228『地球だと完全にUFO扱いです。』
【人土村】とリャター商会の間の道。
まだこの辺は荒らされていないから、良い『弾丸』がある。
「超長距離遠隔操作型魔法っ!」
「おお・・っ!
あんな巨石を・・!」
直径1~2mほどの岩を4つ持ち上げる。
炎とか水とか土とか・・以前なら粒子状の奴じゃないと持ち上げにくかったけど、今の魔力なら容易い。
「こちら幹太」
〔こ、こちらザレです!
び、ビックリしましたわ!〕
パニクっているなあ。
緊張事態だったんで、事前報告なしにリャター商会トラックの回りに飛ばしたけど・・考えてみりゃあ巨石が自分達めがけ飛んできたらソリャ恐いよな。
「ゴメン、実はこういう事態で・・ザレとリャター夫人のパスを中心に飛ばした」
〔な、なるほど・・事情は分かりました。
ワタクシはソウタ様やゲンタ様のような " ちいと " では有りませんが・・パスの強弱なら分かりますわよね?
魔物の気配を感じたら御知らせ致します〕
【空の口】直轄とはいえ、数が恐いだけの『破級外』『道破級』程度。
あの場に居るのはリャター夫人を筆頭に、数さえ揃えば『対、村破級』肩書きだけなら『対、街破級』の女学園生徒とその卒業生だからな。
( あと強襲装甲トラック。)
おそらくは大丈夫だろうが、まあ保険だ。
「【人土村】の方は大丈夫ですか?」
「変わり無いです。
ピンチでは有りませんが、放っておいてイイ状況でも有りませんね」
リャター商会に張り付くのも【人土村】に行くのも絶妙に不安な距離だ。
「仕方無いか。
今から俺は魔法に集中するんで、両方からの情報収集を御願いします」
「了解しました」
途中、野生の魔物の襲撃は受けたらしいけど ( 自分達だけで対処できるから ) ザレからのパスは無く進む。
「【巫女】様。
もうすぐ【人土村】とリャター商会の距離が釣り合うポイントです」
「分かりました。
そろそろ、リャター商会と合流すると伝えて───」
その言葉と同時に、ザレから強いパス。
魔物か!? と、石を動かすも魔物の反応が無い。
「ザレっ!?」
〔御姉様、魔物では有りません!
人、おそらくは完全洗脳者です!〕
「えっ!?
まさか・・あの大侵攻に加わってなかった奴がまだいた!?」
大御所 ( 『対、村破級』『対、街破級』といった傭兵団。) は、あらかた仲間になるか捕まえる等している。
となると、破級外傭兵団が殆んどで・・あの時、温存していた意味が分からない。
〔学園長も同意見ですわ。
奇襲用に残しておいたには余りに御粗末な連中だそうです〕
だよなあ。
しかも狙うのが非チートでは人類最強クラスのリャター夫人だ。
御粗末を通りこして憐れですらある。
〔どうされます?
付かず離れずで、誘き寄せも容易いと学園長が〕
「洗脳さえ解ければ同じ人類、【空の口】討伐の仲間に為りうるんだ。
俺達が合流できる辺りで鉢合わせ、が理想かな」
〔分かりました。
学園長に伝えます〕
うーん・・。
【空の口】の意図する作戦なのか?
◆◆◆
「ザレ、久し振り」
「御姉様も♡」
ザレはリャター商会先頭のトラックにいた。
( 運転手は知らない女性で、たぶん女学園卒業生。)
リャター夫人は最後尾のトラックで、上手く尾行をコントロールしているらしい。
「まだ完全洗脳者達は俺達の存在に気づいて無いな?」
「ええ」
「ならさっき決めたてはず通りに───今だ!」
リャター夫人の強いパスと同時に皆が一斉に行動する。
俺は既に仕込んでいた遠隔操作魔法を、女学園関係者は剣で、【人土】は魔力吸収。
相手は咄嗟の事に反応出来ず、ほぼ一瞬で制圧され───
「───って、【銀星王国首都】所属傭兵団のみんな!?」
「えっ?
・・そういえば【北の村】で『黒い川』の素材回収をしていた・・?」
他の女生徒達はほぼ完全に克服した・・ザレは俺好きもあって、一歩下がって見ていた傭兵団だな。
そういえば俺達が日本からコッチへ転移した後【魔物の森】から脱出する際、出来るだけ怪我をさせないよう戦闘不能にして・・置き去りにして、そのまんまだった。
なるほど、彼等ならタイミング的にあの大侵攻に参加出来るハズは無いし・・正直、彼等の実力は───まあ、ね。
「くっ・・魔女の守護者として役に立てなかった我等など・・。
───殺せ」
ん?
随分諦めが良い。
今までの完全洗脳者は大概諦めが悪かった。
・・コレは───洗脳が解けかかっている?




