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251『「アンタが言うな」「何がっ!?」』


〔【源・人土じんど】・・ねえ〕




無線機の向こうで山柄さんの思案声がする。

やや不機嫌そうな声。

さっき、【人土じんど】達とちょい揉めた時に『件の女性』を『【巫女】の偽者 』と認識したらしい。


山柄さんも似た感じっぽい。




〔分かった。

コッチでも調べてみるよ〕


「お願いします」




後は最初の村で救出した女性の検査が終了、今すぐ『どうこう』といった事は無いなどの細々した話を終え無線機を切───ろうとして、彩佳が無線機の前に立つ。


??

なんなん?




「もし・・『件の女性』が、『【巫女】の偽者』じゃなく、『本物の【巫女】』だった時───貴方達【人土じんど】はどうするのかしら?」


〔ハア?

そりゃ、どういう意味だい?〕




マジでなんなん!?

彩佳がやや、怒気を孕んだ声で。

ソレを受けた山柄さんが、先程より不機嫌そうな声で。


何時の間にか、彩佳の後ろにジキアとザレが付いている。

彩佳に同調するように。


状況が分からずオロオロしていると颯太が俺の服をキュッと掴んできた。

颯太自身もよくは分かって無いみたいだけど「 大丈夫だよ 」という意思が来る。


颯太と共に周囲を見回すと、ディッポファミリー傭兵団は・・目が合ったら『ニヤリ』と笑われた。


人土じんど】の皆は・・悔しそうな顔。




「部外者であるアタシからの勝手な意見を言わせて貰えば【巫女】と【人土じんど】の関係と【幹太】と【山柄さん達】の関係は・・『今は』重なっているわ」


〔・・・・・・〕


「でも・・部外者から見ると【人土じんど】って本能を優先するケースが少なからず有ると思うの」


〔つまり?〕




つまり?




「颯太みたいな『スペア』扱いで無く、『本物の【巫女】』が二人並んだ時・・【人土アナタたち】は、どうするの───って、聞いているのよ」


〔ワタシ等の忠誠を疑うってのかい?〕


「忠誠は間違い無く本物でしょうよ。

幹太の関係者ってだけで【人土じんど】でもないアタシ達にも善くしてくれてるのは、ホント感謝してるわ」




コレは無線機越しでも伝わるであろう彩佳の本心だ。

呆れた感じを出しつつ・・ボソッと本音を言ってくれた事がある。




「ヤマエさんとの御付き合いは、ワタクシ達と御姉様と同時期・・御姉様が【人土じんど】になる前からでしたわ」


〔・・そうだね〕


「その時から善くして頂いておりますのでヤマエさんが『裏切る』などとは考えておりません。

ですがソレ以外の方・・御姉様を知らずして『【巫女】だから』という理由で御姉様をお慕いしている方々の話ですの」




ザレは【人狼じんろうの巫女】として色々俺にアドバイスを求めてくるけど、まあソレは元々の関係性の延長上だ。

そういう意味では【三種族の巫女】なんて欠片も興味が無いだろう。




「か・・カンタさんと【人土じんど】の皆さんが『【巫女】有りき』の関係でも、オレはカンタさんが『カンタさん』だから・・好・・仲間ッス!」




いやジキア。

ソコは『好き』って言おうよ。

バレバレな態度なのに男がウジウジしてたら、女はイラッとしちゃうよ?


ココで何故か彩佳がレバーブローをかましてきた。

なにゆえっ!?




「もし、『件の女性』が【人土じんどの巫女】なら・・幹太にはまだ出来ない完璧な【巫女化】が出来るって事よ。

言い代えれば、【真の巫女】。

真の忠誠を尽くすべき【巫女】じゃない?」


〔・・・・・・〕




山柄さんが「 ふう 」と一つ息を吐き・・ゆっくり喋りだす。

さっきまでの不機嫌な感じは消え失せ、何時も通りの・・頼りになる山柄さんの声。




〔・・言わんとする事は分かったよ。

彩佳さん達の言う通りかも知れないね・・ワタシ等は数百年も【巫女】が居なかったんだ。

【真の巫女】とやらが目の前に並んだ時どうなるかは・・正直分からないさ〕


「一、『秋原幹太』の事は好いてくれてんのよね?」


〔そりゃもちろん〕




彩佳の口調も元通りになる。




〔軽軽に流して良い問題じゃ無かった事は理解したよ。

でもね、彩佳さん?

『件の女性』からしたら、アタシ等だって他の血が多く混ざった【真の人土じんど】じゃ無いんだ。〕




あ。

今、無線機の向こうで山柄さんがニマリと笑ったのが見えた。




〔半端モン同士で繋がってみせるさ。

ワタシ等の【巫女】は幹太さん。

・・コレは揺るがない決定事項だよ〕


「・・・・・・。

有難う御座います。

色々生意気言って御免なさい」




彩佳とザレ、ちょいオドオドしつつジキアが無線機越しに頭を下げる。

終わり?

終わった?

・・恐かったあ。


といった辺りで、今まで鼻で笑いながら我関せずとばかりに元将棋チャンピオンのシャッコさんと将棋をしていた現チャンピオンのディッポ団長が立ち上がる。




「話は終わったかい、アヤカ御姉チャンにヤマエさんとやら。

ココに話の中心人物なのに話に入れなくてずっとオロオロしてる哀れな小娘が居てなあ・・」




救いの視線を送っても「 シッシッ 」と追い払ったクセに。




「まだ『件の女』が【人土じんど】って決まった訳じゃ無ェンだぜ?」


〔そりゃそうだ。

取敢ずその村の常駐班は【人土村ココ】のルールか分かっている【人茸じんたけ】を多目に任すよ。

その他の可能性・・貴族や他所の【人花じんか】やモスマンの可能性を調査するチームもついでにね〕


「頼まァ。

次は【連合】との国境の村だからな。

面倒は少ねェ方がいい」




国境の村か・・。

異世界へ来たばかりの源太ちゃんとニアミスし・・行商人母娘と初めて出会った、男尊女卑の薄い村。


人種の坩堝の村。


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