227『「 パァーンチ 」は、ビタの居ない所で使います。』
「ディッポ団長・・」
「・・・・」
アレからディッポ団長に反応は無い。
『青の世界』で繋がったからか、俺とディッポ団長との魔力パスは颯太や源太ちゃん並に強く繋がっている。
だから離れていても、ディッポ団長の現状は凡そ分かる。
「だから、何も言いません。
───行ってきます!」
◆◆◆
「風の半力・大小自動追尾魔法
&
土の小半力・指向性面制圧魔法っ!」
俺は魔力が上がり、攻撃力はかえって上げられなくなった。
炎魔法の燃料はマジでシャレに成らない量を使うし、土は今までの戦いでソコソコ消費し終えている。
代わりに『一発の威力を下げ弾数増加』『強追尾』等、色々と変化球的魔法の運用。
「魔力吸収パァーンチっ!」
颯太は魔力操作を少しずつ覚え、溜めは未だ必要だけど魔力吸収により相手の身体強化魔法を剥ぎ盗り超腕力で殴っている。
コッチの世界の生物全ての天敵足りうる一撃になりつつあるな。
「百段突きっ!」
源太ちゃんはだいぶ大剣剣術に慣れ、秋原甲冑柔術と組合せている。
もう魔力操作が苦手なのは受け入れて、より身体強化魔法を鍛える事にしたらしい。
短所を埋めるより長所を伸ばしたお陰で、パスでかろうじて分かるだけで俺の目では追いつかない。
「カンタよ、交代である」
「ソウタ先生、次はワタシ達の番よ」
「ゲンタさん、私も敵をブチ殺すのです」
適当な所で持ち場を交代。
『自分を守る』と『皆を守る』の両立。
助け助けられ、だ。
「彩佳、皆はどうだ?」
司令室の彩佳に連絡。
彩佳はクワガタの情報収集力を使って作戦本部にいる。
「悪くないわ。
味方に消耗無く、敵は着実に数が減ってるから」
「良かった。
リャター商会は?」
「倉庫の修繕・要塞化も終わって【人土村】に来るそうよ」
「そうか・・」
リャター商会には以前の完全洗脳者軍による物資強奪以来、襲撃はないらしい。
さりとて無茶はして欲しくはないんだけど・・ココが墜ちれば全てオシマイだし、リャター夫人やザレに向こうにいる女生徒達と女学園卒業生がコッチの女生徒達を何時までも放ってはおけないだろうしな。
「トラックの強襲装甲改造も終えた・・らしいわ」
「強襲・・どうしても世紀末感溢るるトラックを連想するなあ」
元々、魔物の蔓延る世界で使うため───ガラスは防弾、車底まで装甲改造を施してある、とは聞いていたけど・・。
「分かった。
小休憩が終わったらタイミングはソッチで合わせてくれって伝えて」
「ええ」
【人土村】とリャター商会の間。
俺の超長距離遠隔操作魔法が届く距離までトラックに近づき護衛する。
◆◆◆
〔カンタさん、また声が聞けて嬉しいわ~♡〕
「俺もですよ、リャター夫人」
お互い忙しかったので、何時か会える日まで敢えて挨拶は後回しにしようとなっていた。
リャター夫人の声はいつもと変わらないけど・・日本から帰ってきたら女生徒達が洗脳されていたり、かなり奮闘しているはずだからな。
「コッチの娘達も待ってます」
〔そう・・皆が再び集結するのね~、楽しみだわ~〕
てな所で挨拶も終わって行進再開。
なんかココ最近、死にゼリフや死亡フラグの事を連続して考えていたせいか、リャター夫人のセリフがそれっぽく聞こえたから。
無論オタ脳の考えだけで無く、さっさと合流、然る後皆で喜ぼう・・という判断だ。
「【巫女】様。
第四波の動きが怪しいそうです」
「というと?」
「動きが読めない、と。
酩酊したかの如くらしいです」
「周囲の施設・・リャター商会や女学園とかを攻める準備とか?」
向こうは最後の一戦力までウチに当てなければ、千年前二千年前の繰返しだと分かっているハズ。
他所へ攻めいる ( 或いは戦力分散させる為、脅しに使う ) 余力なんて無かったから、他に被害は無かった。
「ソレは考えにくい、と傭兵の方々が。
おそらく広範囲不特定多数に散らばり第五波と合わせるのが目的では?
との事です」
地味に厄介だなあ。
侵攻方向次第だとコッチに来るか。
今俺達が移動しているのは草原と森の中間といった場所。
寄生虫探査魔法は周囲の野性動物も拾うし、魔法使いでない魔物なので広域時空震探査魔法に反応しない。
この魔物を操っているのは黒キノコ ( コスパが良い代わりに猛進しか出来ない。) では無い?
洗脳魔法 ( 【空の口】自身の魔力を使う = 未だに【空の口】が出てこない、戦力を小出しにする理由と見ている。) か、魔力体 ( たぶん、かなり数が少ない。) により操られているっぽいな。
「皆にはギリギリまで使うなって言われていた超長距離遠隔操作型魔法の連射型 ( リャター商会護衛任務は今回みたいな異変でも無い限り、一番魔力を使う俺の休憩もあった。) を使います」
「分かりました。
フォローはお任せ下さい」




