245『切れ味が良過ぎると、切られた側に痛みがあまり無いせいで長時間動けるケースが有るそうです。』
「【巫女】様。
Pー36からくる魔物に攻撃しないで欲しい、との事です」
「というと?」
魔力パスで繋がった、魔力レーダーのモニターにはPー36ポイントに反応が有る。
そこそこの群れだけどな・・?
「【ラットシープ】なる魔物の群れが出現したとの事で、リャターさん他商人の方々が原型を残したい・・と」
「【ラットシープ】・・鼠みたいな羊?」
「逆である。
羊みたいな羊毛がとれる鼠であるな」
なら【シープラット】なんじゃね?
「【銀星王国】には生息せん魔物ゆえ、カンタがまだ知らんのも無理は無い。
【連合】に生息する魔物で良い糸が作れるぞ」
「商人の狙いはソレかー」
【人土村】の『衣・食・住』のウチ、『住』は何も問題は無い。
寧ろ部屋が余っているくらいだ。
『食』もまあ・・『肉』が向こうから来るし、米野菜果物類も日本の物コッチの物問わず【人花】が解決してくれる。
ただ『衣』はなあ・・。
日々の戦闘でどんどんボロボロになってゆくのに資材が足らなかった。
だから、日本人の感覚だとどう見ても『女性服』にしか見えない服を・・戦場に出る傭兵団が着ていたからな・・。
( どう見ても『獅子奮迅の女装傭兵団』としか言えない映像が送られてきた時は・・涙したモノだったよ。)
「あとは鉄や銅の採れる魔物が居たらなあ」
「別の大陸には居ると聞くがな。
『村破級』『街破級』で」
「へー」
俺達の世界で銅は『人類が初めて利用した金属』なんて言われているけど、コッチでは魔法や魔物加工の技術が先に確立された。
なので金属は、魔物の素材が無い時の予備素材的に扱われたりする。
( 【人花】ならソレこそ何でも植物から作るし。)
なので銅や鉄の鉱山とかは有るのに、採掘とかあまり聞かないんだよな。
「まあとにかく、その場凌ぎとは言え『衣』も何とか成りそうか」
「そうね。
ファッション知識チートも見込み有りなんでしょう?」
ディッポファミリー傭兵団・衣類修繕担当のクジャラさんに彩佳が聞くも・・苦笑い。
「ソレ、何人かに聞かれたけどさ。
【人土】の仮面被った娘とか。
そりゃ製糸製布技術は凄いけど・・デザインは好き嫌いが有るかな。
『知識チート』ってカンタちゃんの魔力並に売れるかって意味なら正直無いよ」
「ええーーっ!?」
「いや、彩佳だって日本の服しか着てないじゃん。
好みは有るだろ」
今【人土村】にいる異世界人以外はどちらかと言えば、排他主義者ばかり。
いきなり異文化デザインの服が、全部受け入れられてバカ売れ・・は無理っぽいかな。
ジャージやスエット、可愛い系より着心地良い系は【人土村】に居る異世界人にソコソコ売れているらしいけど。
「ううー・・何が『仮面の娘』よ!?
製服工場以外でも会ってたクセに!」
「なっ!?
ななな、何の事かなっ!?
・・って何だ、オマエ等っ!?」
「クジャラ君?」
「向こうで男同士、タップリ話を聞くのである」
ディッポファミリー傭兵団の若手組で唯一、女気が無いアナナゴさんとウーニさんに連れて行かれるクジャラさん。
憎念が凄い。
結局なんだかんだで、合コンの話は流れたというか保留のままだからなあ。
「───クジャラさんに当たってもしょうがないだろ・・」
「・・ふん」
「彩佳姉ちゃんはねぇ・・何か、別のチートが欲しかったんだよ。
幹太姉ちゃんにばっか負担かけるのが嫌で───ウ二二二二二っ!?」
颯太の頬っぺたを軽く捻る彩佳。
「いっ、要らない事言うんじゃないわよ!?」
「・・まあ、お金があれば、何時か余所の傭兵団を雇うことも出来ますし・・防衛施設の充実化も出来ますわね」
「引いてはカンタさんの負担が減るッスね」
「良い事なのです。
何故、隠すのですか?」
「チャー?」
「あーうっさいうっさい!」
「ウ二二にーっ!?」
照れ隠しで颯太の頬っぺたをイジメ無いで下さい。
◆◆◆
「村が見えてきたわ」
「魔物は?」
「来てるぜ」
地形的には、谷間状になっているな。
ちょい補強する形で谷間を深く、途中に『門』を作り完全な一本道にしとこう。
『落とし穴』や『逆茂木』を作る。
「あとは御姉チャン達は村だけに集中しな。
コッチはオレ等だけでヤるからよ」
「せめて皆さんの武器に魔力付与をしときますね」
ゲーム的に言や、単純に『重く』したり『切れ味』を上げたら攻撃力は上がる。
けど実際には切れ味が悪い方が傷口が広がったり、吹き飛ばし力が大きくなったりするからな。
『攻撃力』より『使い勝手』重視だ。
飽くまで吸着魔法を利用した『( 出来るだけ ) 不壊効果』ぐらいしか与えない。
「行ってきます」
「おう。
この村は男尊女卑主義、つう事は覚えときな」
「はい」




