234『源太は秋原家の『親戚』としか分からないので、実は仁一郎と近親相姦なのでは? と、密かに噂されています。』
「・・ってかさあ、カンタ先生?」
「ああ」
「この二人が残ったんなら、ねえ?」
「そうだなあ」
「うう・・」
【人狼の巫女】候補。
最後に残ったのは、女学園卒業生と・・ザレの二人。
「ザレの魔力収集に特化した特殊な魔力弁異常・・【人狼】の変身用に魔力を集めるのと───似てるっていやあ・・似てるよなあ」
「ワタクシも御姉様から習った感情レーダー魔法のお陰で魔力が見えるようになって【人狼】を見たら───似てる・・かもしれないとは・・・・」
「いや、似てるって言うか。
【人狼】のアレを魔法使い風にしただけでしょう?
ザレが魔法を覚えて無かったら、まんまアレじゃないの」
「あああ~っ!?」
言葉を選んであげて、彩佳。
一応、俺もオブラートに包んだっつうのに・・。
飽くまでも『そうだ』と思いつつ見たら分かるレベルだけどさ・・。
「まあ、今は何で洗脳が解ける人と解けない人が居るのか調べようが無いし・・【巫女】候補だけでも調べよう」
「ううぅ・・」
んで、隣の病室へ。
ザレが 「 先に姉さんが調べて下さらない? 」 と、悪足掻きをするので女生徒がザレを引き摺り患者の横へと連れて行く。
「うう・・分かりましたわよぅ!
さあっ。
御姉様、ビタ、三人の共同作業ですわ!」
「ザレさん、【巫女】は悪くないのです!」
【巫女】は悪くないんだよ、ビタ。
悪いのは『あんなの』が祖父になる事だな。
「儂も巧く、執り成すからのう」
「ゲンタ様ぁ・・」
観念したザレと共に患者に触り───
◆◆◆
「有難う御座います、有難う御座います!」
「この出会いに感謝します」
「この歓びを何と伝えたら良いか・・!」
「・・・・い・・いいえ~」
ザレが引きつっている。
・・まあなあ・・今んトコ、触る患者触る患者の全員の洗脳が解けている。
「ザレが【巫女】なのは決定でイイんだけど・・」
「せめて、もっと感慨を持って下さいませっ!?」
最初の一人は感慨もあったけどさ。
「病室か?」
余りに洗脳が解ける確率が、さっきの病室と比べて違い過ぎる。
「決意かも?」
「まあ・・全員、心の何処かで『ワタシじゃ無かったら良いなあ』とは・・思ってたんじゃない?」
「「「・・まあ、ね」」」
「ひょっとしたら他の人が同時に触るのも、エネルギーが逃げる的なアレかもしれん。
もっかい、前の病室に戻ってみよう」
すると1人だけ、洗脳が解けた。
マジで病室なのか!?
全員を廊下に待機させて洗脳者の1人をベッドごと運ぼうとして、患者は室内、ザレが廊下を出た所で───急にその患者の洗脳が解ける。
があぁぁ~~~っ!!?
マジで、なんなん!?
「み・・【巫女】様、そろそろ御時間が・・食事もしなければ」
「ぇあ? あ、ああ・・」
そういや、そんな時間か。
お腹も空いてきた。
戦いの前なのにどっと疲れた。
何だかとても眠いんだ。
・・そうだろうザレラッシュ。
◆◆◆
病院内の食堂にて。
頼んだ物がくる間、源太ちゃんがソワソワしている。
・・っていうか、けっこう前から。
主に二つの感情がグルグルしている。
「「「「・・・・・・」」」」
【デロスファフニール】戦後、女生徒達は源太ちゃんとザラクスさんのエピソードを根掘り葉掘り聞いていたから・・まあ、大体分かっているよな。
ずっとニヤニヤしている。
・・ニヤニヤしていないのは
「で・・ですからゲンタ様、ワタクシ一人で出来ますわ!?」
「じ・・じゃあ、デザートを頼もうかの!?
済まんがこの『DXスペシャルパフェ』っちゅうんを───」
「源太ちゃん?
ザレが困っているでしょう?」
さっきからずっと源太ちゃんに『はわはわ』されているザレと・・その様子を見ている彩佳だ。
「( 彩佳姉ちゃん、どういう感情なんだろうねぇ )」
「( さあなあ・・。
割と今まで、アレは彩佳のポジションだったから・・嫉妬? )」
実の家族と余り接触の無かった彩佳と、そんな彩佳を実の孫のように可愛がっていた源太ちゃん。
その均衡が崩れて───
「( そんなんじゃ無いわよ!
どうするの、アレっ!?
アンタが危惧してた事に近いんじゃないの!? )」
「( まあな・・ )」
愛しい男の遺した子に、源太ちゃんはデレデレしっぱなしで『他人の女との子供なんて、キイィッ!』っていうのも無い。
そして・・俺をチラチラ見てくる。
『少なくとも、信用出来る【人狼】には知らせるべきでは?』
といった雰囲気の感情だ。
コレは他の【人狼】も、崇め守護すべし【巫女】として似たり寄ったりになるだろう。
「( 下手したら、前の【巫女】が目の前で殺された訳だし・・過保護ップリは源太ちゃんより凄いかも )」
「( そうよねえ・・ )」
ザレは───困ってはいるけど、嫌がってはいない。
孤児である事の気持ちが世界一理解出来ないのが俺だと断言出来る。
ソレだけの愛情を家族から貰った。
コレは俺じゃ、アドバイスすら出来ない。
ザレ自身が決めなきゃなあ・・。
だからザレ、俺を泣きそうな感じで見んといて。
◆◆◆
『せめて【巫女】として覚醒するまでは【人狼】に内緒で』
コレが取敢ずザレが決めた事。
源太ちゃんにも、『此処だけの話』でも他言禁止となった。
( スゲエ寂しそうだったけど。)
んで、戦闘準備。
準備っつっても俺自身は我が家に帰るだけだけど。
家に帰ると父さんと【人土】の方々が色々やってくれていた。
「帰ったか、幹太。
我が家も戦闘準備が整いつつ有る」
「コレただのリフォームでしょ、オジサン」
俺達が転移してきて【人土村】へ移動している間、こういった仕事をしている【人土】の人が貯水や下水を色々やってくれていた。
【人土村】に着いてからは俺達が寝泊まりしていない時に更に色々やってくれていたそうで、屋内トイレも ( 汲み取りとはいえ ) 使えるという。
有難や。
「で、ソッチはどうだったんだ?」
「『誰が』は、父さんにも言えないんだけど・・」
源太ちゃんが若干、暴走気味なんでフォローを頼む。
( っつうか父さんからしたら結構普段通りなんだけど。)




