238『所謂『そういう人』は、一度包まれた経験が忘れられないそうです。』
元の『237話』と『238話』を合併しました。
分かりづらくて申し訳有りません。
対【ノヅチ】でボコボコに成った地面を均していると 「 どうせココまで荒れたのなら、堀や塀を作ってくれ 」 との事。
成る程、ソレなら酷い環境破壊にもならないか。
辺りの地形に手を加えていたら・・二台のトラックが秋原家の前に停車する。
逸る心を押さえ・・土魔法で8mの段差を持ち上げればトラックが秋原家の敷地内に入ってきた。
一番にジキアが下りてきて───
「ディッ・・ジキアか!
ディッポ団長は!?」
「ソレ、地味に傷つくッス・・。
団長なら・・さあ」
ジキアには悪いけど、事情が事情だからな・・。
トラックから・・ヒトゥデさんとシャッコさんの、オッサン弓矢隊に支えられたジイさん───ディッポ団長が、颯太と共に下りてきた。
「ディッポ団長、大丈夫なんですか!?」
「立つ・歩く分には、な。
コイツ等が大袈裟なだけだ、病人のジジイ扱いしやがって・・。
まあ戦うのはキツいがな、ガッハッハッ」
最後に見た元気な時の姿と比べると、確かに細くなっている。
「こ・・コレで?
只のプロレスラーでしょ・・」
「元々は力士体型っつうか、筋肉の上に脂肪の鎧を纏った体型で・・凄い抱かれ心地だったんだぞ」
「「「 !? 」」」
「ちょ───!?」
ん?
皆の目が、急に険しくなった。
羨ましかったのか?
「フカフカな脂肪と、その奥にある鋼のような筋肉・・ちょっとやそっとのマットやソファーとは比べモノにならない極上の──あ痛っ!?」
ディッポ団長に小突かれた。
なんなん!?
「あー・・絶体に変な勘違いすンじゃねえぞ?
コイツがまだ魔法に不馴れな修行時代に魔物相手から逃げ遅れた時、抱きかかえて逃げただけ・・おいっジキア、おめぇは現場を知ってんだろうがよっ!?」
「・・カンタさん・・軟らかかったッスか?」
「フケツですわっ!?」
「ディッポファミリー傭兵団ってエロしか居ないの?」
皆の目がますます険しくなる。
・・アレぇ?
「嬢チャン達・・そりゃ聞き捨てならねえな。
ウチは紳士的に───
・・・・・・。
・・オマエらか?
また悪ィ癖がでたか?」
ディッポ団長が自分の両脇を支えていた、鎧弓矢をフル装備し 「 団ち・・親父・・ギブギブっ! 」 と泡を吹きかけているヒトゥデさんとシャッコさんを片腕で一人ずつ吊り上げてゆく。
「良かったあ・・ホントに大したこと無かったんですね」
「はン、若ェころは小指だけで持ち上げられたンだがよう・・やっぱジジイはジジイか」
「か・・カン、タ・・お前の一言が原因でソレは無───」
ディッポ団長は二人を軽く放り投げ、俺の案内の下に秋原家へ。
◆◆◆
ディッポ団長は秋原家の外観や庭を見回し、縁側に座る。
「変わった家だが・・まあ良いンじゃねえか?
御姉チャンの家らしくてよ」
「団長は【空の口】の声を聞いてからの事を───」
「【空の口】・・か。
知らん女に、頭ン中を弄くられンのを耐えてたら・・『青い場所』に居たンだでな。
暫くしたら御姉チャンが来てベソかいてたぐらい・・だぜ?」
ディッポ団長が倒れてから結構時間が経っていた筈だけどなあ。
「『夢の中でみんなの話を聞いていた
』とか『だいたいのことはわかってる』とかじゃあ無いんですね」
「何だそりゃ・・。
また御姉チャン語か・・」
ディッポ団長とジキアが呆れた感じで頷きあっている。
俺と彩佳は「 変な事言ったか? 」「 さあ? 異世界ならアリじゃない? 」と頷きあっている。
「『青い世界』でも言いましたけど、俺の魔力が上がって本気の戦闘が出来なくなりつつあります」
「だから幹太姉ちゃんの武器を探しつつ、オカシくなった人を治す旅に出るんだよ」
「オカシい奴等を治すだあ?」
【空の口】の声を聞いた人間の反応とその後の世界を、一応【人土】の医師にディッポ団長を診て貰いながら話す。
「───で、コレがその【人土村】とやらの商工ギルドの帳簿か・・確かにコリャ酷ェな」
「異世界は便利な分、何でココにこんな物資を使う?
といった部分が多いからの」
「気遣わずに言えば、『三種族』の数が減ったから辛うじて遣り繰り出来ている状態である。
千年前の人数如何なら、早々に破綻していたのである」
そうなれば見捨てるべき、という意見が出たかもしれない。
せめて不幸中の幸いと思っておこう。
「世界征服も、まあ・・あまり否定は出来ンわなあ・・」
医師の診察を終え、服を着ながら遠くを見るディッポ団長。
「コイツ等の嫁の他、何人かは助けられたが・・助けられなかった女も少なくねェ。
───正直こんな世界、何度滅んじまえと思ったか・・っと、若ェ娘サン達の前でする話じゃねェな」
「いえ・・」
「・・ふん」
「ビタはよく分からないのです」
一瞬だけディッポ団長から漏れでた憎悪に怯んだ彩佳達だけど・・目は離さない。
「ディッポ団長から何か、コレからについて有りますか?」
「何か・・っつてもな・・。
・・ああ、そういや魔女っつったら思いだした事があるぜ」
「魔女?」
「まだ貴族だったガキの頃、一回だけ王と会った事が在ってなァ・・そん時、王子の一人と仲良くなったンだ。
その王子が、ココだけの秘密っつって教えてくれたンだ」
彩佳が「 貴族? 王子?? 」と、野獣顔のディッポ団長に目を白黒させているけど無視。
「王家の伝承みたいな?」
「オレもガキだったからなァ・・。
今の今まで、忘れていた『お伽噺』だとは思うが───『魔女は魔物の中に住んでいる』っつうンだ」
「魔物の・・中?」
「『英雄は魔物を倒し、魔女の住みかを見つけて、魔女を倒しました』とさ」
「魔女の住みか・・」
白湯を一杯、クチを湿らせ───
「「 馬鹿な国は『街破級』を見世物にしかしないけど我が国は違う 」・・って、支配階級独特の王子のツラに嫌気が差したのは覚えてらァな」
【銀星王国首都】の方角を睨み、ディッポ団長が言った。




