240『様々な視点⑥』
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『【人土】視点』
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「行ったね・・」
【人土】総代表、『山柄 浦』は走り行く家を眺める。
走り行く家・・ある意味、魔法だ異世界だより遥かに不自然な光景を「 まあ、あの人だからね 」の一言で済ます。
「さあさあ、残ったワタシ等も問題は山積みなんだ。
やる事をやるよ!」
「「「はい」」」
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「【スライム】『D3』『F2』『J4』死亡。
『D2』適合率68%『G1・2・3』適合率74.36%」
「ふう・・やっぱり『Bシリーズ』───幹太さんが、【巫女】が、直接魔力を込めた【スライム】が一番適合するね」
「【人土】の血が相当薄い者でもほぼ100%ですからね。
・・・ただ」
「ただ?」
薄暗い研究室。
其処に【人土】総代表の山柄は居た。
多数の容器に【スライム】が詰められ、様々な点滴針や電極が突き刺さっている。
まあ贔屓目に見ても動物実験だろう。
敵には恐ろしく残酷になれる御方だが、あの人には見せられないねと熱いコーヒーを飲みながら山柄は思う。
「【巫女】様の御優しい部分を受け継いだ、というか・・途中まではチカラを引き出せるのですが───宿主の負担になるレベルが来た途端に・・」
「寧ろ、自分が枯死しようと御構いなく宿主を守ろうとするんですぅ」
「はっ。
正しく我等が主、そのものじゃないかね」
【アジ・タハーカ】が自分のビルを襲って来た時、自分の身を挺して【人土】を守ろうとしてくれていた。
事実、山柄がシェルターから出て再会したら、彼女は全身を軽くとはいえ火傷していたのだ。
まだあの時点では【巫女】では無かったのに。
あの人の、認めた人に対する慈悲には頭が下がる。
山柄が、場の【人土】達が、本人の知らぬトコロで勝手に忠誠心を上げていく。
「───が、今回に関しては裏目だね。
ワタシだって、多少は無茶がしたいんだ」
「ええ。
とすると、適合率が規定値ギリギリの【スライム】を使うか・・」
「『aシリーズ』・・野生の【スライム】を使うか・・ですぅ」
「『aシリーズ』確か適合率は90%以上だったね・・。
非常に狂暴だけど」
「【巫女】様と颯太様が、『aシリーズ』・・というか『a』を身に受け【人土】となった訳ですが、【巫女】様の魔力でやっと自分の望む量の【スライム細胞】に調整出来ます」
【人花】と【人狼】は『三種族』としての能力を使い、【空の口】の手下を相手している。
山柄達【人土】は、その補佐。
止めを差したとて・・ソレは何らかの武器を使用して、だ。
【人花】達からは敵から直接、魔力を吸収・譲渡してくれる【人土】に感謝を述べられるが・・そうじゃない。
「子供や非戦闘員の者には『Bシリーズ』を。
ソレ以外は取敢ず現状のまま。
しかし場合により───」
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『子供たち視点』
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「フェドリーちゃん、行っちゃったね。
・・良かったの?」
「・・うん。
アキホちゃんは【じんど】だから【巫女】のお姉ちゃんを助けたいって気持ちが分かるでしょ?」
「でも・・せめてナムァコ先生は戦う人じゃ無いんだし・・」
「ううん・・ワタシの『だんなさま』は【巫女】のお姉ちゃんの仲間だから」
「そうだぜ、オレ達ディッポファミリー傭兵団はぜったい仲間を見捨てねえんだ!
オレも・・オレも大人になったら今度こそあの旅に付いていくんだっ!!」
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『クラッゲ・ナムァコ視点』
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「・・・・・・」
「「・・・・・・」」
「・・いや、昔はそりゃ御二人と颯太の事は認めていましたよ?」
「な・・なら、ちょっと・・!
防衛する砦の中は隅から隅まで知っておきたいじゃないかっ!?」
「コレを見てもそう言えるのかあっ!」
「ソレは・・『シャシン』とか言う───なっ!?
ひ、卑怯だぞ、カンタちゃんっ!?
ココでフェドリーちゃんのシャシンを出すなんて───」
『なァにが卑怯なンだ?』
「「ひいっ!?
だ・・団ち・・!?」」
「別に御前等の性癖をとやかく言うつもりは無ェよ。
・・女が泣きさえしなきゃあなア・・!」
「な、ななな、泣かしてやいませんが」
「オメエ等、御姉チャン家の風呂ァ禁止とするからな」
「「そんな・・!?
オレ達は純粋な愛を───」」
「やっぱディッポファミリー傭兵団ってエロばっかじゃない・・」
「ですわ・・」




