241『様々な視点・if編』
以前、チラッと書いた
『理太郎・自衛隊員・TVクルーも異世界へ転移する』バージョンです。
コッチの方が良いとか言わない。
「俺の108式波動肉球っ!」
「ブはッ!?」
ちょっと今、颯太にとり憑いていた魔力体にイッパイイッパイだから理太郎君には気絶して貰う。
多分、男として最も幸せな気絶の仕方・・のハズ。
鼻血まみれで気絶している理太郎君を自衛隊に預けた後、ナンダカンダが在って、魔力体は撃退に成功。
・・撃退する直前───笑ったのは気になったけど・・。
「そ・・颯子───アレ? 颯太?
アレ?
なんか、さっき颯子を颯太って・・??」
えっ!?
理太郎君が避難した場所って【人土村】!?
・・まあ、元々この辺の病院が軒並み【アジ・タハーカ】に破壊されたか、人が居なくなり潰れた・移動したらしく、この村内の病院が一番近い。
安全も ( あの時は ) 確保されていた。
理太郎君の怪我を治療しようと思ったら、まあ・・ココか。
ちなみに理太郎君にも異常は無い。
「そ・・颯子は父さんに似てるからなあ!?」
「・・理太郎君・・!
僕、どう見ても颯子でしょっ!?」
「・・う、う~ん?
夢、かあ・・??」
『御姉様・・ソウタ様・・。
何故ソコまで正体を隠すのでしょうか・・?』
本当は彩佳みたいに・・理太郎君にも事情の全てを伝えられたら良いんだけど。
異世界組に、俺達の『女体化』がバレないようタイミングを伺っていたら・・完全にチャンスを逃しちゃったんだよなあ。
『何だかよく分からないけどソウタさんの事は解決したのね~?
なら魔力体とやらが何を企んでいるのかヤマエさんの所へ行きましょう~』
「そうですね」
異世界への扉を開けようとする山柄さん達『【人土】代表の8人』の元へ、行くも異常ナシ。
・・気のせい・・なのかなあ?
「───颯子、異世界に行くのか?」
「・・理太郎君は・・どうして欲しい?」
二人が少し離れた場所で『扉』の魔法を見守っている。
颯太が【アジ・タハーカ】を倒したメンバーのウチの一人だっていうのは・・まあ、理太郎君なら分かるか。
理太郎君以外の皆は・・複雑な表情を作る。
颯太が異世界に行かないなら───俺も異世界へは行けない。
ソレは戦力低下は勿論だけど、何より『仲間』と二度と会えなくなる可能性が有るから。
父さんや彩佳からしても、俺達が異世界へ行けば二度と会えないかもしれない。
「・・ホントはね?
さっきデートの時『全部』説明して、この世界に残るって言おうと思ってたんだ」
「・・『全部』?」
事情の分からない異世界組も『?』となる・・けど、その次の台詞には息が一瞬止まった顔をし───笑顔になる。
颯太の決断が全てを決める。
そして、その決断は颯太の『重し』に成ってはならない。
・・本当に素敵な人が仲間になってくれた。
「でも、【空の口】っていう魔物のボスを倒さないと・・この世界が、みんなが───理太郎君が危険なんだって分かったんだ」
そして颯太も本当は日本に・・理太郎君と一緒に居たいハズなのに理太郎君を『煽って』いる。
・・スゲェなあ。
俺なんかより颯太は遥かにスゴい。
◆◆◆
「───ん?」
アレ?
山柄さんが眉根をよせている。
「山柄さん、どうかしましたか?」
「もう儀式魔法は九割五分、終えたんでね・・そろそろ魔力の渦が収まり始めるはずなんだけど」
「実験では100%成功していましたよね」
山柄さんの答えに・・実験の様子を俺とともに見学していたディレクターさんが焦りはじめる。
「ぎ・・儀式中止っ!
全員魔力を止めて!」
「魔法停・・止・し・・しし・・!?
幹太殿、魔力を止めても儀式魔法が・・止まらないよ!!?」
「・・暴走!?」
「でもエネルギー源が無いのに・・」
「つまり『コレ』は───」
もっと魔力の要る『扉魔法』ではなく・・『必要魔力が集まった魔法』に、上書きされた・・!?
「さっきの魔力体の真の狙いはコレか!
魔力体から・・魔法そのものに変わったんだ!」
ヤツを吸収した時、スカスカな残り滓を吸った感触だったけど・・それは颯太が吸った後だからと勘違いしていた・・!
「・・くそっ!
何が【人土の巫女】だ・・何が『颯太のミスをフォロー』だっ!?
みんな・・退避するんだ!!」
山柄さん達を追い出す。
俺の言葉に周囲の自衛隊員が素早く避難誘導をする。
───ココは俺が何としても守るから。
「ははっ・・颯子の姉ちゃん、まるで勇者じゃん」
「勇者?
勇者ってなぁに??」
「颯子も颯太みたいにゲームしないからなぁ・・魔物からみんなを命をかけて守る人を勇者っていうんだぜ」
「勇者・・」
◆◆◆
「仁一郎君っ!
君も避難を・・!」
「お・・御義父さん・・!?
か・・幹太が・・幹太を───」
「父さん。
大丈夫だから」
「え?」
「あと・・ゴメンね?
僕───異世界へ行くよ」
「颯・・・・!
いや、謝る必要はない。
私も今決心した。
コレからも『秋原家』全員一緒だ!」
「・・うん」
◆◆◆
なんでも良い。
ありったけ、ありったけだ。
「防壁魔法!
結界魔法!
防爆衣魔法!」
颯太が、理太郎君が、父さんが、源太ちゃんが、彩佳が、ザレが、リャター夫人が、ビタが、【人土】が、自衛隊が、TVクルーが・・避難できるだけの時間を稼ぐっ!
「幹太姉ちゃん」
「颯太!? 何やってんだっ!?
早く理太郎君と一緒に避難を───」
「幹太姉ちゃん・・コレ、異世界転移魔法に作り直せないかな?」
「・・へ?」
「あんな奴に出来たんだ。
幹太姉ちゃんなら出来るよね?」
・・出来る。
出来るけど、ソレは───
「・・避難し終えていない人が多すぎる。
父さんや彩佳や・・理太郎君が」
「何、言ってんの。
アンタが異世界に行くっつたら、付いてくつもりだったに決まってるじゃない。
・・何?
迷惑かしら?」
「・・滅相も御座いません?」
彩佳が不敵に笑い、ふんぞり返る。
何時の間にか周囲にクワガタが、びっしり集まっていた。
「幹太、父さんも・・だ。
『秋原家』皆で【空の口】を倒し、「 オマエ達が日本に魔物を連れこんだ 」などと言う愚か者に見せつけよう」
「父さん・・」
父さんが源太ちゃんと並び立ち、誇らし気に笑っている。
「幹太さん、俺もだ。
日本防衛のため、自衛隊は付いて行けないが───何人かは裏で了承している」
自衛隊員の崖下さんがサムズアップで答える。
ソロリソロリと不自然な装備の自衛隊員と戦車と戦闘ヘリが近づいてくるけど・・・ええぇ?
「私は・・純粋な好奇心ですが。
コレでも若い頃は、銃声のなるヤクザの事務所や紛争地へ突撃取材をヤらされた事も有ります」
「ギャラクシー賞・・いや、もっと世界的な賞も───」
特番を作っていたTVクルーも鼻息が荒い。
賞て・・。
「なら当然、【人土】もだね」
『私は準備万端よ~』
『御姉様お一人残して避難は出来ませんわ♡』
『【人花】として逃げられないのです!』
【人土】とリャター夫人とザレとビタが、さっき儀式をしていた時の位置に戻る。
───そりゃそう、か。
みんな、俺なんかよりスゲェ人達ばっかなんだ。
家族や仲間を見捨てられないか。
「・・分かった。
理太郎君、ゴメン・・。
理太郎君のお母さん、申し訳有りません・・彼は命がけで守ります!」
「ううん、魔物をヤッつけなきゃコッチの世界の人もヤバいんだろ。
母ちゃんは俺が守る!
俺は母ちゃんの勇者だから!
母ちゃん、行ってき───・・
◆◆◆
「う・・ううん・・?」
こ・・ココは・・?
異世界?
そうだ、みんなは・・!?
「颯子・・大丈夫かあ?」
「・・う、うん。
理太郎く───」
「ん? どうした?
俺の胸になんか付いて───」




