258『英雄、色を好むってよ。』
「あァアああアぁあアアアっ!!!」
「ぉぉおおおおオオオオオっ!!!」
やはり『賢者』と『魔王の粘土』が融合した『三者を超えし者』というのは伊達じゃ無い。
耐久力や迫力は『街破級』以上。
押しても押しても。
削っても削っても。
なお『三者を超えし者』は巨人に補給し続け、攻めてくる。
残念ながら商工ギルド館の一部と周辺建築物は巨人の材料になった・・が、その分ソコソコの広場が出来た。
ソレでも物流回復のため、コレ以上村を破壊する戦い方は出来ない。
『三者を超えし者』も世界を滅ぼす気は無いからか、この国境の村にコレ以上の被害を出す戦い方はしない。
「・・・・っ、化物・・!」
「『三者を超えし者』・・!」
巨体を弾丸の如き速度でブン回してきて、もはや俺の動体視力では巨人を捉えきれない。
自動追尾か面制圧か・・空間制圧か。
そういう系の魔法じゃないと当たらないな。
「何故・・!?
自分から直接生じた者達でさえ、此処までのチカラを有してはいなかった!」
「俺は! 生粋の! 【人土】 じゃあ・・無い・・!
空間内爆発魔法っ!!」
「ぐう・・っ!
まさか、後天的に【スライム】に食われでもした・・?」
「ああ、そうだよっ!」
「有り得無い・・!
『高い魔力』がどうこう、の理を超えている!
貴女は一体、何なんだっ!?」
「秋原幹太だああァァァっ!!!」
【アジ・タハーカ】戦で【アジ・タハーカ】の攻撃を奴自身へと跳ね返したように、全てのエネルギーが空間の内側へと向かうよう防壁魔法で戦闘場全体を包み、中の巨人を爆破する。
中心地点の威力は極大爆発魔法に近い威力のハズだけど・・。
炎と煙が晴れたソコには・・僅かな残骸を残し、朽ちた巨人の成れ果てが有った。
「ん?
ディッポ団長のパス・・『怒気』『憎悪』か」
少し余裕が出てきたからか、たぶん俺達が戦っている間に国境の村の村民チェックをして・・クズでも見つけたんだろう、ディッポ団長のパスに気づく。
いかな【銀星王国】内にあって、【連合】の人間が多いゆえに男尊女卑意識が薄い村とは言え・・本性を隠した【銀星王国】の人間もいるし、【連合】の人間にも色々いる。
他には颯太達も、何時の間にか商工ギルド館では無く国境の村の入口を警戒していた。
コレは・・【空の口】の魔物の群では無いけど、俺達の戦闘魔力に当てられた『魔力を食う系の魔物』を引寄せたか。
「・・・・・・。
【人土の巫女】、一つ聞く」
「なんだ」
「最初に貴女は自分に対し、『【空の口】の仲間であるか』を問うた」
いきなりギルド支部長室に出現した『三者を超えし者』に、「【空の口】の転移技術で現れたのか 」という意味で聞いた事か。
「【空の口】が今代の敵と認定したのは貴女・・いや、貴女方か?」
「異世界から転移させられたり、戻されたり、何億という魔物の群を差し向けられたり・・ソレを言うなら」
「・・・・・・」
何かを考える素振りの『三者を超えし者』。
暫く、己れの手足を確認し───
「貴女の仲間を侮辱した事で戦闘になったのなら、謝罪すれば見逃して貰えるのだろうか?」
「・・魔法使いの目にかけて、嘘偽りの無い謝罪なら」
「済まなかった。
言い訳をさせてもらえば、自分が『三者を超えし者』という・・か、格好イイ名前になろうと『三者』の二人は大事な存在だ」
・・やっぱコイツ『訳知り顔キャラ』といい、中二病くさい。
『三者』と『英雄ヨランギ』が二千年前の話なら・・まさか、中二千病?
【人土】の『8人の代表』の一人、池上由利さんと気が合いそうやね。
「二人の後継者を名乗りつつ・・弱い彼女等に、つい言い過ぎたとは思っている。
済まなかった」
・・うん、本心では有る。
「彼女達・・ザレの方は【巫女】である筈なのに、そのチカラが無いんだけど・・心当りは?」
「自分と繋がりの有る貴女なら単純に『相手を吸い尽くす』という気概が『粘土』の量とともに足りない、と分かる。
『聖者』の子孫は、おそらく経験不足。
しかし『覇者』の子孫は・・分からない」
「そうか・・」
「しかし・・可能性というか、一つ思い浮かぶのは───覇者は『ドスケベ』だった」
・・。
・・・・。
・・・・・・。
・・・・はっ!?
一瞬、【人狼】の、ザレのチカラの秘密と関係無い( であろう )単語にフリーズしてしまった。
「覇者は毎晩どころか朝昼晩、三度の飯感覚でヨランギと寝所を───」
「ちょっ、ちょちょちょ・・!
人様のそう言う話は勘弁・・」
「むっ・・そうだな。
自分もヨランギとの順番を律儀に守っていた頃の話は辛くなってきた。
聖者も・・カマトトぶって陰ではこっそりと・・!」
『三者』同士、仲良かったちゃうんか!?
なんなん!?
英雄ヨランギって、ハーレムもの異世界転移者なん???




