243『敵からしたら潜水艦ゲームです。』
「【巫女】様。
南側、Cー13ポイントだそうです」
「んー・・この辺か?」
「・・・・。
・・えーっと、着弾したのがBー14ポイントだから・・【巫女】様、右に3度、威力は気持ち弱く御願いします」
「3度て・・」
「会話だけ聞いてたら、ゴルフゲームっぽいのよね」
◆◆◆
「あの・・無線機だったか?
御姉チャンの魔法頼りとは言えスゲえな」
「逆ですよ、団長さん。
無線機頼りとはいえ【巫女】様が凄いのです!」
「御姉チャンの凄さは分かってンだよ。
・・いや、凄いっつうかよ───」
なんかディッポ団長と【人土】の無線で交信していた人が会話している。
褒められてるのかなあ・・?
「・・ディッポさんのあの渋い顔見て、よくそんなポジティブに捉えられるわね・・。
ずぅーっと、雲の穴を見てんじゃない・・」
「んー・・流石にあのサイズの岩だと、持上げる事だけに集中しても宇宙までは飛ばせないし?
・・石コロなら空気を感じられないトコまで行くんだけどなあ」
この距離だと真っ直ぐ岩を飛ばしても、地平線の向こう側の魔物は直接狙えない。
だから魔物の多そうな辺りに、岩を『放り投げている』。
「───・・。
あんな会話を平然とする御姉チャンに、敢えて言うこたァねえよ」
◆◆◆
無線魔法は良好だ。
もうだいぶ【人土村】の皆のパスがボヤけてきて、方角は分かるんだけど位置とか感情がほぼ分からなくなってきた。
ソレでもパスは、距離で千切れたりしない以上【人土村】と無線が通じている。
「距離感や感情が薄くなるだけってんなら、地球の裏側にも通じそうよね」
「日本に居た時も、先に異世界へ転移した源太ちゃんのパスを感じられたからねぇ・・。
幹太姉ちゃん、理太郎君と会話出来ないかなぁ?」
「向こう側の無線機の位置が分かんないからなあ・・。
ゴメンな?」
「ううん、言ってみただけ♡」
やっぱ颯太は可愛いなあ♡
が、颯太の可愛さはさて置き・・【人土村】を襲う魔物は減ってきたという。
「どう、思います?」
「あの魔物の数を減らした・・というには早い気がするの」
「じゃあやっぱり・・」
「魔物が二手に別れて、片方はコッチに来ていると見るべきであるな」
「ワタクシ達の戦力と・・【人土村】の戦力なら、『半分の戦力』など【空の口】の悪手にも思えますが?」
「只の殺し合いならザレ嬢チャンの言う通りさ」
作戦会議、兼、昼食。
俺達日本人はモチロン、一カ月日本に居たザレとビタも日本食を好いてくれている。
( ビタは、元々の食事とさほど差異は無いらしいけど。)
そしてもう一人・・ディッポ団長が俺の和食 ( 米・味噌汁・鮎の塩焼き・御新香・玉子焼き ) を「 うめえな 」と言ってくれたので、和食はなるだけ俺が作っている。
( ジキアはなあ・・やっぱ若いから『肉肉肉』って感じで、焼くか煮るぐらいしかなくてツマンナイんだよな。)
「だが・・オレ達ゃ村々を回らなきゃならん。
村に魔物を連れて行く訳にゃイカンが、物資不足の【人土村】を無視して魔物退治ばっかりもしていれンからな」
「なるほど、分かりましたわ」
「だから目的地に着くまでは、御姉チャンは出来るだけ【人土村】に集中しな。
コッチに来た魔物はオレ等で殺る」
「まあ、クワガタで周囲のチェックは万全だし・・最近はザレにちょっとだけ魔法を習ってるし。
心配は無いわ」




