244『新たに付いてきた【人土《じんど》】のウチ二人は教師免許を持つのですが、「【巫女】たるもの、戦い優先」と、洗脳されました。 ( されたフリをしました。)』
「道路、道路、道路、偶に公衆トイレ・・」
物流を即回復させるなら道も必要かと、『秋原家』が通った跡には道路を作る。
川が有れば橋もかける。
イメージはやっぱ日本風になっちゃうけど。
「こういう道路を見ていると、日本を思い出すわね」
「ホームシックか?」
「んー・・。
元々クラスメイトとか同人仲間とか、上辺だけの付き合いだったし・・。
パパとママとも・・まあアレ? だし?
・・奈々とは一度、わだかまり無しで話ししたかったけどね」
「ナナさんは、偶にアヤカさんの話をしてくれたのです」
「え?」
魔物の居ない時は何となく俺等 ( 俺・颯太・彩佳・ジキア・ザレ・ビタ・モスマン ) のたまり場に成りつつある、見張り台を含めた屋根の上。
カードゲームで遊んだり ( モスマン、ババ抜き出来るんだよな・・。)、魔法訓練をしたり、ただ会話したり。
「日本語は殆んど分からなかったのです。
だけど・・寂しそうに、笑っていました」
「・・・・・・・・そっか。
有難う、ビタ」
彩佳の妹『奈々』は、子供の頃こそ仲良かったけど・・成長するにつれ、険悪になった。
けど黒キノコに寄生され、今の身体のまま0歳に再構成された結果・・『今の奈々』と『昔の奈々』とが共同し───彩佳姉妹は蟠りを残しつつ離れ離れになったからなあ。
「・・・・ん。
日本に思い残しは・・無いわ」
「そうか」
俺は家族全員でコッチへ来たしな。
彩佳と同じで、友人も軽い付き合いの奴しか居なかったし・・日本に未練は無い。
颯太は理太郎君の事もあるし、未練はあるんだろうけど・・まあ、ソレはその時だ。
父さんや誰かとケンカしたり理解しあいながら決めよう。
「【巫女】様、コチラも宜しく御願いいたします」
「あ、ハーイ」
庭に降りると、【人土】の一人に凡そ15cm四方の小包を渡される。
「何ッスか?」
「人工衛星って奴だ」
「人工・・エイセイ?」
うーん、何て説明しよう・・?
魔法が存在するこの世界にも宗教は在って、天動説を信じてんだよな。
「月が衛星で・・星の高さに浮かぶ機械・・かな?」
「はあ???」
「ワタクシは少しだけ分かりますわ。
学園長が物凄く興味を持っておられた物でしたから」
トラック1台分の荷物しか転移出来無いから、どの日本製品を持って行くかリャター夫人が悩んでいた時のか。
電気・ガソリンを使わない、ソレでいて異世界では手に入らないモノを中心に選らんでいたハズ。
「人工衛星とは、確かとても大きな物だったと記憶しているのですが?」
「ガチの奴はな。
必要最低限の機能の人工衛星は約10cmよか小さい───
・・確か3cmちょいのが有るらしいけど」
コレもそんな凄い奴ではないとの事。
飽くまで、コッチの宇宙で人工衛星が使えるかどうかの『使い捨てデータ録り用』だそうだ。
風圧の為に防壁魔法、摩擦熱に防爆衣魔法、最後にある条件で普段火球などを『飛ばす』魔法が重力に逆らう形で発動するようにする。
「颯太、頼む」
「うん、分かった!」
ディッポファミリー傭兵団が何だ何だと集まる中・・颯太に、魔法で固めた人工衛星を渡す。
「いっくよぉー!」
手にした人工衛星を颯太はおもいっきり、ほぼ真上に投げ飛ばす。
以前、俺の極大爆発魔法を投げた時は、皆へ見せつける為に雲の高さ辺りに投げたけど・・今回は颯太自身分からない高さまで飛んでゆき───
「・・うん。
動きが止まって、第二ブースターが発動した」
「人工衛星、正常に作動中。
データ・・来ました、成功です。」
「二人係りでエラく渾身のチカラを込めていたが・・どのくらいの高さまで飛んだんだの?」
「4~500km辺りですね」
「4・・」
最終的にはガチの人工衛星を幾つか上げて、電話だナビだスパイだを出来るようにしたいらしい。
「今回、カメラは付けられなかったけど・・」
「日本で、気球? とか言う、煙を袋に貯めて空を飛ぶ物に括りつけて宇宙?に飛ばす映像を見ましたわ。
50kmぐらい上がると地平線が丸かったのが不思議でした」
「はあ?
何じゃそら??」
「娯楽・暇潰し用に【人土村】から、莫大な映像ライブラリを持ってきています。
科学情報番組で検索してみますか?」
「・・いや、いいでの」
【人土村】の小学校では日本とコッチの ( 男尊女卑以外の ) 常識授業をしているんだけど・・どっかしら、問題は出るか?
一応、ディッポファミリー傭兵団や行商人母娘の母親達に許可は貰っているが。
行商人母からは 「 教育なんて御貴族様だけの物・・そんな物をウチの娘が受けられるだなんて─── 」 との弁だけど、ディッポ団長からは 「 貴族のは、ンな良いモンじゃ無ェぞ? 」 と言われた。
ちなみに、中・高も有るけど、大概の生徒は在籍だけして実際は働いているんだよな・・。
( 俺だ。)
「ジキアも13歳っていったら中学一年生だしな。
平和になったら週一ぐらいで通うのも有りだろ」
「僕みたいにちょっとでも良いんだしねぇ」
「うーん・・どうなんッスかね?」
朝晩の無線で父さんとの会話の中に簡単な授業が有る。
異世界転移に付いてくると決めた時に教科書・参考書・ドリルは買いこんだそう。
強制じゃないけど宿題もある。
・・俺と彩佳にも。
( 無い無いしているけど。)




