248『「血が洗脳してるんスかね?」「なら婿養子のオジさんが説明つかないわ」「愛だよ」「有る意味一番怖いんですけど」』
「───せぇーーのっ!」
『う・・ぁ・・・・』
・・また、失敗だ。
俺、ザレ、ビタの三人で『洗脳者』に触るも・・反応が芳しくない。
「ワタクシがハーフだから、でしょうか?」
「うーん・・?
【人土】はハーフどころか、ハーフのハーフのハーフの・・って物凄く血が薄まった訳ですよね?」
「そうですね。
ですから数百年、【巫女】という存在を忘れる程に【巫女】が出現しなかった・・とは、思われます」
ザレは自分が【人狼の巫女】である事を、【人狼】( と、源太ちゃん ) が居ない今なら客観的アドバイスが欲しい・・という訳でこのメンバーに打ち明けた。
「・・てか、ソレを言ったら俺は【人土《賢者の子孫》】の血ですら無いしな。
ただ【スライム】に食われて、誰よりも【スライム細胞】を多く保有していたってだけだし」
「今、山柄さんが【スライム】を増やしてんだよねぇ?
【人土】の人達に幹太姉ちゃん以上の【スライム細胞】を入れたらその人が【人土の巫女】なのかなあ?」
「ソレは・・我等如きが口出しする事では有りません」
そもそも、【巫女】って何?
って、部分も有るしな。
『三種族』から慕われるってだけで、魔力の多少は関係無いっぽいし。
「ビタの前はビタのお姉さんが【巫女】だったんだよな?
その前は?」
「御婆様だったと聞いているのです。
御婆様の前は御婆様の姉だそうです」
「【人狼】もザラクスさんの妹の前は、兄妹の母親だったらしいわよね。
んで、次がザレ。
やっぱ血筋かしら」
「才能かもしれないッスよ。
【巫女】に必要な才能を輩出しやすい家だとか?
アキハラ家独特の性格とかみたいに・・あ、いや」
「・・何で今のセリフで姉妹揃ってニヤニヤしてんのよ?」
えっ?
俺と颯太が、父さんや源太ちゃんと同じって事だろ?
喜ぶ以外に何かある?
「まあアキハラ家の謎はイイがよ」
謎て。
「ザレ嬢チャンが人間として生きていきたいンなら【巫女】なんざ忘れちまえ。
オマエの好きな人ぁ、ンな事を気にしやしねェよ」
「・・でしょう、ね」
ザレが俺達を見て微笑む。
日本から再再転移する際、状況しだいで俺達は異世界へと行かないと知った時に見せた・・笑顔。
「───ですが、諦めるつもりは有りません」
「そうかい・・。
なら素人判断だがよ、【人狼】の業をなぞる───ってのもアリなンじゃねえか?」
「【人狼】の業?」
「御姉チャンの、魂をどうこうみたいなのとか・・ビタ嬢チャンの植物操作とかだよ。
【人狼】にゃア無ェのか?」
「───狼への変身・・」
魔力を『身体強化魔法』だけに、ではなく『肉体そのものの強化』へと使っているんだよな。
【人狼】の先祖『三者』の『覇者』が、おそらくW強化で英雄ヨランギの敵をバタバタ倒したみたいだ。
「御姉チャンが【人土の巫女】とやらに目覚める前から洗脳を解くチカラは有ったらしいし、『三者』本人にしか詳しい仕組みは分かんねぇンだろうよ」
「【人狼】もソレっぽい事を、源太ちゃんと面会した時に言っていたんで、たぶんそうなんでしょうね」
ザレが【人狼の巫女】の資格が無い・・にしては【人土村】で何人か洗脳を解いたんだよなあ。
◆◆◆
数日後、村に魔物が来ないようにズレた場所で【人土村】の物流業の人を待つ。
結局一人も洗脳を解くことが叶わぬまま、彼女達を【人土村】のしっかりした施設に送る事となった。




