253『ホラー演出のアレ。』
「おォーい、御姉チャン達そろそろ国境の村だゼ」
「はうぅぅ・・結局【人狼】に成れませんでした~・・」
「まあ俺も【巫女化】制御、たいして進歩してないからなあ」
国境の村。
物流の最重要拠点その1。
ココの復興は【人土村】の未来を左右すると言っても過言では無い。
「ココまで100%、洗脳は彩佳頼りだからな。
俺も何とかしたいし」
「アタシは気にしないけどね」
「ワタクシ達が気にするのですわ!
貴女にだけ全てを任せるなど、ワタクシのプライドが許しません!」
俺の【巫女化】とザレ・ビタ含む【三種族の巫女】の接触は完全に洗脳を解く。
だけどソレは言い代えれば、元が悪人やクズだったなら変に洗脳は解かない方がマシって事だ。
その点、彩佳のキノコなら洗脳を洗脳で上書き出来る。
俺達には時間が無いし、そもそも世界平和を目指している訳じゃない。
どうでもイイ奴等がどうにかなろうとどうでもイイ。
そういう意味でも彩佳のキノコは助かるんだけど・・。
「あの行商人母娘が安全に商売出来る村なのよね・・」
・・この村の人達は出来るだけ助けたいし、彩佳だけには頼れない。
「【連合】は大小様々な『国や集落』が集まってできた国で、全部が全部という訳じゃ無いけど男尊女卑意識が薄い国らしいな」
【連合】については、【連合】に転移した源太ちゃんと【連合】出身のパラヤンさんポロヤンさんにチョロッと聞いただけ。
地域毎に文化が大きく違うので『大変だけど楽しい国』との事。
「魔物の群れも今は居ねェ。
・・今回は俺等も行くゼ?」
「・・はいっ!」
一言で『村』と言っても、規模に差は有る。
例えば、今まで寄ってきた村は山の幸( 獣・山菜・薪など )を糧にするので、山の一つ二つが敷地に入った広大な村になる。
ので・・村民を探すのに苦労したとも、一人ずつ対応出来たとも言える。
逆に国境の村は、多くの機能が一カ所に凝縮された小さい規模の村。
一度に沢山の人間と対応しなきゃならない村だ。
「アヤカ御姉チャン、『かめらクワガタ』とかいう奴を商工ギルドまでの道程に飛ばしてくれ」
「ええ」
「・・パッと見は『自失』した連中ばっかッスね」
「『忘れた』連中はサッサと帰るのかも」
「ソレ考えると一人行商中に『大事な人を忘れた』人って悲劇的だなあ」
俺で言うと颯太を忘れ・・うわっ、想像しただけでエグいぞコレ。
「・・おいっ、静かにしろ!
アヤカ御姉チャン、ココに近づけるかっ!?」
「ちょっと待って。
クワッガー、右下の───って、どうしたの!?
大丈夫、クワッガーっ!?
・・分かったわ、帰ってきて」
「あ・・彩佳?」
「わ・・分かんない。
急にクワガタ達が全員怯えだして・・。
ディッポさん、貴方、何を見たのっ!?」
俺もモニターは注視していたつもりだけど、特に違和感は感じなかったが・・。
「『もにたあ』のこの部分に、一瞬だけ写った奴が・・コッチを見た」
「は?
ソレだけっ!?」
「で、でも彩佳・・クワガタの反応も有る。
今の、巻き戻し出来ますか?」
「拡大して再生します」
モニターを操作する【人土】の一人が再生された映像には、髪の長い・・この距離だと男か女かは分からない奴がクワガタに気づき、振り返る。
うーん・・。
日本から転移して、まだ眠っていたディッポ団長やジキアの母リラキアさんに自失したディッポファミリー傭兵団を救出する時・・自失した門番を音で誘き寄せた。
自失していようと音には反応する。
『コイツ』も『そう』、と言えば『そう』だけど・・。
「時間が惜しい。
彩佳、今はディッポ団長の勘を最優先して行動しよう!」
「・・仕方ないわね。
他のエロ親父達と違ってディッポさんだし」
「その扱いは酷いの・・」
「『件の女』の事も有るンだ。
油断はするんじゃ無ェぞ」




