモノだ」
戦力体調に問題ないディッポファミリー傭兵団弓矢隊の一人、『ヒトゥデ』さんとイーストさんの傭兵団、数少ない『対、村破級』傭兵団が場を仕切る。
「まったくの。
ようやっと自宅に帰ってきて妻とゆっくり寝れると思いやあ・・早速面倒事に巻き込みおっての、ホッホッホッ」
「済みません、でも助かります!」
ディッポファミリー傭兵団に魔法使いはジキア一人しか居らず、ヒトゥデさんも魔法使いではない。
・・が、前の世界の人間と比べこの世界の人は皆、基礎能力が高い。
ヒトゥデさん達は熊より強いかも知れない犬ゴリラを、一人で何匹も一矢一剣で仕止めていた。
その気配察知力もかなりのもの。
魔法使いでなくとも、この世界の人間は身体強化魔法を使っているみたいだ。
◆◆◆
魔力探査は俺と颯太、通常の警戒はヒトゥデさんイーストさんといったプロ ( と、その他大勢の ) の調査で森を進む。
沈静化、の言葉通り最初は魔物の気配こそあるが襲われる事なく進んでいた。
しかし『村破級』の一体、【アルラウネ】のテリトリーの近くを横切った時、颯太が気づく。
「なんだろ?
幹太姉ちゃん、アソコになんか魔力が有るよ?」
「ホントだ。
ひょっとしてアレが【アルラウネ】?」
「あ、あれは・・エリ草じゃないかっ!?」
下種傭兵の一人が叫ぶ。
俺が初めて魔法を使った時、暴走し手を失う大火傷をした。
その治療に、魔力を含む薬を塗られたが・・アレの高級原材料らしいエリ草なるモノを見つけた下種傭兵が、イーストさんの制止を振り切りテリトリー内へと走ってゆく。
「ば・・馬鹿野郎・・!?
【アルラウネ】のテリトリーに入るんじゃ無い!」
「奥まで行かねえよ・・!
ヒッ、ヒヒッ・・一株で数百万っていうエリ草がウジャウジャと・・♡」
「速く戻って来──」
『ザワザワザワザワッ!!!』
辺り一帯の草木が騒ぎだす。
植物の女王【アルラウネ】に気づかれたらしいな。
背の低い草木は相手を転ばそうと足を絡め取り、背の高いヤツは腕や首を締めようとしてきた!




